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生きる勇気を与える為に

 俺が雨に打たれながらも、何とかブレイズの街に辿り着いた頃。

 咲夜も街から飛び出そうとしている所だった。


「影司……良かった、戻って来てくれて……」


 そう言って、いきなり抱き着いてくる咲夜。

 この嵐の中、ずっと外で俺の帰りを待ってくれていたのだろうか。


 俺も咲夜も体温は雨で冷え切っている筈なのに、俺自身の体温が少し上がったかの様な不思議な感覚。


「ごめんな、突然出て行ったりして」


 抱きしめながらも、俺の頭を優しく撫でる咲夜の手。

 戻って来て良かった。

 俺が欲しかった温もりってこう言う事だったのかもしれないって、本気で思う事が出来た。

 もうこれだけで、勇者として戦うには充分過ぎる程の理由が出来たんだ。


「ううん、謝るのはこっちだよ」


 咲夜が謝る必要なんて、最初から何処にも無いじゃないか。

 でも、そう言った所で納得する様な子でも無いんだろうな。


「私、誓うよ。影司だけに勇者の責任を背負わせない。影司がその重さに押し潰されそうになったら、私がちゃんと支えるから」


「どうして、そこまで……」


 俺はまだ、咲夜の事を何も知らない。

 咲夜がどんな思いでそう言ったのかも分からない。


 だって、俺達はまだ出会ったばかりなのに。


「私にとってはね、あなたの温もりを感じる事が出来たから、この先も生きていたいって思えたんだよ」


 俺にとってはほんの些細な事だったけど、きっと咲夜にとっては大事な事なんだよな。




 炎の国ブレイズ。

 あれ程酷かった雷雨は、まるで勇者の旅立ちを祝福するかの様に晴れ上がり、優しい太陽の光が降り注いでいる。


 今日から俺と咲夜は、ブレイズ国王カーネリアンによって正式に勇者として認められ、魔王討伐の為に世界を旅する事になった。


「俺達、まだこの世界に来て二日目なのにさ、いきなり魔王倒して来いって、人使いが荒いにも程があるよな?」


 多分、咲夜が居なかったらこんな冗談を言う余裕だって無かっただろうな。


「ホントにね。でも勇者って案外そう言う物なのかも」


 咲夜は咲夜でこの国の勇者に対する扱いに多少呆れつつも、この状況を受け入れて旅を楽しもうとしている様にも見える。


 俺も最初は国を挙げての祝福と聞いて、その重みに潰されそうになってはいたが、考え過ぎだったのだろうか。


「王様が自ら宣言する事によって、俺達の身元を保証してくれたって事なのかもな」


 確かに街はお祭り騒ぎだった。

 新たな勇者の誕生、この世界の平和の象徴。


 祝福されはしても、強制的にこの街から追い出されたりはしなかった。

 むしろその逆。


 カーネリアンは、この国、この街こそが俺達の故郷であると。

 疲れたら何時でも戻っておいでと。

 そう言ってくれたんだ。


「この世界に、私達の帰る場所を用意してくれた王様に感謝しなきゃ、だね」


 この世界には、確かに争いが多いかもしれない。

 人間と精霊、同じ命であっても違う種族なのだから、争いがあっても当然なのかもしれない。


 でも、手を差し伸べる人達だって確かに存在するんだ。


 俺は勇者として世界を巡る旅に出る。

 きっと、その先では助けを求める人だって居るだろう。


 俺だって出来れば争い事は避けたい所だけど、それでも。


 俺達は勇者なんだ。

 手の届く範囲くらいなら、幾らでも手を差し伸べる。

 それがきっと、生きる勇気を与える事に繋がるから。


 王様にとっての勇者って、こう言う事だったのかもな。

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