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2.5話 体育祭

1.5、2.5、といった小数点の入る回は、サブストーリーとなっています。もちろんサブストーリーなので、読み飛ばすことは可能ですが、より深くこの物語を知っていただくためにも、読んでもらえると嬉しいです。


今回は体育祭がメインのサブストーリーです。

体育祭の日、訪れた朱森高校あかねもりの運動場には多くの人が詰め掛けていた。白いラインの周りを囲むように敷かれたブルーシートに戯れる生徒。そして、朝礼台付近には、保護者と教授たちが白いテントで日光をしのいでいた。


人混みの中を掻き分けながら突き進んでいくと、ブルーシートの上で楽しく笑い合う男子高校生や女子高校生の姿が。


『蓮くん!!こっち!!』


声のする方向に視線を向けると、笑顔で呼んでくれる美波の表情が目に映る。彼女の視線の先が気になった何人かの生徒たちは、俺の方に視線を向ける。その中に晴人も爽やかに迎えてくれた。


なぜ、こんなことになったかって? 応援団を見に来てほしいんだと。なんせ、団長・西山晴人、副団長・成瀬美波がやるのだから。まあ体育祭には行けるぐらい、身体はもう治ってるしな。


『蓮じゃん!!!久しぶり!!!』


誰か分からないクラスメートの一言には、久しぶりの友に会えた喜びが表れていた。その表情に嘘があるとは思えない。俺はクラスのところへ歩み寄り、美波と彼女の友達が空けてくれたポジジョンに腰を下ろす。


『来てくれてありがとう』


俺が来てくれたことに喜びと感謝が込められた美波の笑顔。彼女の表情を一言で言うなら天使という言葉が一番似合うだろう。


そんなことを考えている俺の背中に大きな体がもたれかかる。重!!誰だ!!!容赦無く俺にもたれかかる奴は!? 

そんな言葉が脳裏によぎりながら、後ろを振り向く。


『お前が蓮か!!』


高校生にしたら野太い声が印象的。面と向かい合うようにしてくれたのか、背中にかかった負荷が小さくなり、2、3歩下がる男子高校生。俺が視線に向けた先に立つ男子は、高校生なのか?と思わせる大柄な体格。二の腕の太さには、かなりのスポーツマンであることが伺える。


『お前、競技には何も参加しないつもりなのか?』

『まあ、見学のつもりで来たからな』

『つまらん男だ・・・』


はあ!?別に面白い男になるつもりはねえよ!!!ってかなにでつまらんと判断したんだよ!!

そんなことを思いながらも口にはしなかった。その大男は、あのメガネかけた担任を見つけると・・・


『先生!蓮を最後のアンカーにしてもいいすか?せっかくならみんなで参加させた方がいいと思うんすけど・・・』

『青木!!蓮君は見学のつもりで来てるんだから、急に言われても困ると思うよ・・』


センター分けの黒髪に、のほほんとした落ち着きと癒しの印象を与えるタレ目女子が、大柄の青木に口を挟む。彼女の胸には”楓”と書かれていた。彼女が美波の親友・安村あんむら かえでだと理解した。


楓なりに助けてくれたのだろうが、先生はあっさりアンカーとしての参加を許可してしまった。


『でも、体操服あるのか?』


晴人の質問に、青木はすぐ答えを突き出した。大柄の彼は部活用の大きい黒バックから体操服の上下を俺に投げ渡す。


『それ着ていいから、参加しろ!!』


*  *  *


『次の競技はクラス対抗リレーです!』


落ち着きと覇気あるアナウンスが運動場に響き渡る中、少し緊張していた。なにせまともに人と関わってなかった俺が、アンカーとしてみんなの責任を背負うことになるんだからな。気づかないうちに落ち着きのない仕草をしていたのだろう。


歩み寄り、俺の肩に手を置く一人の男子生徒・青木が現れた。


『走るのは得意か?』

『走るのが得意かはわかんねえよ。まともに体鍛えてるわけじゃねえしな』

『まあ、あんまプレッシャーになりすぎるなよ』

『誰のせいで・・・こんなプレッシャー』

『悪く思うな。俺はどんな奴であろうと仲間外れにはしたくないだけだ』

『そりゃあ、どうも』



『では、生徒の入場です!!」


放送部のアナウンスと共に、生徒一同運動場の中へと駆け込んでいく。

大勢の走った後に舞い起こる砂ぼこりと共に、先生の誘導された場所に向かって、列を作る。配置につくと、第一走者がそれぞれ引かれた白いラインの位置へと移動していく。


俺のクラスの第一走者は晴人か・・・


『では位置についてよーい、ドン!!!』


ピストルが鳴り響くと、第1走者は一斉に走り出す。同時に待機している生徒たちが大声で応援しだす。


『頑張れ!!頑張れ!!!!』


そんな熱い声援がしばらく続く中・・・俺の前にいたメンバーは少しずつ減っていく。自分の出番が近づいてる証拠だ。

『いよいよだな!!』

第三走目で他のクラスとの差を見せつけた青木が俺の背中を強く叩く。


俺の前にいた走者にバトンが託されたことを確認すると、先生の誘導でスタートラインへと移動する。心臓の鼓動が高鳴っているのがわかる・・・なんだ?緊張してるのか・・・いや、今はただ走ることに集中しろ!


俺にバトンを渡してくれる走者は楓だな・・・運動能力が高いのか次々と他の走者を抜いていく。一方で、一人の走者との距離を縮めることに苦労している様子。


『さあ、最終走に入りました!今トップなのは、1組!!』


そのアナウンスがされたときには、俺の手に熱く負荷のかかったバトンがのしかかる。俺は楓の・・・いやクラスのみんなが必死に繋いできたバトンをしかと受け取る。 

なんだ?この感覚・・・体がすごい軽い。実際、空いていたはずの距離があっという間に縮んでいく。


『蓮くん!!!頑張れ!!!』


美波と晴人が必死に張り上げながら声援を送っているのが聞こえる・・・それも大親友だけじゃない。誰かは分からないが俺の名前を呼ぶ声が何度も聞こえてくる。

これが応援の力なのか・・・


なら俺がすべきこと、クラスが繋いできたバトンを1位というポジションに持っていくだけ。

そんなことを言い聞かせながら、走るとどんどん1組との距離を詰め、気づけば追い抜いていた。



その瞬間を見届けるクラスの女子生徒の声援がさらに高くなる。そうだ!!いける!! そんな高鳴る気持ちで超えたゴールラインは俺が最初だった。


『2組が追い上げ、1位になりました!!!』


そのアナウンスと共にクラスのみんなが喜びと歓声に浸っている光景が目に映る。

これは俺にとって大切なものを気づかせる出来事だった。何を気づかせてくれたかはうまく言葉にできない。

それでも言葉として表現するのであれば、”仲間の存在”。



話は俺(蓮)メインになってしまったが、この後、ちゃんと晴人と美波の応援団も見ました。めっちゃかっこよかったし、熱くなる演技だった。


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