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今日から学校と仕事、始まります。②莞

お客様第一の精神

作者: 孤独

すぱぁ~……


「ふぅー…………」


喉かだねー。青い空、眩しい太陽、ちょいと強い春風。

外で。1人で。……仕事の一段落に公園に入って、ベンチに座ってタバコを吸い、ガムを食って5分後に出発。

働き過ぎずに適度な仕事をする。これが良い事なんだよ。



ジュッ


「うーっし。行くか」


外の仕事はやっぱりこれよ。

うぜぇのがいない中で、これができるってのが普通であって、特別なんだよな。


ブロロロロロ


◇      ◇


いつもくだらねぇーミーティングなのだが、今日もくだらないと思うミーティングであった。

だが、それについては喫煙者とそうでないかの差がある。


「最近。お前等、配達員が公園やら道でタバコを吸っている姿を客から言われている」


配達とか、工事のおっちゃんとかは、意外とやっている。それに嫌な気持ちは湧かない。外の仕事の良さの一つだろうって思うんだが、上司と客は違うようだ。


「少しは控えろ。休憩中にしやがれ。労働力が減るだろ」

「山口は吸わないけどな。お前等の上司は、中にいることを良い事にタバコ休憩してるじゃねぇか。俺達、知ってるぞ」


お互いに客と出会う仕事であるが、外で働いている奴と。電話やら事務やらで働いている奴との意識の違いがある。もっと言うと、タバコを吸ってる奴と吸ってない奴の差は大きい。

自分は後者なので、なんで吸ってるのかよく分からないという意見ではある。しかしながら、タバコ休憩とは言わないが、仕事中に少し落ち着ける時間。5分程度は欲しいものだ。

2000年頃の話となるが、夏の暑い日に配達員が自販機で飲み物を購入し、飲んでいるところ。仕事中なのに飲み物を飲食するのはいけないという、お客の申告がいくつもあったという(当時の自分はいませんが)。そのため、水筒を持って配達する人が増えたとか。……なお、水筒で飲んでいても、文句はいくつかあったそうです。時代ですね。


「水は必要だが、タバコはいらねぇーだろ」

「タバコは必要だ」


ベテラン配達員の木下にとっては重要である。

タバコを吸わない休憩ってなに?

働き続けろってなんだよ、コラ。

と、一定の基準を満たした労働をする人は思う。


「……あー、分かった分かった。ともかく、客のいる公園で吸うな。車の中も止めろ。上手く休憩をとれ」

「うーっし!」


鬼の部長として、名高い山口部長。これについては上層部の連中と同調はするが、完全に味方をするわけじゃない。木下の言う通りの奴等もいるし、互いに言い分は分かる。ただし、注意を守れってこと。


「”それか”。ちゃんと喫煙所に入って吸えよな」

「!おーーーい!その喫煙所が最近減ってるの、知ってるだろーー!テメェーーー!」

「俺が譲歩するのはそこまでだ」


喫煙者にとって不幸なのは、喫煙場所が凄いスピードで無くなって来ている事だ。それは良い事なのかもしれないが、それを探す込みで仕事をするのは面倒だ。



◇      ◇


ちょっと昔の話があって、山口部長はあんまり言えなかった。

彼の過去については色々とある。

一個人として、そーいうのは誰しもそうなので特別ではないのだが。


「あんた達、最近そこでタバコを吸ってるでしょ!」

「タバコ臭いの止めて!」


誰だってタバコを吸っている時代もあった。2010年代はまだ落ち着いていたが、2015年くらいからか。急に増えて来た。というより、体感。客の声が届きやすくなったというのが、印象だ。

こう言っちゃなんだが、配達してる時に客がタバコ吸いながら受け取ったりする時は珍しくない。今でもだ。他の客もだいたいそうだが、ちゃんと届けば特に何も言わないのだ。人は基本、何も言わない。

ところが最近。事情は分からないが、実名や場所を言わずに、信憑性が確かか分からない申告が入って来る。その申告に対し、労働者全てが対応しなければならないという、お客様第一の精神が強い現場だ。そこで生じる窮屈な仕事現場に疲弊する社畜達。


「なんで配達、最近遅いの!?」

「間違ってるんですけど!!」

「荷物汚れてるんですけどーー!」


基礎であるこっちの申告と同様に対応する。しなきゃならない神格化。

人手不足、文句と注文、増えまくる仕事量。

自由だったあの頃って、響きになるが。当然、出てくる不満。


「仕事辞めます」

「転職するわー」

「もっと楽な仕事探す」


それに文句や罵声など、あろうはずもない。圧倒的な同意。ここで働き続ける方がバカ。

そこで働く者が減り、基礎が揺らぐ。そして申告が増えて、辞めるの負のスパイラル。当たり前だが、人員の補充なんてない。自由な時間があったから続けていた人もいたわけで、自由な仕事を探すのは良いことだし、そこで続けるか続けないかは本人の気持ち。


「働き辛い環境にしておいて、働けはないでしょ」


タバコを吸い、愚痴りつつも、仕事をこなす人がいる。

気合だ。技術だ。体力だ。人手不足なんてカンケーねぇー!現場以外はそー言っているが、……そーいう場合ではなくなっているんですよね。世の中。




「なんで現場の人間って、バカばっかりなんだ?京大生とか東大生がなんで来ない?」


そんな頭の良い連中が、こんな泥臭い仕事をするわけないだろ。

って頭の中で思っていたら


「お前みたいなバカと仕事したくねぇーんだよ」


ってマジレスする先輩がいた(笑)。上司に不満あったんだろうけど、さすがに言い過ぎ。せめて、企業って言ってやって。

次回はそーいう話にしようかな。

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