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4.5話 2023年のミヤビと岸本理恵たち

1.5、2.5、といった小数点の入る回は、サブストーリーとなっています。もちろんサブストーリーなので、読み飛ばすことは可能ですが、より深くこの物語を知っていただくためにも、読んでもらえると嬉しいです。


今回は"MAD KNIGHT-怒り狂う悪魔たちと歪んだ閉鎖都市-"の主人公・ミヤビと"デイズ-名も無き魂の復讐者-"の岸本理恵たちが登場します。

2023年、6月。ミヤビがまだ9歳の小学生の頃だ。


『っく!!!」

ミヤビはデブな奴に勢いよく殴られる日々を送っていた。勉強もスポーツもできない奴だが、他人をいじめるのは得意らしい。

『なんだ?殴られただけでもう泣きそうになってんのか?』

無様な変顔を平気で晒せるその度胸。むしろ褒め称えたいわ。そう鋭い目つきを突きつける。

その時に、凄まじい風が横切るように僕とデブないじめっ子の境界線へと突き刺さる。そこには、銃弾のように、飛んできた氷柱。この6月に、氷柱なんてありえない。それは小学生でも分かる。


だが、意地が強いデブは、もう一歩前進する。彼の暴力行為が激化する度に、増えていく氷柱がデブの足元へと侵入する。直接は当たらなかったものも、危機感が優ったデブは、俺へと背を見せて逃げてった。

僕はあいつが逃げていったことより、氷柱の飛んできた物陰の方が気になって仕方がなかった。僕は、押された衝撃で打ちつけたお尻を上げ、物陰へと歩み寄る。

公園を囲む色鮮やかな草木からカサカサと聞こえる。おそらくその場から去った証拠だ。僕は逃さまいと一気に駆け寄ると同時に目に見えた光景に、思わず大声をあげる。それは向こうの相手もそうだ。


どうやら女子高校生のようだ。その彼女は(清潔感のない)ボサボサの前髪が鼻の位置までかかっている。そのため、その女子生徒がどういう表情しているのかよく見えない。でも驚いた反動で、オレンジがかった瞳が目に映る。

だが、やけに震える女性。僕はそんな彼女に優しく手を差し伸べた。


『大丈夫だよ』

『・・・・う』

『助けてくれたんだよね?』

『・・・・うん』

『ありがとう』


"ありがとう"

その一言だけでも救われたのだろう。最初はびっくりしていたけど、僕の真っ直ぐな気持ちに応えるべく、手を伸ばした。



*  *  *


そのまま帰るのも、どこか申し訳なく思ったのか、ブランコのとこで彼女と会話することにした。どこか寂しそうだったから。


『ねえ!!お姉さん!!!どこの高校に通ってるの?』

『朱森高校』

『えー〜ー!!!!すごいじゃん!!!その高校ってめっちゃ賢いって聞いたことがあるよ!!!』

『・・・・』

『部活は何入ってんの?』

『・・・・・』


部活の名を聞いた途端、彼女は黙り込んでしまった。


『ごめんね!!!無理に答えなくていいんだよ!!!』

『・・・ありがとう』

『それにしても、オシャレとかしないの?』

『・・・オシャレは・・・しない』

『マジか!!ちょっといい?』


僕は、彼女の力になりたいと思い、あっという間に距離を詰めた間合いに前髪をかき上げる。僕に何かできることがあるならと。


『ちょっと!!!』

『いいから!!ヘアゴムある?』

『え・・・』

『いいから!!!』


それから数分後、重たい前髪を上げた簡単なヘアスタイルができた。おかげで、綺麗なおでこと顔がよく見える。


『妹のを結んであげてるから慣れてるはずなんだけど・・・なんか東京なんとかのマ●キーみたい』

彼女は、自分のヘアスタイルを確認するべく携帯電話の内カメラで、自分の顔を見る。

『ふざけたのね!!!』

『でも、前髪上げたのは、正解だね!!女優さんみたいに綺麗だよ!!!』

『そ、、、そう?ありがとう。君、名前は?』

『ミヤビ!!!姉さんは?』

『私は・・・安藤由美香あんどうゆみか

『名前の響きがいいね!』

『ミヤビくんは人を褒めるのが上手だね。もしかしてやり手だな?』

『やり手って何が?』

『い、いや!お子様には、まだ早かったね、何でもない』


そんな会話も束の間、彼女は警察パトカーのサイレンが鳴り響くと、途端に周りの警戒心を高める。

『ごめんね、ミヤビくん・・・私行くところがあるから』

さっきの時間は嘘のように、笑顔が強張った表情となり、その場を後にしていった。



*  *  *


どこかの大きい通りにて。


『あーもう!! 最近は柔道の練習が過酷すぎるわ!!!』

そう思いながら、私・岸本理恵きしもと りえは身体の節々から出る疲れを取るように、腕を回した。何度相手を投げれば済むのやら。


『理恵は全国大会が近いもんね、そりゃあ疲れるよ・・・じゃあ、私が何かおごるよ』

『え!?いいの!?』

『いいよ、全然!!!』

あの人見知りなたちばな 萌絵もえが、今では多少話せるようになったし、行動力も以前より積極的になっていた。彼氏・吉田隆文よしだ たかふみのおかげかな?とか思ったり・・・


私は必死に頭の中で、奢ってほしい物リストを浮かべた。ワックとかセタバもいいな。でも、今日の気分で見ると、ゆっくりステーキだな。


『じゃあ・・・・』


萌絵に奢って欲しい物を口にしようとした時、前方から悲鳴が聞こえる。

瞬時に状況を呑んだ周りの人々は口々にした。”能力者だ”と。よく見ると、前から走ってくる一人の女子高校生、そして彼女を追うように迫り来る警官が二人見えた。


おそらく、犯人は手前の女子高校生。万引きでもしたんだな。私は手加減せずに、瞬時に女子高校生と距離を縮める。今こそ、柔道で習った技を活かすとき!!なんて考えてしまっていた。

私が距離を縮めると同時に、女子高校生から振り払うための腕が伸びてくる。チャンスと読んだ私は、腕を自分へと引っ張り上げると同時に、背負い投げる。


『おりゃあああああああああ!!!!』


宙へと回転した女子高校生の身は、大きく地面へと倒す。今、女子高校生の片腕は私の絞め技で拘束され、仰向けになっている。だが、どこか違和感を覚えた。みんなが口々にした”能力者”という言葉と目にした女子高校生のオレンジ色の瞳。簡単に倒せる方がおかしい。


そこで空いた手の平を見せるように、私の顔へと持ってくる。0.5秒の世界で見れば、手の平から物質を生み出そうとするエネルギー源が確認できた。

同時に、私の横腹へタックルを繰り広げる力が加わる。視線を移すと、そこには危機の回避を手助けする橘 萌絵がいた。彼女のおかげで逸れた自分の重心は、敵の手から放たれた氷柱を受けずに済んだ。


初めて目にした能力者・・・ということもあり、放心状態となった私はその女子高校生を足止めすることはできなかった。


*  *  *


時刻はさっきより暗くなった夕方。

結局、助けてくれたたお礼に、奢りは私の方から断った。その代わりに、行きたかった"ゆっくりステーキ屋"さんには萌絵と一緒に行った。めっちゃ、美味しかったです。



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