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プーやん

 約束の時間より三分早く、三人と頭上の一匹が横島署の玄関前に立った。

 心臓の鼓動が激しくて、今にも口から心臓、それどころか肺や胃や腸も、油断したら盲腸だって飛び出そうだ。右を見ると、飛田がしきりに渇いた出っ歯を舌でペロペロ舐めている。左を見れば、ジジイが夢中で鼻毛を毟っては吹き飛ばしている。お絹は相変わらずジジイの頭を蹴りっぱなしだ。みんな緊張しているようだ。

 後ろを振り返ると、何十台も止まっている警察車両の隙間から、多くの警察官が銃を構えてこちらに標準を合わせている。

 俺は「ふぅ~っ」とひとつため息をつき、入口の大きな自動ドアの前まで進んだが開かない。ガラス越しに中の様子を窺うと、男がアホ面さげてボーッと突っ立ってる。それもよく知っている男だ。

 男は自動ドアの隙間に両手の指を突っ込み、無理矢理にドアをこじ開けると顔だけ出した。

「やっと来たな」

「プーやん、お前がなんでここに?」

 丸っこいフグ顔のプーやんが眉間に皺を寄せる。

「プーやん? ああ、このデブの名前か。ここの留置所にいたからまた体を借りたのよ。そんなことはどうでもいいんだよ。早く中に入れ」

「ちょっと待ちやがれ。おいらたちと引き換えに、人質五十人を解放する約束じゃねえのか。先に解放しろや」

 ジジイがグッと顔を近づけると、プーやんは露骨に嫌な顔をした。ジジイの口が臭いわけではなく、頭の上のお絹が嫌なのだ。

「わかってるよ。お~い兄貴! 奴が来たから人質を頼む」

 プーやんは署内に向かって大声で叫んだ。

 奥からダイナマイトの束を上半身に巻きつけた大男が来ると、プーやんの頭越しに大きな手で自動ドアを全開にした。

「やっと来やがったか」

 だいちゃんが俺を見てニヤリと笑った。

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