37話 ぶつかるそれぞれの想い
クッソ!!!これじゃ、ケリがつかないぞ!!!
互いに覚醒し始めた俺・篠崎蓮と西山晴人は、もはや片手ひとつで高層ビルを投げつけられるほどのパワーをぶつける。だが、ほぼ全能である俺たちは、物さえ透き通るような肉体に変形させることで、ダメージ0。
『もっとだ!!!もっと来いよ!!!蓮!!!』
もはや、終わりのない戦いに笑みをこぼす晴人。なら、次は能力による連続攻撃を生み出すまで。
まず、指先から溢れていく霧を広い範囲で拡大させる。晴人が突っ込む気になるまで、準備を怠らず。
来た!!晴人の一直線にせまり来るシルエットが確認できたら、ターニングポイントに無重力のエリアを描き出す。
見事に罠に掛かる晴人に、俺は業火の炎で晴人を覆い尽くす。もう手加減するレベルは超えている。
晴人は必死に無重力エリアから抜け出そうとするも、なかなか苦戦する横顔が一瞬映る。
次は無重力で作り出した球体エリアを、地上0メートルのアスファルト道路まで急落下させる。地面と衝突する手前で、そのエリアを無効化。晴人は大きく地面に叩きつけられる仕組みだ。
地上まで400メートル、250メートル・・・・
ついに球体エリアを型どる厚い膜にヒビが描かれていき、刻まれていく。
地上まで100メートル、50メートル、20メートル、10メートル、3メートル・・・
今が解除の時!!!球体の中にとじ込められた晴人は、無重力エリアから解き放たれる。だがそれだけじゃ、地面に叩きつける勢いはない。さらに追い討ちで白く眩く光る球体エネルギーで完全に吹き飛ばす。
皮膚が剥がれるほどに。だが手応えがない。
『そりゃ、そうだろ?マインド専門の俺からしたら、お前の考えなんてお見通し』
いつの間に!!!背後を取られていた俺は、瞬時に自分の首を守る。親父も死・肉体に関する全能者だが、首を切断されたことで、神経が通わなくなった同時に死亡した。この世に完璧なことなんて、ないってことかよ!!!
だが、彼は意地でも神々を呼び起こす計画を実行するべく、両腕切断を繰り出した。
最も簡単に、スライスされるように両腕が肉体から離れていく。さらに加わる腹への拳突きに、鋭い蹴りが同じ部位に痛みを倍増させる。激痛から込めたエネルギーにより、地上のアスファルト道路に叩きつけられる身。だが追い討ちで拳が俺の顔面に降りかかる。2、3回転していく肉体で、狙いの位置から距離を取るも、拳と地面から強烈な衝撃波が、さらに後退させる。
次はなんだ!?
両手が強く引っ張られる勢いで拘束されているようだ。すぐに顔を上げると、両腕に巻きつく長い触手のようなもの。よく見れば、複数に増えた晴人が、輪ゴム並みに伸びていく手で絡み付いている。振り払おうにも固定されていた身。
さらに晴人の一振りで、隆起させたアスファルトは、俺の全身を完全固定させるよう押さえつけていく。
『うっくわああああああ!!!』
思わず、声で荒げる痛みに全身は次々と潰されていく。もはや内臓まで圧迫していく始末。苦痛が神経全身に思い知らせる俺の姿に、顔を寄せる晴人。
『お前のせいで、みんな死んでいく・・・そして最後に残るのはお前一人だ。もう誰もいない孤独となる』
『一人じゃない!!!!』
は!!晴人は、やっと追い詰めた蓮に気を取られて、背後から迫る飛び蹴りを顔面に喰らう。
同時に俺の背後から加わる怪力で、アスファルトで押しつぶされた肉体は解放される。それだけじゃない。左右に佇んでいた分身の晴人二人組も、瞬時にテイクダウンを喰らっている。
『立てるか?』
よろめく体勢に、体を支える厚い手。思わず、相手に頼るようにもたれてしまうが、1秒間に合う互いの目線に俺は、強く突き飛ばした。
『お前・・・なんでここに!?』
まさかの瓜生新生。さっきのこととは思えないほど、見違えた顔つきを持っている。
『早くして!!!瓜生!!!』
朱莉の声が晴人の飛ばされた方向から聞こえた。俺も加勢しようとするも、うまく体が動かない。
『お前は休んでろ!!!』
そう言い残し、煙の中へと突っ込む瓜生。まだだ。起き上がれよ!!!全身を奮い起こし、振り絞る肉体。
なんとかして二足歩行まで持ってきた俺は、煙の中へと突っ込んでいく。
霧と化した視界の悪い環境で、熾烈な轟音が響き渡る。朱莉!!!やっと拓けた視界に、俺は目の前に差し迫った晴人の顔面に、炎を宿した拳をぶつける。
顔面は変顔並に揺さぶられる晴人。今度は瓜生が先頭となり晴人へ向けて連続的な近距離戦に挑む。
手は、氷柱状に鋭利な刃として、晴人の顎に突き刺す。口内部まで食い込む刃に、噴き出る血飛沫。
『待って・・・』
何故か戸惑いが口から溢れるも、瓜生は空いた左手で握る銃で顔面の額へとぶちこむ。
あんぐり開けた口に、上へと真っ白にひん剥く目、もう死んだのか・・・
すると、勢いよく瓜生へと顔を近づける晴人。
『ばああ!!!』
どうやってやった!?
晴人の背後から、過去に戦ってきた能力者たちが津波並に覆い被さる。
カメレオンのように見た目を変える能力者、鬼の能力者、鋼の能力者、武器の能力者、地形を変える能力者、炎の能力者などなど・・・数え出したらキリがない。さらに複数に分身した晴人が俺たちのとこへと、迫り来る。
俺たちと能力者が衝突するまでもう1メートルもない。その時に加わる新たな力が、一部の能力者を人斬りで終わらせる。
『早く、晴人を探せ!!!雑魚どもはおれと朱莉に任せろ!!!』
割り込んでくるのは、アーマースーツを使って飛行してきた如月紫苑。
『ほらこっちこい!!!』
陽動作戦を実行するように、如月紫苑は、再び飛行で能力者を惹きつける。
『私は強い!!!いくらでもかかってこい!!!』
今度は、咲白朱莉が交差点付近に立地していた高層ビルの中へと入っていく。
さらに俺の肩に強く手を乗せる男・瓜生の姿が。
『俺たちで、晴人を見つけるぞ!!』
瓜生の指示に軽く頷き、また走り出す。
* * *
研究センターにて。
時限爆弾を握るボタンのせいで、西園千早に近づけない。
ただただ時間稼ぎするしか方法がなかった。
なら、影の怪物の精神操作で、少しでも判断を鈍らせるしかない。もう完全同化した影の怪物は、私の意思で操るように影として姿を現す。従来の光が差し込む際に入り込む人影になりすまして。
西園はそれに気づいていない。
その間の時間稼ぎをと強く攻め入る。
『なんでこんなことを!?』
『なんでか?残酷な生命をこの世から消し去るためだよ。政治では基本のことだ。何か悪い問題が起きているなら、その根本を取り除けばいい。この場合、人類や能力者がいるから、例え能力者がいなくても、人類同士で戦争が起きる。そうやって・・・私の家族は殺された。』
『もしかして、あなたが・・・能力者をあの島に送ったの?』
『この日のために、生き残らせた。神々がこの地に存在する全ての生命を滅ぼしてくれる』
『そんなの、極端すぎる!!!』
宮川まで感情的にぶつける怒り。だが、怒り任せな感情に全く動じない振る舞い。
『そう!!その極端な解決策が一番いいってことに気づいたんだ。どっちかを救うかとか考えるより、一番楽だ。みんな死んでしまえばいい。そうすれば、孤独になることもあるまい』
『お前・・・殺していいか』
蒼いレーザー光線を蓄えるべく、目から眩い光を輝かせる羅輝き。でも、私は宮川も羅輝も落ち着かせる。ここで感情的になるのは間違っていると・・・
『あ!!あと変な小細工はしない方がいい』
『は?』
思わず、過剰反応を示してしまう私・岡本優花。西園は全てを見据えているようだった。
『影の怪物を使って、私の精神を操ろうとしているようだが、無意味だ』
くそ・・・なんで・・・
『そういえば、岡本優花さんだっけ?君に見せたいものがある』
なんと西園は、今いる部屋から奥の部屋へと続く扉をゆっくり開き、手招きをする。
何があるんだ・・・私だけ、恐る恐る西園との距離を縮めていく。横を歩いていく目の前には、私の身長なんて優に超える大きな装置が、佇んでいる。これがあの装置と認識しながらも、奥の部屋へと入っていく。
『なんですか?見せたいものって』
西園は見て欲しいものに指差す。その先には、見覚えのある扉のみが、部屋のど真ん中に建てられている。扉の前に結界でも張っているのか、向こう側から酷く叩きつけられる扉が、こちら側に開くことはない。
ひたすら、ダンダダンという扉を叩きつける何か。
そう・・・これは・・・かつて影の怪物が、この世へと流れ込んでくる扉。孤島である黒山島で発見され、確か燃やされたはず。二度と、影の怪物による侵略を防ぐために。でも、西園がそれを拒否したのか・・・
『全部、あなたが?』
『結局は燃やさなかったおかげで、またあの人に会えるかもしれないだろ?』
『何が望み?』
『あいつらをここから追い出せ』
軽く視線で、私たちの仲間に目をやる。彼らは佇む様子で、こちらを見ている。
『正直、影の怪物を操れるお前が、今ここにいる誰よりも強い』
『私がそんなことすると?』
『会いたくないのか?あの男・坂口紘ってやつに・・・』
『そんな私情で!!!』
と怒鳴りつけるよりも前に起動爆弾のボタンを見せつける。
『じゃあ、取引を変えよう。アイツらをここから引き離さなければ、このボタンを押す。多くの犠牲を生むぞ』
『追い払えば、私が坂口くんに会えると?』
『そうだ』
『でも、結局は全員殺すんでしょ?意味ないじゃない』
『君があちら側の世界に行けばいい・・・ならこっちの世界とは無関係だから、君たちは生きることができる』
* * *
大阪にて。
私・西野明奈は、あの全能者と最後の蹴りをつけようとしていた。今、各地でどんな状況になっているか分からないけど・・・絶対こいつだけは生かすことができない。そう思えた。
目の前の全能者・本宮セイナ。人・物をコントロールする能力がすば抜けている。こいつのせいで、戦闘機は、ぺちゃんこのガラクタと化した。
なら、物を頼りにしない方がよさそう。いけない!!こうやって考えても決着はつかない。動け!!!私!!!
いつもそうだった。考えてばかりで、娘のために動けないことが多かった。些細なことだけど、いつも忙しいと正当化するばかりで、娘のために運動会や授業参観にも、参加してあげられなかった。
それは考えるだけで、動かない私の悪い癖だった。なら今こそ動け!!戦え!!!と全身全霊を肉体にこめる。
最初は煙を周囲に撒き散らす。
『小細工ばかり』
そんな一言が微かに聞こえた気がするが、私にできることなら、そのまま動き続けろ!!!手始めに周囲に転がる大きな瓦礫を煙の中に身を潜めた私に投げつけてくれる。だがそこを避けるのは、容易。次は足元に身につけていた小型のリモコンを取り出す。スイッチのボタンを押し出せば、変形していく過程で翼を蓄える。そう。組み立て式の飛行型ドローンです。瞬時に飛ばしたドローンはセイナの元へと。
高性能な飛行方法を備えるドローンは、華麗な躱しでセイナの飛ばしてくる瓦礫を避けていく。
『もう雑魚ばかりに付き合うのは、面倒なんだよ!!!』
セイナの感情的な怒りを囮に、私は背後から刀を彼女に突きつけるも、それは無意味と化す。感づかれたことで、刃は、セイナの思い通り静止。どれだけ力を加えても、びくともしない。
『死ね!!!』
セイナは空気中の物質から、こめていくエネルギーを描き出す。高速の渦を巻いていきながら。
なら、宙に浮いた刃から手を離して、空中蹴りで顔面を狙う。だがそれも、宙で止められたせいで、下半身も動かなくなった。
すると、何かしらのタックルが、セイナの体勢を大きく崩す。自暴自棄になっているように見える乱暴な拳が、彼女の頬や頭部へと突きつけられる。彼女の意識が飛びかかる何者かに向いたことで、私の拘束も解かれる。
宙に浮いた身から起き上がる先に映るのは、セイナにのしかかり、ひたすら拳をぶつけていく前川結城さんの姿が。
だが、大人しくやられるわけがない。
背後から鋭利に削られていた釘型のコンクリートが、結城さんのところへと一直線に飛びかかってくる。
『結城さん!!!』
なんとか名前を呼んだことで、瞬時にのしかかる体勢から距離を取るも、セイナの取り押さえるものがなくなった。なら、私が!!!そう、セイナの上半身を飛び込む。
『っく!!!放せよ!!!』
空いた右手で創造される刃が私の背中に降りかかるも、結城が彼女の手首に掴みかかる。
『放せよ!!!どいつもこいつも!!!!』
『嫌です・・・私には守るものがある!!!』
次の瞬間、仰向けに倒れたセイナは背中をつけた地面からポータルの落とし穴が突如現れる。油断した私と結城さんは、そのまま落とし穴の中へと落下していく。
また見える新たな景色は、まさかの通天閣。
とにかく落下速度を抑えるパラシュートさえ持っていない私たちは、とにかく大きく膨らむフグの提灯へとダイブ。
微かなクッションとなった私たちは無事地上へ落下。
『なあ、西野さん・・・俺がひたすらあいつに攻撃ぶつけるんで、隙があれば加勢してください』
冷たい目でセイナを見据える結城さんの横顔から伝わる覚悟。私も彼と同様、いや、それ以上に決意を込める。
セイナは、煙の中から黒いシルエットとして浮かび上がる。
『次で終わらす』
その一言に、結城は指先を向ける。何を!?次の瞬間、指先に込められた鋭い一直線は、セイナに触れると同時にとんでもない爆発と衝撃波が屋台や居酒屋に張り巡らせたガラス窓を散らす。
もしかして・・・結城さん、能力化を・・・いや、今は感情が揺らぐ時じゃない。結城さんの覚悟を無碍にするな!!!そう、隙のある相手へと、手に握る刀を振りかざす。
結城が拳をぶつける度に、巻き起こる爆風。この近距離戦なら、コントロールする全能者は不利になりやすい。もはやできるのは、人自身を操るのみ。セイナはそれに賭けた。でも、それはすでに遅い。
容赦無く腹部に切り裂く勢いで、彼女の肉体から赤い海が噴き出る。弱まっている。さらにぶつける拳で、彼女の顔面も爆風で崩壊していく。次で仕留める。完全に遅れのとったセイナの背中へと貫通して行く刃。
『くっ!!!』
セイナは多くの打撃を受けたのだろう。手足の力が抜けると同時にふらつく姿勢。
『ありがとう・・・西野さん』
『え・・・』
急にどうしたのだろう?清々しく、初めて見せる笑みの結城さん。次の瞬間、覚悟を決めた大きな一歩。
まさか!!!結城さんは、セイナへと体当たりを仕掛けると同時に、一軒の居酒屋へと飛び込む。
『結城さん!!!』
次の瞬間、今まで繰り出した爆風が私の頬と意識を揺さぶると同時に真っ白な光へと追い込まれる。
すぐにでも結城さんを助けたかった。だから、早く目を覚まして!!!
と重い体を持ち上げる。だけど・・・すぐにわかった。結城さんもセイナも炎に覆われたまま、びくともしない。




