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想いを受け継ぐ盾

 要塞都市クレスト内部。


 クレイの案内で、この都市の領主の住む屋敷に行く事になった。


 扉の呼び鈴を鳴らす。


 出てきたのは執事服の男性だった。

 何処か威圧感を感じさせる顔だ。


「……クレイ。帰って来たか」


「あはは……ただいま、バルド」


 二人は知り合いか。

 よくよく考えると、理由も無くメイド服なんて着る必要も無いか。


「紹介するね。あたしの契約者、バルド。あたし達はグランシルト家の使用人なんだ」


 俺と咲夜、二人の自己紹介も済ませ、屋敷の中に入る。


「えっと、私達この都市の領主様に会いに来たんですけど――」


「そうか、シュバルツに、か」


 沈んだ表情、何か事情があるのだろうか。


「案内しよう。シュバルツも、お前が帰って来ていると知ったら喜ぶだろう」


 そう言ってクレイの手を引き、俺達の事も案内してくれる様だ。


 長い廊下。

 暫く進んだ場所にある扉の前で、歩みを止めた。


 ノックもせずに扉をゆっくりと開けるバルド。


 そこには、暗い部屋でただ一人、ベッドに横たわるやせ細った男性の姿があった。


「死んでいる……のか?」


「生きている……一応な。ずっとこの状態ではあるが」


 ずっとこの状態。

 病気なのだろうか。


(心を完全に失ってしまっている。これではもう目覚める事も無いだろう)


 ノクターンには分かるんだな。

 この男性が、目覚めない原因を。


 心を完全に失ってしまう程の、悲惨な過去があった。


 これが理由か。

 クレイが、ここに来るのを少し躊躇っていた理由は。


「クレイ。お前は勇者と共に、旅がしたいのだろう?」


「うん……でも、やっぱりここに残るよ。シュバルツ様がこんな状態なのに、あたしだけ旅をするなんて――」


 仕えていた主の、この様な姿を見てしまったんだ。

 申し訳なさもあるんだと思う。


 ベッドの側に置いてあった巨大な盾を、クレイに手渡すバルド。


「これを持って行ってやれ。シュバルツも、あの子も。クレイをここに縛り付けるのは望んでいないだろうしな」


 バルドから手渡された巨大な盾。

 それを手に持って、何かを感じているのか、盾を抱きしめて泣いている。


「クレイを一人になんてさせません。俺達がついていますから」


「クレイを頼むぞ、勇者よ。あの子の理解者となってくれ」


 屋敷を後にした俺達。


 クレイは、どこか落ち込んだ表情のまま歩いている。


「その盾、大事な物なんだな。クレイにとっても、バルドさんやシュバルツさんからも、みんなから愛されているんだよ」


「うん……この盾、フォースイーターは、あたしの大切な友達が使っていた物だから」


 きっと、シュバルツが目覚めないのも、クレイがここまで落ち込んでいるのも、その盾の元の所有者が関わっているのだろう。


「私達と一緒に、世界を見て回ろうよ。何時か、シュバルツさんが目覚めた時に話してあげたら喜ぶよきっと」


「そう……だよね。あの子も、ずっとこの世界を見て回りたいって言ってたっけ――」


 クレイの大切な友達。

 恐らく、既に亡くなっているのだろう。


 あの屋敷には、絵画が飾られていた。


 シュバルツともう一人、クレイではない幼い女の子の絵だ。


 だが、その幼い女の子は、あの屋敷の中では見かけなかった。


 大切な友達を亡くし、とてもショックだっただろうな。


 俺達が側に居る事で、少しでも、クレイの心が癒される事を、俺は願う。

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