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ダブり集

夢で逢えたら

作者: 神村 律子

 最近初恋の人の夢ばかり見る。


 付き合っていたのはウン十年前。


 先に結婚した私は、夫の仕事の関係で遠くに引っ越した。


 もうずっと会っていない。


 彼は同窓会にも出席しないから。


 お互い会えばがっかりするほど容姿も変わってしまったはずだけど。


 会わずにすむこともいいのかも。


 でも夢に出て来る彼はその当時のままで、私もその当時の姿だ。


 いつもの店で、いつものクリームソーダを1つだけ頼んで、ストロー2つで飲む。


 体温がわかるくらい彼の顔が近い。


 私は思わず赤面した。


 彼はそんな私を見て優しく微笑む。


 今までで感じた事のないほどの幸せな気持ち。


 充実した心。


 彼が何か語りかけているが、聞こえない。


 私は「何?」と聞き返そうとするが、声が出ない。


 彼は照れ臭そうに笑い、席を立つ。


 私も慌てて立つ。


 そこで目が覚める。


 そんな夢が一週間ほど続いた。



 

 数日経った夜、私はまた彼の夢を見た。


 ずっと見続けていた夢の続きだった。


 席を立ち、店を出た。


 そこで彼は私を見て、


「さよなら」


と微笑んで言った。


「え?」


 私は意味がわからず、歩き出す彼を追いかけた。


 しかし、追いつけなかった。


 そこで目が覚めた。


 何故か私は泣いていた。




 翌々日、一通の黒い縁取りの葉書が届いた。


 彼のご両親からだった。


 彼が亡くなったという知らせ。




 ああ、あれは彼が最後のお別れをしに来たのだと感じ、泣いた。




 葬儀の時、驚いた。


 彼は独身のままだった。


 ご両親に彼が大切にしていたものを見せてもらった。


 それは私が出した葉書。


 会えなかったけど、ずっと新年の挨拶と、暑中見舞い、残暑見舞いと出していた。


 彼はそれを全部年代順にファイルし、保管していた。


 一度も返事をもらえなかったので、何度もやめようと思った。


 迷惑なのかな、とも思った。


 でも、そうじゃなかった。


 それがわかって嬉しかった。




 私の初恋はこうして終わった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 切ないお話ですね。 初恋の女性を想い続ける男性。 本当に好きな女性ができたら、僕もそんな風に一途に想い続けていられるかな。 素敵なお話をありがとうございました。
2010/12/22 20:58 退会済み
管理
[一言] いい話だなあ…… ボクも、こーゆーストーリーが思いつければいいのに 神村律子さんの作品は、いくつか読ませていただきましたが、どれもドラマチックな内容で面白かった。 ボクの目から見ると、物語を…
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