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閑話 いつも貴女の左側に

・・・最近、姉さんの様子がおかしい。



私達の生徒会は上手くいっている・・・と思う。

最初の頃は快く思わない生徒もいた、対立候補の辞退による当選に何か裏があるのではないか?と勘繰られたりもした。

けれど、いつも生徒達のために一生懸命働く綾乃様の姿は誰の目にも明らかで、反発の声は次第に薄れていった。


綾乃様は本当によくやっている・・・生徒会の仕事の多くを自分で担当し、私達の負担が少ないようにしている。

激務なのは間違いないのに、人前でその疲れを見せる事がない・・・弱音を吐くのは私と姉さんの前でだけだ。


そして、その隣にはいつも姉さんがいる。

「何もしないお飾りの副会長」って言っているけれど、面倒な議題に限って姉さんが出て来て、すぐ終わらせてしまう。

そのほとんどは妥協によるものだけど、決断だけは早い・・・おかげで一つの議題に何時間も掛かるような事はなかった。


姉さんはなんと言うか・・・手を抜くのが上手い。


昔から何でも出来る人だったけど、決して全力を出さない人だった。

なぜ手を抜くのかずっと不思議だったけれど・・・今の綾乃様を見ているとわかる、身が持たないんだ。

姉さんは手を抜くべき所がわかってる、だから綾乃様も無理をせずに済んでいる。

「能ある鷹は爪を隠す」という言葉は、きっと姉さんの為にある言葉だ。



・・・そんな姉さんの様子がおかしい。

まるで別人を見るような目で綾乃様を見ていたり、かと思えば急に勉強に熱を入れ始めたり・・・

この間なんて高校の参考書を買ってきていた。


「こ、これは・・・将来の為にね・・・ちょっとレベル高い高校に行く事になるから、ついて行けなくなるんじゃないかなーって・・・」


もう・・・置いて行かれそうなのは私の方だよ、姉さん。

抗議の気持ちを込めて、じっと睨む・・・放っておくと姉さんはいつも一人で先に行ってしまうんだ。

今も昔も、私は追いかけてばかり・・・姉さんがそんなレベルの高い学校に行くのなら、私はもっと勉強しないと・・・一緒に行けないよ。


「う・・・な、何よ・・・」

「姉さん・・・勉強、教えて」

「あ・・・そっか、左子も一緒に通うんだよね・・・」


やっと気付いてくれた・・・本当に姉さんは勝手なんだから・・・私はいつも一緒だよ、姉さん。


・・・生まれる前から一緒なんだからね、お姉ちゃん。

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