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自爆テロ

 先ほどとは違い、今度のプーやんはきっちりかっちり俺たちを縛り上げた。一分の隙もないとはこのことだ。ガムテープで体中をぐるぐる巻きにされてしまった。ジジイは芋虫からみの虫に成長した。時機に、蝶か蛾になって大空に羽ばたくかもしれない。しかし、顔が人間で体が魚の人面魚はあるが、顔がサルで体がみの虫など聞いたことがない。

「ちきしょう。縛る前にビールぐらい飲ませろってんだ。おいらは一滴も飲んでねえんだぞ。ぐっぞ~」

 みのザルジジイが、唇を噛んで悔しがっている。

 みの虫状態で仲良く並んで転がされた俺とジジイ。ジジイは、ソファーで酒盛りしているだいちゃんとプーやんを恨めしそうに睨んでいたが、ちっと舌打ちをかますと皺くちゃな顔を俺に向けた。

「おい、ジャック。由美ちゃんどうしたって?」

「今、由美子も酒盛りの真っ最中だってよ」

「まったく……睡眠薬が効かねえとはな」

 飛田からの一方的な連絡では、由美子を寝かせようと苦労しているようだ。由美子は睡眠薬が効かないのだ。酒が鬼のように強いからなのか、睡眠薬なんて屁でもない。局部麻酔も人の何倍も注射しないと効かないのだ。手術ではないので全身麻酔を使えない。だが、アルコールに強くても、ガンガン飲ませればいい加減酔って寝ちまうだろう、と望みを託し酒盛りを続けているのだ。先ほどの連絡では、ヘネシーを二本空けて三本目に突入したようだ。

 一つ心配なのは、由美子は酒癖も悪い……。

 今はなんの手立てもなく、几帳面に蓑虫状態で床に転がり、だいちゃんとプーやんの陽気な会話を聞いている。

「兄貴、これからどうする? 金はそこのバッグに五億ほど詰まってるぜ。上手く逃げ出すか?」

「逃げ出すのは無理だろうな。銀行強盗が籠城して逃げられた試しはねえよ」

「だったらどうすんだ?」

「どうするもこうするもねえよ。ダイナマイトで人間を皆殺しにするだけよ。金なんか、また違う人間にとり憑いた時に奪えばいいだろ。今回は失敗したから、そこら中の人間をぶち殺して楽しもうぜ。ダイナマイトを着けたまま、警官隊や群衆に突っ込んじまおうぜ。ヒヒヒッ」

「そりゃいい、ギャハハハー。こんな体吹っ飛んでも、俺たちには痛くも痒くもねえや。兄貴、体にくくりつけてるダイナマイトで、どんだけ殺せるか競争しようぜ。ギャハハハ」

 実に楽しそうな会話をしている。

 あんな大量のダイナマイトで、それも捨て身で突っ込まれたらたまらないだろう。こいつらは人を殺すのを楽しんでいる。

 自爆テロ。この言葉が頭に浮かんだ。地獄からの来た奴らが、テロ集団の人間にとり憑いたらどうなるのだ。死をも恐れない人間ができたら……。

「許せねえ……」

 ジジイが腹の底から唸り声を上げた。だいちゃんとプーやんを睨む目は血走り、顔を真っ赤にして仁王様のような顔をしている。浮き出たデコの血管も切れそうだ。

 この人はやっぱり神様なのだ。

「おい、ジャック」

 血走る目を俺に向ける。ジジイの真剣な眼差しを、俺も心の底から受け止めた。

「なんだ」

「あいつらを野放しにはできねえ。無敵になったおめえは、地獄から来た奴を捕える技がある。魂をおめえは掴めるんだ」

 怒れるジジイは、奥歯を食いしばるように言う。エラの音がギュッギュッと聞こえてきそうだ。

「いいかよく聞け。地獄の奴らの魂は、人間の頭にとり憑く。魂はソフトボール位の大きさよ。無敵になったおめえの手は、とり憑かれた人間の頭にスッと入っていける。頭に手を突っ込んで、地獄の奴らの魂を引き抜いてこい。その引き抜いた魂は…………ほれ、そこの袋に入れちまえ」

 ジジイは床に無造作に捨てられた、コンビニのビニール袋に目線を送った。

「コンビニの袋?」

「そうだ。コンビニじゃなくてもいいぜ。スーパーのレジ袋でもな。そいつに入れちまえば、奴らはおとなしくなる」

「なんでまた、レジ袋なんだ?」

「エコだからよ」

 なぜかジジイは、鼻の穴をおっぴろげて威張っている。全ての事に理解不能なジジイの考えだが、これは分かるような気がする。

 地獄から来た侵略者が、地球に攻めてくる。地球を守らなければならない。地球を守る、イコール地球に優しいことをする。地球に優しいのは、今流行りのエコ。レジ袋は燃やしても地球に優しいからエコ。行き着くまではまどろっこしいが、多分そんな単純な理由からだろう。

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