芋虫ジジイ
銀行強盗団のプーやんとだいちゃんに指示され、俺は足を負傷したおばさんを背負った。
「このおばさんね、だいちゃんを見てビックリして、逃げようとしたら足をくじいちゃたんだよ。ケガさせるつもりはなかったんだけど、悪い事したな~」
プーやんは頭を掻いて、実にすまなそうな顔をする。
「なんでえ、おめえら。そう思うんなら強盗なんかするんじゃねえよ。いい野郎なんだか悪い野郎なんだか、はっきりしやがれ。ツラといい服装といいよ、紛らわしいにもほどがあんぞ」
手足を縛られているジジイは、芋虫のような格好で鋭いことを言ってのける。銀行強盗なんてやめちまえ、とジジイに言われても、プーやんは首を振った。
「ダメだ。銀行強盗すると、お金がいっぱいもらえるんだ。なっ、だいちゃん、そう言われたもんな」
「うん、そう言われた」
「誰によ?」
芋虫ジジイは聞きながら首を捻る。だいちゃんは自分の頭を指差した。
「この中の人に言われた」
「俺もそうだ。全部段取り組んでくれて、指示も出してくれる。俺たちは動けばいいだけで、頭を使わないから楽でいいんだ」
「頭の中の人……? なるほどね、そういうことか……まいったねどうも」
ジジイは眉間に皺を寄せて険しい顔をすると、俺に向かってクイッとあごをしゃくる。おばさんを背負ったまま、芋虫になって倒れているジジイの前でしゃがんだ。ジジイが俺の耳元で囁く。
「ジャック、どうやらこいつらは、コントロールされてるようだぜ。地獄の奴らによ。憑かれていやがるんだ」
「地獄の奴らの侵略か?」
「そい言うこったな。めんどくさくなっちまったようだ。はええとこ、おばさんと支店長を解放した方がいい」
「分かった」
小さくうなずき立ち上がると、プーやんとだいちゃんに向き直った。
「おばさんを外に連れて行く」
玄関に向かって歩きだしたが、
「ちょっと待って」
だいちゃんに呼ばれて振り返る。だいちゃんは迷彩色のツナギの前をはだけ、胴体にくくりつけている物を見せた。
「警察に言って。ダイナマイトを俺もプーやんも身に着けているから、手荒な事はしない方がいいよ、って。へへへっ」
だいちゃんが笑うと、プーやんも前をはだけてニッと笑う。それぞれ二十本はダイナマイトをくくりつけている。
数の多さに呆れ、俺は黙ってうなずいた。
「どっこらしょ……」
おばさんを背負い直すと、重い足取りで玄関に向かった。




