屁っこき由美子
股下がスースーして気持ちが悪い。着替えることが出来たので着替えたが、なんとご丁寧に、ちゃんとブラもつけていたし、白いパンティーもはいていた。その姿を見て、ジジイは本当に死にそうになった。なんとか自力で蘇生したようだが、頭に冷たいお絞りを当ててソファーで唸っている。
「生きてるか、じいさん」
「おぉ、でえじょうぶだ……。危うく死ぬところだったぜ」
死ねばよかったのに。
「どっこらしょ」
ジジイは弱々しく立ち上がった。
「じいさん、どこ行く? 帰るのか?」
ジジイはへろへろと首を振る。
「ちょっとおしっこ」
壁を支えにヨロヨロと便所に向かう。なんとも忙しいじいさんだ。
ジジイと入れ替わりに、寝室のドアが開いた。
「真治おはよう……」
屁っこき由美子が起きてきた。
時計を見るともう七時。いつの間にかジジイと二時間以上も飲んでいたのだ。
「おはよう」
「なにこれ? こんなにたくさん飲んだの? まったく朝っぱらからいいご身分ね。あーあー、お味噌もこんなにグチャグチャにしいて」
由美子はテーブルに散乱するビール缶と、皿にウンコのようにべっちょりこびりついた味噌を見て、露骨に嫌な顔をする。
「いや、これはじいさんが……」
「じいさん? なに言ってんのよ。ちゃんと片付けなさいよ」
「はい……」
「はぁ~……眠い……」
由美子もジジイに負けず劣らずへろへろだ。
髪はボーボー、目は落ち窪み、肌はカサカサで美人の見る影もない。
「なんか寝てて疲れちゃった……」
倒れこむようにソファーに座る。そりゃそうだろう。あんだけ騒がしく寝ていれば、疲れて当たり前だ。
「あら?」
由美子は首を傾げると、テーブルに置いてあるフライパンを手に持った。
「なにこれ?」
「あっそうだ! 由美子! 俺は無敵になったんだぞ。ちょっと試しに俺の頭を、そのフライパンでぶっ叩いてみろ」
由美子は俺とフライパンを交互に見て首を捻る。
「無敵? バカじゃないの。なに酔っ払ってんのよ」
「いいから、おもいっきり頭を叩いてみろよ。俺はなんともないから。ささ、早く叩け。見たらびっくりするぞ」
俺は由美子の前に頭を差し出した。
「やれって言われたらやってあげるけど、どうなっても知らないわよ」
「へへへん、俺様は無敵なのさ。さあ、遠慮なくぶちかませ」
「はいはい、じゃいくわよ。どうなっても責任とらないからね」
由美子がフライパンを大きく振りかぶった。
「さあ、おもいっきりぶちかましてもらいましょう」
ジャーッ
ジジイが流す便所の音が聞こえた。何気なく便所の方を見ると、ジジイが血相変えて走ってくる。
「まっ待て!」
ジジイが叫んだその時、
バッコ~ン!
俺の頭の中に、いくつもの火花が散った。
薄れる意識の中で、
「あ~あ、やっちまった」
ジジイののん気な声が聞こえ、やがて闇に落ちた…………。