どこやられた!
そんな奇妙な走馬灯が頭の中を駆け巡り、ふっと意識が薄れかけたその時、ゴン! と銃声に匹敵するほどいい音を響かせて後頭部を床に打ちつけた。
「痛い……」
「真治!」
由美子が叫びながら飛んで来ると、俺の肩に手を回して抱きしめる。
「真治! しっかりして!」
「由美子、俺はもうダメだ……。高橋のおばちゃんに伝えてくれ。素敵な笑顔をありがとう、と……」
弱々しく言うと、涙目の由美子が俺の顔を覗き込む。
「高橋のおばちゃん? 誰よそれ。しっかりしてよ! どこを撃たれたの」
「わからない。もう、痛みを感じないみたいだ。でも、強いて言えば後頭部がズキズキするかな」
由美子が透かさず俺の頭を確かめる。
「後頭部より頭頂部に大きなコブが出来てる。銃弾の影響かもしれないわ。死なないで!」
由美子がボロボロ涙をこぼしているので気が引けるが、真実は正確に伝えた方がいいだろう。
「そのコブは先日、由美子がフライパンでぶっ叩いた時にできたタンコブだ。まだ腫れが引いてない……」
由美子が一瞬ギクッとした時、「ジャック!」ジジイが血相変えて飛んで来た。
「どこやられた! どこだ! ここか? どこだ! ここか? ここか? どこだ! どこだ!」
喧しく喚き散らすジジイは、俺の体を隅々まで摩りまくる。お絹も体を上を忙しなく飛び跳ねる。
「ん? おめえどこも撃たれてねえぞ」
ジジイに言われなくても、薄々そうではないかと思っていた。死ぬ間際に見る走馬灯が、高橋のおばちゃんの思い出だけでは悲しすぎるし、なんと言っても撃たれた痛みを感じない。
「あっ! 撃たれたのここじゃないの? 穴が開いてるわよ」
由美子が俺のわきの下を指差した。
恐る恐る見ると、マントに焦げたような穴が開いている。胸と左腕の隙間をすり抜けた銃弾がマントを貫通したようだ。
「脅かしやがって。撃たれてねえのに派手にひっくり返るんじゃねえよ。ケガしてねえんなら、いつまでもベタベタと由美ちゃんにひっつくな。ほらどきやがれ」
ジジイが由美子から引き離そうと、俺の手を引っ張ったその時、
パン! パン! と二発の銃声が轟いた。




