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いのちの音色

カッコいい生き様を描きたくなって創作しました

春風が音楽を奏でている。厳しく頑固な雪は溶け始めた。

「風のような奴だった」そう呟いた。笑顔と泣き顔の混ざったような表情だったが、それだと安太郎に笑われちまう。そう思って表情を変えたら変顔になった。結局、この顔をみたら奴は笑うだろう

風はカラッとして小枝を揺らしている。風の音色は最高にサッパリだ、モーツァルトにバッハ、音楽室の肖像画にあるような歴代の音楽家でさえ、風の奏でる音楽には勝てないだろう。安太郎が奏でる音楽のようだ

彼の部屋は防音室らしい、男の部屋にしては整理整頓されている

「くれてやるよ」「本当に貰っていいの?」「ああ、ゲーム機に未練なんてない」「ならいいけど」その場でゲーム機を俺にくれた。彼は安太郎、学生時代は一緒にバンド仲間として活動していたが、社会人になって再会した。今はフリーの楽器奏者として働いてるらしい。「俺、余命半年なんだよね」素っ気ないほど安太郎は平然と言った。俺はなんと答えていいのが分からなかった。すると安太郎は続けて言った「最高の気分だよ」「怖くないのか?」「いや、別に」強がってる訳では無いことがわかる。俺は黙っている気まずさと好奇心に勝てずに「俺は安太郎と同じ状況ならきっと怖いと思う」と言った。すると安太郎は天を見上げながら「うーん、でも思い残すことなんてないからなー」とまたしても平然と言った。俺は安太郎に最後に演奏を聴かせて欲しい。と頼むと安太郎はバックからギターを取り出し演奏を始めた。

演奏した瞬間、空間に涼しい安らぎの風が吹くようだった。音楽を聴きながら学生時代の彼の性格を思い出す。実家が貧乏なバンド仲間に自分の楽器をポイッとあげていた場面を思い出す。「未練なんてないよ」いつも性格は爽やかでさっぱりしていた。

涼しい風のような性格が演奏にも現れているようだった。

演奏が終盤に差し掛かる。頭の中に複雑な声が浮かんだ〔安太郎の音を聴き続けたかった!終わって欲しくない!〕口には出さなくてもそう思った。演奏が終わった。

「ほい、最後の演奏だよ」「なぁ、俺は未練タラタラみたいだよ。ダセェな」そう言うと安太郎は悪戯っぽく笑ってサッパリした顔で「そか、でも俺は思い残すことなんてないよ」

サラッと言った。そうか、これは安太郎の勝利宣言だ。死という全てのいのちを捕まえる恐ろしい網でさえ安太郎を捕まえることはできないみたいだ。風を網で捕まえることができないように

半年後、彼は亡くなった。

遺言書には「葬式不要。遺体は世の中の為に献体する」とだけ書いてあったらしい。最後の最後まで(いき)だ、カッコいいな。

墓の前に立って生前のエピソードを思い出していた。

墓の前は心地よいカラッとした風が吹いている。「お前みたいな死に方できるかな」

俺自身の残りの寿命に思いを馳せた。やっぱりまだ未練がある。まだ俺は彼のようにはなれないみたいだ。

涼しい風のような性格に

【終わり】

安太郎というキャラの名前は「安らか」「安らぎ」の安いから取って作りました。

安物とか、値段が安いって意味じゃないよ

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