表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/116

第64話「私言ったよね?」

世の中は理不尽である。


生まれてすぐに、あるいは生まれる前に死んでいく子供達もいれば、生まれながらに全てを手に入れたかのような人物もいる。

高度に情報化された社会で格差は可視化され、個人の努力でどうにかなる範囲のいかに狭い事かを思い知らせてくれる。

まぁこの世界には格差をぶち抜くチート庶民の葵ちゃんがいるけれど・・・極めて現実味の薄い、かなり出鱈目な存在だ。


世の中は理不尽である。


昨夜のニュース番組では数年前の事件の報道が流れていた。

強盗殺人事件で、犯人がまだ捕まっていないらしい・・・この国も物騒になったものだ。

犯人は外国人という説が濃厚で、既に海外に逃亡しているのではないか?とコメンテーターが口にしていた。

今頃は捜査の及ばない地域で悠々自適な暮らしをしているのだろうか。


世の中は理不尽である。


・・・返ってきた学年末試験の答案用紙を前に、私は頭を抱えていた。


別に赤点というわけじゃない・・・年末の勉強会の後も、私達は何度か勉強会を行っている。

その甲斐もあって、五味原さん達は誰一人欠ける事無く合格を決めることが出来た。

特に五味原さんは次席を勝ち取る程の成果を見せてくれた・・・それは本当に喜ばしい限り。

その勉強を見ていた私も、しっかりと学力が上がった実感はあり・・・それなりに結果は出るだろうとは思ってたよ。


でも・・・



「・・・姉さんが・・・ついに本気を・・・」



掲示された成績上位者のランキングを前に、左子が呟いた。

流也さま、綾乃様、葵ちゃんの名前が並ぶ見慣れたランキング。

よりによってその一番上に、私の名前が・・・まったく不自然極まりない。


「すごいわ、右子・・・勉強がんばったものね」

「あ、あはは・・・や、やりました」


綾乃様もまるで我が事のように喜んでくれている。

もう言えるわけがない・・・また転がした鉛筆が正解を引き当てただなんて・・・

純巣な実力だけなら1位を勝ち取れたであろう流也さまには申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「どうした?何を気にしている?」

「流也さま・・・こ、これはですね・・・」

「ふん・・・俺も悔しくないわけではないが、結果が全てだ・・・勝者は胸を張れ」

「本当に素晴らしいですわ、私にも今度お勉強を見てくださいませ」

「うぅ・・・成美さんまで・・・」


もうこの鉛筆は封印した方が良さそうだ。

でも空欄で提出するのも気持ち悪いんだよね・・・何か代わりの方法考えておくか。

あくまでも綾乃様に勝ってもらわないといけないからね、私が1位とっても何にもならないわけで。



ともあれテストは終わり、明日からは春休みが始まる。

長くないとはいえ貴重な連休だ、ここで何をすべきか・・・

やれる事はたくさん思いつくけど・・・まず紅茶研に動きがあった。


「来年度に向けて、新しい謎解きゲームを作ろうと思ってるんだけど、手伝ってもらえないかな」

「謎解きゲーム・・・ですか」


そういえば入部テストが謎解きゲームだったね。

新入生向けに新しいものを用意しようという話らしい。


「あれ・・・礼司さまは部員を増やすつもりはなかったんじゃ・・・」

「もう両親に隠れる必要もなくなったからね・・・君達も教える側を経験した方が良いと思うし」


なるほど・・・両親の問題が解決した事で新入部員を入れる余裕が出来たって事か。

ゲームではもう少し後の話になるから、部員を増やす事にはならなかったわけだ。


「礼司さまにはクリスマスの時に協力して戴きましたし、今度は私が協力する番ですね」

「もちろん私達も手伝います、今度はのけ者にしないでくださいね」

「あー!それを言うなら私もだよ」


綾乃様が手伝うと言うのなら私達も異論はない。

葵ちゃんも加わり満場一致、春休みは紅茶研の活動で決まりのようだ。

とはいえ、せっかくの春休みだから・・・


「礼司さま、ちょっと提案があるんですけど・・・良いですか?」

「うん、意見があれば何でも言ってほしい」


ふっふっふ・・・何でもって言ったね?

じゃあ遠慮なく・・・


「私達こういうのの経験が少ないので・・・皆で一度、『謎解きタウン』へ遊びに行きませんか?」

「・・・なるほど」



『謎解きタウン』は企業が運営するアミューズメント施設だ。


建物1つが丸ごと謎解きゲーム専用に作られており、定期的に切り替わる数種類の謎解きゲームを楽しむことが出来る。

人気アニメやゲーム作品とのコラボ謎解きも開催されていて、前世の私も興味があったものの・・・チーム制なので、ぼっちだから参加することが出来なかったのだ。

ちょうど今は『はにーろーるコラボ』が開催中、ふわふわ妖精はにーろーるちゃんとゆかいな仲間達は女の子の間で人気が高い。



「行きたい行きたい!今はにーろーるちゃんのイベントがやってるよね」


葵ちゃんが食いついた、なにげに葵ちゃんもはにーろーる好きだったのか。


「・・・はにーろーるちゃんは・・・可愛くて・・・おいしい・・・最強のキャラ」


左子もはにーろーるちゃん好きなのは知ってるよ、一時期はにーろーるパンにハマってたよね。


「しょこらろーるちゃんもいるのかしら・・・」


綾乃様はしょこらろーるちゃん派かな。

しょこらろーるちゃんは、はにーろーるちゃんのライバルキャラだ。

口が悪いけど、素直になれないツンデレな性格で、負けず劣らずの人気を誇る。


「きっと参考になると思います、姫ヶ藤の春休みは他より早いから、明日は空いているはずですし・・・」

「そうだね・・・皆は明日で大丈夫かな?」


もちろん全員問題なかった。


かくして私達は都内にある『謎解きタウン』に遊びに行く事になったのである。



「いらっしゃいませ」


私達を出迎えたのは、清潔感のあるホテルのような受付だった。

奥には白いテーブルとソファーのセットがいくつか並んでいるくらいで、他にはパンフレットの棚があるくらい。

思ったよりシンプルと言うか・・・名前の割には結構地味に感じる。


受付のテーブルの隅の方にちょこんと、はにーろーるちゃんのぬいぐるみが置いてあった。

コラボ謎解きが開催中なのがわかるけど・・・イマイチ扱いが小さいような・・・気付かない人は気付かないのでは?

ちょっと不安になりつつ、言い出しっぺの私が代表して受付を済ませる事にした。


「はにーろーるコラボ謎解きを5名でお願いします」

「はい『はにーろーるとワタア迷宮の謎』ですね、5名様1チームでよろしいですか?」

「いえ、2名と3名の2チームでお願い出来ますか?」

「はい2チームですね、それではこちらのチーム証に記入して3階へお進みください」


水色2枚ピンク3枚のチーム証を手に戻った私は、水色の方を礼司さまと綾乃様に・・・残りを左子と葵ちゃんに割り振る。

そう・・・このチーム分けこそが私の狙っていた作戦だ。

チート庶民を私達姉妹で抑えて、実質綾乃様と礼司さまのデート状態を作り出す・・・という。


「え・・・右子?」


チーム証の色を見て綾乃様が怪訝そうな顔をするけれど、ちゃんと表向きの理由も用意してあるよ。


「お2人はクリスマスで主催をやっているので、経験者チームという事で分けさせていただきました」

「そんな・・・」


すごく残念そうな顔をした綾乃様にちょっと心が痛む。

でもここで葵ちゃんに差をつけておかないといけないからね・・・心を鬼にせねば。


「ああ、クリスマスでは2人とは勝負出来なかったもんね、初心者チームだからって負けないよ!」


私の思惑を知らずに葵ちゃんはすっかり乗り気だ。

ここは話を合わせよう。


「と言うわけで、綾乃様、今日は正々堂々謎解きで勝負です!」


ビシッと綾乃様を指さして宣戦布告。


「・・・」


綾乃様は黙り込んでしまった・・・ひょっとして怒らせちゃったかな?


「あ、綾乃様・・・?」

「・・・ふふっ」


あ、笑った。

綾乃様は不敵な笑みを浮かべると、チーム証をぎゅっと握りしめた。


「そうね、その勝負受けて立つわ、勝ちましょう礼司さま」

「う、うん・・・」


綾乃様もやる気になってくれたことで、私達は2チームに分かれてチーム証に記入。

と言っても書くことは少なく、自分の名前と年齢・・・そしてチーム名か・・・


「チーム名だけど、どうしよっか?」

「・・・姉さんが決めて」

「え・・・」


チーム名とか急に言われて思いつくものでもない。

思い浮かんでくるのはそれこそチーム分けのコンセプトになった・・・


「それだと本当に『初心者チーム』になっちゃうけど・・・いいの?」

「・・・ん」

「まぁ・・・良いんじゃないかな、私は気にしないよ」


こんな名前で満場一致になるなんて・・・まぁいいか。

綾乃様と礼司さまの方は・・・『ダージリン』・・・なるほど紅茶から取ったのか。

チーム名が決まった所でエレベーターで3階へ。


扉が開くとそこは・・・


「まぁ・・・かわいい」


と、綾乃様が両手で顔を覆いながら可愛らしい声を出した。

うん、確かにかわいい。


シンプルな1階とうって変わって3階はパステルカラーの不思議空間だった。

ブルーとピンクで塗り分けられた壁はエリアを区切っているのかな。

白い雲のようなものが高い天井から吊り下げられて、あちこちに浮かんでいる。


そしてエレベーターホールの中央には等身大?のはにーろーるちゃんとしょこらろーるちゃん。

真っ先に人気キャラが出迎えてくれるという心憎い演出だ。


「さ、触っても良いのかしら・・・」

「ど、どうなんだろう・・・柵で囲ってたりはないし・・・」

「どうぞー」


はにーろーるちゃんの前でおどおどしているとスタッフの人が察してくれたのか、どうぞの声が。

じゃあ遠慮なく・・・おお、もふもふだ、そしてぬいぐるみのような見た目の割に弾力がある。


「さすがはにーろーるちゃんだね、良い手触り・・・」

「ん・・・もふもふ」

「しょこらろーるちゃん・・・でもこうして近くで見ると意外と大きいわね」


正式な大きさなのかはわからないけど、ほぼ私達と変わらない身長だ。

確かにもっとこう・・・抱えられるくらいの大きさのイメージだったなぁ。


「撮影も出来ますよ、記念に是非」


よく見たら背後にはタイトルロゴの文字がぶら下がっていた。

ここは撮影ポイントにもなっているらしい。


「じゃあ礼司さま、お願い出来ますか?」

「上手く撮れると良いんだけど・・・」


というわけで、私達は順番にろーるちゃんズに挟まれる形で撮っていく。

最後にスタッフさんにカメラを頼んで全員集合・・・


「あれ・・・礼司さま?」

「さすがに僕はちょっと・・・」

「あー!礼司さま恥ずかしがってるー!」

「ダメですよ、全員で撮るんですから・・・綾乃様、捕まえててください」

「え・・・右子?!」


無理矢理礼司さまを引っ張て来て綾乃様に押し付ける。

礼司さまも観念したのか抵抗らしい抵抗はなかった。

ちゃんとはにーろーるちゃん達が映るように私と左子はしゃがんで準備OK


「はい、せーの、はーにーいー」


はにーろーるちゃん定番の掛け声に合わせてピピっとカメラ音が鳴り、無事に集合写真が撮れた。

エレベーターホールを出ると、いよいよ謎解きゲームの開始だ。


最初の部屋に入ると、スタッフさんから指揮棒のような棒が配られた。

棒の持ち手部分にはボタンが1つ付いており、何かのギミックがあるようだ。


「皆さんにはこの魔法の杖を使って迷宮を攻略して戴きます、これから使い方の説明動画が流れますので、よく見て覚えてくださいね」


この棒は魔法の杖って設定らしい・・・なんか昔にそういう映画があった気がする。

そしてスタッフさんの背後の壁にはモニターが付いていた。

私達は切り株のような椅子に座り、使い方の動画を見る事になった。


『皆、こんにちわ、私はにーろーる、実は道に迷ってしまったの』

『よりによってワタア迷宮に入っちゃうなんて・・・はにーは本当に間抜けなんだから』


おお、はにーろーるちゃんとしょこらろーるちゃんだ。

動画はただの説明ではなく、ストーリー仕立てになっているようで・・・


生きて出られた者がいないというワタア迷宮に迷い込んでしまったはにーろーるちゃん達。

私達は魔法の杖を使ってこの迷宮に仕掛けられた謎を解き、はにーろーるちゃん達と一緒に脱出しようという内容だ。

魔法の杖は迷宮の仕掛けに連動していて、場面に応じて物を動かしたり、攻撃を放ったりが出来るらしい・・・攻撃?


「制限時間は1時間、攻略した謎に応じてポイントが加算されるようになっています、高得点を狙ってがんばってください」


制限時間が切られ、ここからは自由行動だ。

綿飴のような白い木々によって作られた迷路を進んでいくと、これ見よがしに謎が書かれたボードや動画が流れそうなモニター、アトラクション的な仕掛けが各地に点在しているのが見えてきた。

これらをより多く攻略する事で高得点を得られるのだろう。


迷宮の中央には休憩所のような空間があった。

いくつかあるテーブルにはディスプレイが設置されていて、チーム証を置くと現在の進捗状況やヒントが表示されるようになっている。

次に何をすれば良いかわからなくなった時に教えてくれる新設設計だ。


「ここを拠点に手分けをして情報収集するのが良さそうだね、時間を区切ってここに集合する感じで・・・」


さすが葵ちゃん、さっそく効率的な攻略プランを出してきた。

たしかにこの場所は集合場所として都合が良い・・・チーム制の謎解きゲームだし、おそらくそういう風に出来ているんだろう。

私達は手分けをして迷宮を巡り、解けそうな謎ならその場で解いて、難しそうなら情報を持ち帰るという方針で動くことした。


・・・んだけど・・・


『もうっ、しっかりしなさいよ!』


デデデーン


画面の中からしょこらろーるちゃんの叱責が飛ぶ。


たまたまモニターを見かけたので近付いてみると、突然ミニゲームが始まったのだ。

蜂の群れに襲われたはにーろーるちゃん達。

魔法の杖で攻撃して蜂を撃退するという内容なんだけど・・・これがなかなか難しい。

あとちょっとで攻略出来そうなんだけど・・・最後に出てくる女王蜂みたいなのがなかなか倒せなくて・・・


何度かリトライしてるうちに、気付いたら集合時間が迫って来ていた。

くぅ・・・悔しいけど2人を待たせるわけもいかない。

諦めて集合場所に戻ると・・・葵ちゃんに叱られてしまった。


「私言ったよね?難しそうなら情報だけ持ち帰るって・・・」

「・・・ごめんなさい」


そのミニゲームは何人かで協力して倒すものだったらしく・・・

3人で行ったら拍子抜けするほどあっさりと倒せてしまった。

そして画面の中で蜂を撃退したはにーろーるちゃん達は・・・


『わーい蜂蜜だ、甘くておいしいね』

『はにー、美味しいからって全部食べちゃダメだからね!』


美味しそうに蜂蜜を舐めるはにーろーるちゃん達の映像と共に、説明文が表示された。


『蜂蜜を手に入れた、端末にチーム証をセットしてください』


蜂蜜・・・おそらくどこかで必要になるのだろう。

攻略を進めていくとだんだんわかってくる。

迷宮には、この蜂蜜のようなアイテムを得られる場所と、それらを使って攻略する場所があり・・・

その組み合わせが問題文の形でボードに書かれているのだ。


しかし、迷宮の仕組みがわかってくると同時に、制限時間もまた迫ってきており・・・


「あれ・・・ひょっとして間に合わないんじゃ・・・」


攻略していくにつれて特定の仕掛けを攻略すると手に入る3種類のオーブが迷宮脱出に必要なアイテムだという事がわかった。

制限時間内にそれらを揃えないといけないんだけど・・・最後の1個が見つからない。

前提のアイテムを揃えて、使う場所に持っていく流れは間違いないんだけど、なかなかオーブが得られる場所に当たらない。

オーブのない場所は代わりにポイントが多く入るらしく、得点はすごく稼げている感じがするんだけど。



そして時間は無情に流れていき・・・



『制限時間が終了しました、出口に向かってください』


時間が切れると各アトラクションがそれを知らせるモードに切り替わるらしい。

こうなってはもう出来ることはなく、素直に出口に向かうしかない。


「あーあ・・・惜しい所まで行けてたと思うんだけどなー」

「うぅ・・・最初の私のアレが響いちゃったね・・・ごめん」

「アレは気にしないで良いよ、たぶん私でも同じ事したと思うし・・・」

「ん・・・姉さんは悪くない」


2人ともフォローしてくれるけどやっぱり責任感じちゃうな・・・

出口付近には他の参加者達が集まってきており、それらの表情は悲喜こもごも・・・攻略出来たチームと出来なかったチームの差なんだろうね、わかりやすい。

その中から綾乃様と礼司さまの姿を見つけて合流した。


「綾乃様、どうでした?」

「うーん・・・どうかしら・・・」

「謎解きは充分楽しませて貰ったけど・・・」


綾乃様の様子を見る限りは結果は芳しくない様子。

礼司さまも自信なさそうだ。


出口には端末とモニターが設置されていて、成績の表示と、それに応じたエンディング動画が流れるようになっているようだ。

やがて私達の順番がやって来て・・・


「チームの代表者の方はチーム証を持って端末に進んでください」

「は、はい・・・」


スタッフに案内されるままに端末にチーム証をセットする。

目の前の大きなモニターに攻略してきたポイントが表示されていき・・・

最後に合計得点が・・・950ポイント・・・その上に『攻略失敗』の文字が降って来てポイントが半分に・・・


結果は475ポイント・・・C評価。


そして動画が流れ始める・・・


脱出が出来ずに、とうとう泣き出すはにーろーるちゃんと途方に暮れるしょこらろーるちゃん。

そこにお友達のめろんろーるくん、まろんろーるくんの兄弟が助けに来て、なんとか無事に帰ることが出来ました、めでたしめでたし。


うぅ・・・ごめんよ・・・はにーろーるちゃん。


2人の方へ戻ろうと振り返ると、隣の端末に綾乃様が。

どんな結果だったのかと覗いてみると・・・


『わーい、脱出成功!皆のおかげだよ!』

『わ、私1人でも脱出できたし!感謝なんてしてないんだからね!』


攻略成功してる・・・自身なさげだったのに・・・


「すごい綾乃様、ちゃんと攻略出来てるじゃないですか!」

「そ、そうなのかしら・・・」


この期に及んでまだ自信なさげな綾乃様、礼司さまの方も似たような感じで・・・


「でも僕達は半分くらいしか攻略出来なかったから・・・そんなに点数は稼げていないんだよ」

「え・・・」


そう言って礼司さまが見せてくれた合計得点は・・・500ポイント、B評価。

とにかく手分けして迷宮を巡って情報を集めた私達とは逆に、2人は問題文から謎を解く事に集中し、3つのオーブを集める所から始めたらしい。

その結果攻略こそ出来たものの・・・追加のポイントを集める事が出来ず、ギリギリでの成功になったのだ。


「右子達は・・・あら・・・」

「はい・・・綾乃様達の勝ちです」

「たった25ポイント差かぁ・・・悔しい」


B評価の綾乃様達には、小さなはにーろーるマスコットが。

C評価の私達には、はにーろーるステッカーが参加賞として与えられた。


「これは二階堂さんにあげるよ」

「良いんですか?」

「僕が持ってても仕方ないしね」


そう言って礼司さまは貰ったマスコットを綾乃様に手渡した。

うんうん、好感度はしっかり稼げたみたいだね。

って・・・あれ・・・綾乃様?


「じゃあこれは、右子と左子にあげるわ」

「え・・・綾乃様?」

「・・・いいの?」

「ええ、せっかく同じものが2つあるんだもの、2人にちょうどいいわ」

「・・・えへへ」


勝負には負けたのに・・・貰っちゃって良いのかなぁ。

でも綾乃様がくれた物だからね、大切にしなきゃ。


「あー、2人ばっかりずるい!」


後ろでチート庶民がぼやいてるけど、ここは聞こえないフリで。

スタッフの人に使用済みのチーム証を返却して出口を出ると、すぐそこに物販のブースとカフェがあるのに気付いた。


「あ、コラボカフェですよ綾乃様!はにーろーるパン食べていきましょう」

「・・・私も食べたい・・・じゅるり」

「そうね、皆で一息つきましょう」

「コラボメニューも良いけれど、忘れないうちにアイディア出しも頼むよ・・・今日はその為に来たんだから」

「「はーい」」


はにーろーるパンを食べながら、新入生向けの謎解きをについて話し合う。

どんな新入部員が謎を解いて来るだろうか・・・その子も一緒にこういう事が出来るような子だと良いな。

ちなみに綾乃様には、物販のブースでしょこらろーるちゃんのマスコットを見つけてあげました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ