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アイサ・シュテルグ

三〇八でございます。

本作は前作から約一年、同じ世界でのお話となります。

前作執筆中は続編を書くつもりは無く新規作を考えていたのですが、とある情景が目に浮かび「描きたい!」と言う気持ちになってしまいまして……

本作は全作の主要人物には脇に回っていただき、転生先の少女を中心に話が進んでいきます。

ほんの少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 泥濘(ぬかるみ)だ…… 

 懸命に走るが足が(もつ)れて速く走れない。足が遅い、重い。

 足元を見る。

 しかしボヤっとした暗い足元には、別に泥が纏わりついている訳でも無く、邪魔をする草が生繁(おいしげる)でも無く、石が転がっていることも無かった。だが明らかに泥濘に脚が取られている、そんな風に足取りが重いのだ。

 ――逃げなきゃ……走らなきゃ……

 何者かが追って来る。

 魔獣? 野獣? 霊? ハッキリした姿形は見えないが目の様な所だけを光らせて自分たちを追いかけてくる。5頭? 10頭?

 気は焦るが前に進まない、進めない。全力で走っているはずなのに。

 頭に響く「もう少しだ!」の声。

 ――父さん? 父さんよね?

 父さんの声に続いて「こっちよ、アイ!」と、自分の手を引っ張る母さんの声も。

 周りは曇り空より暗い、澱んだ景色しか見えない。樹も草も、建物も無い。でも必死で走る。 

 そんな中で橋が見える。見た目にハッキリと分かる、しっかりとした吊り橋。何もかもが澱んで形を成さない中でそれだけが見える。

 ――あの橋さえ渡れば……

 両親と共に何とか橋に辿り着いた。だが辿り着いた瞬間、橋の様相は激変していた。

 自分たちが足を踏み入れたと同時に吊り橋は朽ち果てており、今にも崩壊しそうなボロ橋に激変していた。

 ――なんで? さっきまでは! ううん、とにかくここを渡らなくちゃ!

 橋を渡り始めた。見た目と違い、足取りはしっかりしていた。先程までの泥濘感が消えている。

 なのに橋が崩れ始めた。何故か崩れ始めた。

 ――待って! もう少し!

 崩れる。崩れ落ちていく……

 橋の崩落する中、父さんの叫び声が聞こえる。

「アイ! 先に行けー!」

 と。

「あなただけでも逃げて!」

 母さんの涙声も。

 そして何者か分からない追跡者の手にかかって橋ごと落ちていく両親。

 ――父さん! 母さーん!

 両親を呼んだ。だが二人は答えず、奈落の底へ落ちていく。

 対岸は目前だ。あとほんの少し。しかし今度は自分の足元が抜けた。

 一瞬身体がフワッとして、直後に両親の後を追うように自分もストーンと谷底へ落ちて行った。



「ホワッ!」

 妙な唸り声と共に全身をブルッと震わせ、アイサ・シュテルグは目を覚ました。シュナイザー帝国の首都、帝都バルン市に向かう馬車の中で。

「お目覚めか」

 荷物に背を(もたらせ)ながら対面に座っている仲間のブラントが声を掛けた。 

「うなされてたぞ?」

「……何か言ってた?」

「いや、聞き取れなかったな、呻くみてぇな声でよ。悪い夢でも見てたか?」

「……谷へ落ちる夢よ」

「ああ。俺も高いとこから飛び降りて、身体ビクッとさせて起きたことが何度かあるな。なんだろな、アレ?」

 アイサは何も言わず、肩を竦めることでブラントの質問に答えた。

「今、どの辺なの?」

「バルンは見えてきてる。あと10分と言った頃か?」

 それを聞き、コクコクと頷くアイサ。

「大丈夫か?」

「なにが?」

「汗掻いてるぞ」

 ブラントが右人差し指中指で額をトントンと叩いた。

 言われてアイサも額を拭ってみた。寝汗だろう、指にベットリ付いてきた。

「今日は涼しい。汗なんか掻いてると門兵に怪しまれるぞ。連中、嘘や隠しごとを見抜くのに発汗を目安にしてるからな」

「……そうね。すぐ拭くわ」

 そう言うとアイサはタオルを取り出し顔を拭き始めた。

 胸に届く銀の髪をたくし上げてシャツのボタンを一つだけ外し、首や胸元、脇の下も丁寧に拭う。

 服を着たまま脇を拭うとなると大して大きくもない胸でも邪魔になる。困ったものだ。

 アイサが汗を拭き終わってシャツを整えた頃、馬車はバルン市西門に到着して門兵の検査の順番を待っていた。

「いつもより掛ってるな……」

 ブラントと同じく仲間で御者のスペンスがボソッと言った。

「警備が強化されているのは当り前でしょ? 昨日から帝府の使節が来てるわけだし」

「シュナイザー帝国の首都バルンに帝国府と帝都府が有って、今回は帝国府に人間界の帝府の使節団が訪問。言葉にすると、なんかややこしいなぁ」

「そんなのボヤくとこじゃねょスペンス。我々『ターゲサン』の意思表明には絶好の状況だと言う事、それだけ分かりゃいいのさ」

「ブラントさん、他の連中はもう?」

「ああ。先行して、潜入から脱出迄のルートを確認してもらっている。あとは俺たちと資材を持ち込めばすぐ行動だ」

 ブラントはそう言いつつ、自分が凭れている木箱をコンコンと叩いた。

「次だぞ」

 スペンスが言うとブラントは腰の革鞄から書類数枚を取り出した。何やら許可証らしき書類で帝都府の承認印が押されているのがアイサの目にもチラリと見える。

 三十路顔のブラントが顎髭を撫でながら最後の確認をすると身長175cm程度の背を若干前かがみにしながらスペンスの後ろに近づき書類を渡す。

「よし次!」

 外から門兵らしき男の声がした。馬車は一車分前進し、再び停止。

「お疲れ様で~す」

 スペンスが下がり気味の目尻を更に垂れさせた愛想笑いを浮かべて門兵に書類を差し出した。

「……ミューヘン市の建築ギルドか?」

「へぇ。こちらのギルドから依頼がありましてね。ミューヘン特産の壁土と職人寄こせってね。作業内容の申請も一緒に入ってまさ」

「うむ、書類は問題無さそうだ……荷を改めるぞ」

 そう言うと門兵は部下二人を連れて後ろに回った。

「降りた方がいいかしら?」

 アイサが門兵に訊ねた。

「ああ、すまんが協力してくれ。昨日から帝国のお客さんが来ておられるんでな、細かく調べよ、とのお達しなんだ」

 言われるとアイサとブラントはそそくさと馬車を降りた。入れ替わりに部下二人が馬車に乗り込み奥から荷物を漁り始めた。

 奥の工具類に、仕事とは関係ない武具などの混在、隠蔽が無いかチェックし、次に部下は先程ブラントが凭れていた箱を開けた。途端に若干鼻を突く、例えれば樟脳(しょうのう)によく似た臭気が周りに広がった。

「う、独特の臭いだな。これがミューヘン自慢の虫殺しの壁土か」

 兵士の一人が鼻を押さえながら零した。

「それを壁の中に塗り込んでおくと蚊や羽虫が寄って来ねぇのさ。帝国内だけじゃ無く、外国からも引き合いが来るんだぜ?」

「こんな臭いなら俺も逃げ出したいね」

 どうやらこの兵士はこの手の臭いが苦手らしい。しかし兵士は剣を抜いて土に突き刺しながら何かが隠されてないか、しっかりと確認した。手抜き無し、任務に忠実な良い兵士である。

 部下だけでは無く、門兵も膝を附き、馬車の下側を入念に検査していた。二重底になっていないか、地上高と荷台上部との寸法差をチェックする。

「この袋は何か? 申請がされてないようだが?」

 部下の一人が70cm角くらいの袋を持ち上げた。薄くて肌触りの良さそうな生地が使われている。

「あたしの着換えよ。下着も入ってるけど……見たい?」

 些かからかい気味な口調で答えるアイサ。しかし兵士は、

「申し訳ないが改めさせて頂く」

と、躊躇(ちゅうちょ)なく袋を開けた。

「……お役目ご苦労様」

 アイサは、今度は皮肉めいて答えた。

「すまないね。来訪されている使節は帝府の監査・情報省の大臣・次官でな。万が一にも騒動があってはいかんもので」

 職務に忠実であっても威圧的では無く、あくまで協力を求めると言った態度の門兵。

「大神帝猊下、大魔王陛下に並ぶミカド様の直臣ですか。そりゃ警備の皆様もピリピリですね」

「四年前のアデス安寧計画により、我ら人間界も天界や魔界と同じく守護者を頂くことに

なったはいいが、それに不平不満を持つ輩も増えてしまったからなぁ」

「そりゃいきなり、この方が人間界の頂点、象徴となる尊い御方ですよ、皆々崇めなさいとか言われてもそりゃ混乱するわよ」

「まあ、分からんでもないが……だが帝府の方々、ことにミカド様、そして陛下をお守りする四天王は大変深い英知をお持ちで、それを以って人間界6大国を見守っていただいておる」

「でも結局は帝府に近しいエスエリアが美味い汁を一番に吸ってんでしょ? 依怙贔屓(えこひいき)は不満分子を増やす元だわ」

「またお前の帝府叩きが始まったな。兵隊さん悪く思わんでくれ、自分よりデカいものを批判したり叩いたりすりゃ自分も同じレベルなんだと背伸びしたがる年頃でな」

 ブラントがアイサの言葉に水を差した。門兵には気付かれなかったが、ブラントのアイサを見る目は彼女を諫める目付きであった。アイサはそれに気付き、

「わかってる、わかってる。いつも言われてるよね、悪い癖だって。ごめんね兵隊さん、生意気言って」

と取り繕った後、謝罪した。門兵はフッと笑い、2~3度頷いた。

「班長! 異常ありません、資材の量も道具の数も申請書通りです」

 検査を終了し、結果を報告しながら部下二人が馬車から降りて来た。

「そうか。手間をかけさせたな、入場を許可する」

 門兵は申請書に署名するとブラントに手渡した。

「ありがとうございます。では……」

 アイサとブラントが荷台へ乗り込むと、それを確認したスペンスは馬車を走らせ始めた。

 馬車は数十m走ったところで右折し、門の警衛隊の眼から離れた。


「アイサ……」

「わかってるってば! 悪かったわよ!」

 小言を言おうとしたブラントの言葉をアイサは遮った。

 肩を竦めるブラント。

「計画前で気が昂ってるか? 居眠りするくらいだから大丈夫かと思ってたが」

 ブラントが言うがアイサは返事もせず、ブスっとした顔でそっぽを向いた。

「大丈夫さブラント。アイサはもう一人前さ。氷魔法の使い手として今回もちゃんとやるって」

「その辺は俺も同意だ。だが、今回は今までの焼き討ちや殴り込みとは全く違う、新しい方法だからな。これが成功すればこれからの活動はこの手段が主流になる。その意味でも本計画に失敗は許されない」

「来訪している帝府の情報大臣。連中に帝府の先端技術供与先の差別や偏った優遇に抗議するための今回の作戦……標的の研究倉庫は彼らが目の当たりに出来る場所なのよね?」

「アマテラ辺りと違って、ここの警衛や役人には賄賂は有効だ。その辺の情報は信じていいと思うぜ」

 スペンスの返答に数回頷くアイサ。

「アマテラの役人は石頭だ。なんであそこまで頑なになれるか分からんが、同志たちの活動はかなり制限されているようだな。あまり行きたくない国だ」

「行ったことあるの、スペンスさん?」

「まだ若い……てかガキに近い年頃だったがな。商船の雑役で行っただけだよ。陸揚げの荷物が申告より多くてな、追加関税を請求されたんで船長が金貨一枚握らせたんだがすぐに叩き返されてさ。しっかり関税取られたよ。しかもその間中、顔の表情を一切変えねぇんだ。別に殴られたりとか拘束されたわけじゃねぇんだが逆に何だかその……背筋がゾッとしたよ」

「アマテラはアーゼナルの属国の中では皇国の屋台骨と言われる国よね? 帝府とのコネもあるんだっけ?」

「それだけに、もし俺たちの活動がアマテラで実を結べば全世界へのアピール度はうなぎ上りだ。だから今回の計画が成功すれば、それを基にアマテラを次の標的にするらしいぞ」

「失敗できないわね。気合い入れなきゃ!」

 そう言いながら自分の頬を両手でパチンと叩く。白い肌がほんのり赤らむ。

「ふ、心配は要らなかったようだな。期待してるぞアイサ」

 アイサはブラントに親指を立てて見せた。



 アイサらを乗せた馬車が集合場所の工房についたのは、陽が沈みかけている頃だった。

 先行していた仲間たちも手伝って、持って来た荷物を下ろして本命――ブラントが凭れていた虫殺しの壁土入りの箱を開けた。桶が用意され、黄土色の乾燥された壁土が次々に移された後に水と外壁用の土が加えられて練り合わせ始められる。これを一晩寝かせて馴染ませ、明日からの帝都宮殿敷地内にある穀物倉庫の壁の修繕に使われる。

「すでに今日、俺たちが現場の前処理やら養生やらやり始めているから、明日は大した検査は受けないだろう。虫殺し専門の職人が入る事も言ってあるし」

「しかし、いつもより警備は強化されているはず。油断は出来んな」

 先行していた仲間で本計画のリーダー格であるフォルドの説明にブラントがやんわりと諫めた。

「帝府の使節は明後日には帰国する。多少ヤバくても明日、必ず実行せねばならん」

「だな。ところで例のブツは届いているのか?」

「三日前に届いている。エスエリアの秘匿倉庫から流れて来た合成爆裂粉の添加剤だよ」

 そう言いながらフォルドと共に先行していたミハルと名乗る茶髪の20代中盤の女が机の上の袋を指差した。

「そいつと俺たちが持って来たこれを……」

 壁土を取り終わったスペンスが、その下に隠されていたどす黒い紫色の粉を掬い始めた。乾燥した壁土の底に詰め込まれていたので、荷を改めた兵士たちも剣で刺したくらいでは何の違和感もなかっただろう。用意された直径30㎝程度のタライに似た入れ物にさっさと移す。

「こいつを1対3で混ぜ合わせて火を付ければ、宮殿魔導戦士が放つ爆裂魔法以上の大爆発が起こるってぇ訳か」

「なんでも水不足の集落のために、川の上流で巨大な水がめを作るって、なんか信じ難ぇ案が出されたらしくてな。その時に山を崩すのに使うんだそうだ」

「表向きの言い訳でしょ?」

 フォルドの言葉にアイサが突っ込んだ。

「帝府やエスエリアはこんな秘密兵器を独占して、いざとなったらこの戦力を振りかざして他国を跪かせる気なんだろ。今の内に他国にもこういった技術を拡散させて力を付けさせないと、人間界は帝府・エスエリアの言いなりよ」

 と、アイサは続けた。吐き捨てる様に。

「このブツ……元々はいろんな魔石を粉末にしたものを混ぜただけだ。ただ、その配合比率は極秘中の極秘で更には魔石以外の素材も含まれているらしい。普段はこのように安定しているが、その配合を間違えると途端に着火してしまう。これを真似ようとした連中が起こした爆発事故は数知れない。さっき言った大規模工事での使用でのみ許可されるが流通も秘匿され現場でようやく揃うんだ」

「よく手に入ったわね?」

「ま、出処は俺らにも分からん。分かっているのは我々ターゲサンの活動を支援してくれるスポンサーからの手回しだと言う事だけだ。彼らもアイサが言ったように技術や力の不均衡は500年前の『魔素異変』以来、横並びで発展していた人間界のバランスを乱す原因になると言う考えだ」

「だが世界の大半はミカドを頂くことによって魔素が制御され、魔獣被害が激減していることに喜んでいる」

「その裏で帝府がやっているのがこれさ。4年前の安寧計画で暴走した魔獣どもの餌食になった犠牲者を踏み付けにしてね!」

「アイサ。また昂ってきたか?」

 門での検査時に続いて、ブラントが諫めようとした。

「アイサの言い分は十分わかるさ。アイサの両親はあの計画のツケを回されたわけだしね」

 ミハルの言に道中、馬車に揺られながら見た夢を思い出すアイサ。

「そりゃ安寧計画での、エスエリア王都の被害は大きかったろうさ。でも被害を受けたのはエスエリアだけじゃない、世界各国で魔獣暴走の被害は起こったんだ。それなのにエスエリアだけが……」

「ああ、2年前から顕著になって来た技術格差。品質のいいエスエリアの商品が各国でシェアを伸ばし、そのあおりを食って失業や廃業に追い込まれた臣民は多い。彼らの無念に答えるためにも、弱者として切られそうな臣民の声を連中に届けにゃならん。だからこそ今回は特に冷静さを保って事に当たらないとな」

「ん、大丈夫だってブラントさん。自分の仕事はちゃんとやってのけるわ」

「その意気だ、期待してるぞ。さて、その後の事だが……」

 再びフォルドが説明し始めた。

「首尾よく目的を達成できれば城内はハチの巣を突いたような大騒ぎになるだろう。その混乱に乗じて敷地内北側の神殿にある出国ゲートに向かい、一時ブラッカス公国へ向かう。偽造旅券と査証をこれから配るぞ。脱出時から自分が名乗る名前や職業など頭に入れておけ」

 フォルドは説明しながら偽造書類を皆に配り始めた。アイサも受け取り、書かれた偽名と出国理由その他に目を通す。

 差し出された旅券を見ると、脱出時はアイサの名はサイーダ・サクルで、ブラッカス通商組合の社員として帰国する、と言う設定らしい。

「書かれていることを今夜中に頭に叩き込んでおけ。自然にスラスラと話せるようにな」

「フォルドさん、終わったぜ」

 スペンスと共に二種類の爆裂粉を混ぜ合わせていたダクティがフォルドに報告。

「よし、樽の底に敷き詰めろ」

 金髪を短く刈り込んだ額の汗を拭い、ダクティは指示通りに樽底へ爆裂粉を静かに注ぎ込んだ。全量を敷き詰め、平らに(なら)すと今度は油紙と皮のシートを被せる。

 次に、練り合わされた壁土を流し込んで蓋をする。

「現場で作業が終わる寸前で底にキリで穴をあけて導火線を突っ込む。その後、目標の魔導研究所倉庫にこれを仕掛けて点火。結果を見定めて即座に脱出……こんなとこだったかしら?」

「でも、神殿には宮殿側からは入れないから北口周りになるよね」

 アイサとミハルが改めて脱出行程を確認。通常、神殿の宮殿側入り口は皇族や高級役人専用と言っていい。民間人は城下町側からの入場が普通である。

「遠回りになるが確実だ。爆発騒ぎでアワ食って逃げ出すフリすりゃ自然に見えるし、門の警衛も浮足立っているだろう」

「フォルドの言う通り。なんせ、今回の仕事は今までとは桁違いだ。これまでやってた放火や打ち壊し、略奪とかじゃなくデカい倉庫を丸ごとふっ飛ばしてまうんだからな」

「地元へ依怙贔屓して甘い汁吸ってる奴らに目にモノ見せてやるわ」

 ニヤリ、言い終わるとアイサは作戦の結果を想像しながら不敵な笑みを浮かべた。

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