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閑話 選定者は先代の・・・

拝啓 六郷玲香様


桜の季節となりました、いかがお過ごしでしょうか

玲香様が卒業後に立ち上げた会社は今まさにご盛況のことと聞き及んでおりますが

姫ヶ藤学園も今年度の新入生を迎え、活気に溢れております


この度お手紙致しましたのは、今年度の『Monumental Princess』選定が行われる旨をお伝えするため

そして先代の『Monumental Princess』であられる玲香様に、その選定役を担当して戴けますよう現在ご用意しております


同封いたしました候補者のリストをご確認の上、一度学園までご足労いただけますでしょうか


伝統ある姫ヶ藤学園の姫が、再び次代に受け継がれるその瞬間が見られる事を今から心待ちにしております  敬具



姫ヶ藤学園理事会






「ふぅん・・・もうあれから何年経ったかしら?」


懐かしさを覚えながら玲香はその手紙を読み終えた。

姫ヶ藤は彼女の母校だ、今もこうして目を閉じれば学生時代の思い出が脳裏をよぎる。

彼女の卒業後『Monumental Princess』の選定は大いに滞り、毎年届くのは『今年度の該当者なし』という味気のないものばかり。

それが今年になってようやく、まともな内容の文面が届いたのだ。


「6・・・今年で7年目になる所ですね、ようやく相応の人物が現れたのか・・・それとも・・・」

「ついに理事会が妥協を覚えたか・・・ね、毎年肩透かしされる身にもなってほしいわ」


傍らに控えた秘書が答えた、彼女も姫ヶ藤の卒業生で、選定を共に戦った頼もしい仲間でもある。


続いて玲香は同封された書類に目を通す・・・候補者と思われる顔写真付きの用紙が数枚。

写真に写った金色の髪が、嫌が応にもその目を惹いた。


「ずいぶん派手な子・・・って、二階堂のご令嬢じゃない・・・選定も何もこの子の他に候補がいるの?」


手に持った資料の枚数に嫌な予感を覚える。

二階堂綾乃グレースはまごう事なき名家の中の名家、『姫』に相応しいと理事会が判断するのは当然だ。

だがしかし、その彼女と競り合うような人物がいるとは思い難く・・・故にまず思い浮かぶのは、その家柄の良さを台無しにするほど本人に問題がある可能性。


もしも綾乃がとんでもない不良娘だとしたら・・・それなりの人物であれば競り合えてしまうだろう。

なかなか候補が現れない事から理事会が妥協した、という可能性も考えればありえない事ではない。


いやいや、いくら理事会でもそこまでの妥協をするわけが・・・

嫌な予感を振り払い、玲香は資料をめくる・・・現れた候補者の名前は一年葵。


珍しい苗字だが、その家名に覚えはない。


特待生として学費を免除されているらしく、成績は極めて優秀。

母親の名前の記載がなく、特殊な家庭事情を抱えているであろうことも読みとれた。


「なるほど、天才と呼んでも良さそうね・・・方や家柄、方や才能・・・まぁその辺はいつものように生徒達の投票で・・・あら?」


資料がまだ残っている・・・枚数的に候補者がもう1人いるようだ。

今年の姫ヶ藤は余程の人材に恵まれたらしい。

まさかもう一人いるとは・・・さすがにこの2人を見た後では玲香も侮ったりしない。

期待と緊張に僅かに興奮する自分を覚えながら、玲香は資料をめくり・・・


「ふふ・・・ふふふ・・・」

「れ、玲香様?」


パラパラと音を立てて資料が玲香の足元に落ちていく。

肩を震わせる玲香の尋常ではない様子に、秘書が息を飲んだ。


「こうしてはいられないわ、静香、すぐに支度なさい!」

「は、はい!」


玲香に名前で呼ばれた秘書は、まるで弾丸のように勢いよく部屋を飛び出した。

玲香と付き合いの長い彼女には、すぐに察する事が出来たのだ。


(玲香様があんなに楽しそうな顔をしたのは久しぶり・・・それこそ7年前の・・・)


あの資料の何が玲香を突き動かしたのかは彼女の察する所ではないが・・・何か面白いことが始まるに違いない。

そんな確信めいたものを感じながら、静香は地下に停めてあった社用車に乗り込むとエンジンをかけた。



1人部屋に残された玲香は、思い出したように足元の資料を拾い上げた。

二階堂綾乃グレース、一年葵・・・そして3人目の候補者の資料には、2人にはない注意書きが付いていた。


『※彼女を候補者として加えるかについて理事会は判断を保留、玲香様にその判断を委ねたい』


資料には年度末試験において驚異的な成績を記録、と書いてあった。

成績だけで候補者にするような理事会ではない事は玲香もよく知っている。

判断を保留と言うからには、彼女は何かを持っている人物であり、理事会はその価値を計りかねている・・・玲香はそう判断した。


だが玲香は確信していた・・・彼女は候補者足りえると。

なぜならば、玲香はその名前を知っていたのだ。


「三本木右子・・・貴女が何者なのか・・・この目で見極めさせてもらうわ」


それはつい先日・・・玲香を散々に苦しめた謎解きゲームにおいて、初挑戦で950ポイントという最高得点を叩き出したという女子高生の名前だ。

まさか姫ヶ藤学園の生徒だったとは・・・それも『Monumental Princess』の候補者に名を連ねるとは。



先代『Monumental Princess』

そして株式会社『マルロクエージェンシー』社長ろくごう 六郷玲香れいか


次の『Monumental Princess』を決める選定者として、姫ヶ藤学園に降り立ったのだった。


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