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機械腕のレヒト  作者: 生牡蠣
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真夜中の誘拐事件

外は月明かりがあって思っていたより明るい。

リンクにもたぶん気づかれているが、外に出たのには、ただ探検するのとはまた別の理由がある。

この領内にある中で、一際目立っている大きな屋敷がすごく気になるのだ。

シルフの村にはちゃんとした建物なんてないから、建物ってだけで俺にとっては珍しい。それなのに1つだけでかいなんて気にしてくださいって言ってるようなものだ。


「なぁ、あの屋敷大きいよな。やっぱり誰か偉い人でも住んでるのかな。」


『そうなのではないですか?フォレンド領、らしいので領主でも住んでいるのでしょう。』


「まぁたぶんそうなんだけどね、やっぱ気にな…ん?」


なんか人の気配がするような?


『起きている人がいましたね。この時間に起きているおバカさんはレヒトだけだと思ってたのですが。』


「バカはないだろ。それよりなんで起きてるか気になるな。探検かな?ちょっと見てみようぜ。」


近づいていくと、どうも揉め事みたいな雰囲気がする。

気配のする場所をのぞき込むと、男達に掴まれた状態で暴れる少女と目が合った。


「た、助けて!!」


「うるせぇガキ!どうせ誰も気づきゃしねぇよ。諦めな。おら!こっちこい!」


そう言って、男達は俺から離れた方向に少女を運んでいく。


「…助けに行くぞ。いくらなんでも幼すぎる。」


そう言ってゲーデをポーチから取り出す。

すると、リンクは思っていたより素直に鍵穴を出してくれた。


『あれはただの揉め事ではなく誘拐事件でしょう。事件に巻き込まれたくはありませんが、まぁ変身してさえしまえば顔はバレませんし。…タイプ『シルフ』!』


「変身!」


『承認。『ウィンド・シルフィード』展開します。』


ついこの間つけたばかりの外装をまた装着し、飛行能力で高く飛び上がる。


「空からなら見失わねぇだろ!」


『せっかくですので潜伏場所まで探しだして、元から叩きましょう。』


リンクが妙に素直な理由がわかったぞ。

なんだかんだ言って、こいつも小さい子は助けたいんだな?


少し追跡したところで、男たちは小さな小屋に入った。ので、俺もその小屋の中に入る。

そこでやっと、男達は追跡されていたことに気付いたらしい。


「なっなんだおまえ!どこから現れた!?」


「妙な格好に妙な仮面なんてつけやがって!何者だ!?」


「あ、あの!助けて!!」


「妙な格好とはなんだ。それよりそこの子、嫌がってるみたいだけど、離してやれよ。」


「それはできない相談だな!おいお前ら!やれ。」


男達のトップらしき髭面の男がそういうと、少女を運んでいた2人が襲いかかってきた。


「吹き飛べ!『ヴァルテン・ウィンド』!」


「なぁっ!?貴様!」


風の壁で弾き飛ばして気絶させたのだが、俺の耳に異音が聞こえてきた。

どうやら建物が脆いらしく、風の余波だけで床板がめくれて壁が軋んでるらしい。

建物が崩れれば少女も無事ではすまないだろう。


「おい、どうする!風を使い続けるわけにいかねぇぞ!」


『ウルフのゲーデに変えましょう。元の魔獣は魔法を使う素振りを見せませんでしたので、物理型なのでしょう。加減がしやすいはずです。』


「なるほどな!そういうことなら使う!」


シルフのゲーデを抜き取り、その穴にウルフのゲーデを突っ込む。


『タイプ『ウルフ』!』


「変身!」


『ウィンド・シルフィード』が名前をつけたら強化されたのを見ているから、しっかり名前もつけてきた。

何度折れても強くなって生え変わる牙こそあいつの特徴!だからこそ、こいつの名前はこれでいい!


『承認。『ファング・ウルファング』展開します。』


リンクから魔力が放出され、牙の大きな狼の顔を形作る。その顔は顎門を大きく開いて俺に左側から呑み込むように噛み付いてくる。

狼型の魔力が霧散した後には、狼の牙の意匠が施された外装を纏った俺がいた。

同時にまた前回のように外装の使い方が流れ込んでくる。

どうやら身体強化魔法と、重厚かつ鋭い外装による接近戦ができるようだ。


それにしても、シルフは包み込むようにしてくれるのに、ウルフは噛み付いて呑み込もうとしてくるとはな。

変身の時の魔力の型も、もしかしたらゲーデの元の魔獣によって変わってくるのだろうか。

もしそうなら、俺が倒した魔獣のゲーデを使うときには毎回ひやっとさせられることになるのだろうか。


「えっ…姿が…」


「変わっただと!?キサマ怪人か、それとも化け物か?まさか魔獣ってことはねぇよな?」


「俺には平然とこんなことをするおまえ達の方が化け物に見えるけど?」


「はっ、こんなことでも仕事なのさ。この仕事を依頼してくる奴はいる。だから俺達みたいな奴がいるってわけよ!」


「そういった依頼をするやつの考えもわからんが、とりあえず実行犯を叩きのめそうか。」


「できるもんならやってみろよ。その珍妙な姿にどんな意味があるかはしらねぇが、魔法を使うところは見せてもらった!俺は魔法ってのは怖いが、対策できるからなぁ!」


そういって髭面男は緑色の宝石を取り出した。


「こいつは風魔殺し!名前の通り風魔法を吸収してしまう風魔法士使いの天敵さ!風しか吸えないのは難点だが、風属性なら天災級の魔法だって通りはしない!

どうも今回の依頼主はよほど誘拐を成功させたいらしくてな、他の属性殺しも預かってきてるんだぜ?」


「ずいぶんペラペラ喋ってくれるな。お喋りが好きなのか?喋ってるうちにこっちも対策をうつかもしれないぞ。」


「いいのさ!わかったところでどうにかなるものじゃねぇ。このガキは手足を縛ってあるから逃げられねぇし、連れて来いって言われた時間はまだ先だ。なにより、こんなガキ1人連れてくるだけなんて依頼、スリルが無くてつまらねぇって思ってたとこだ!!」


「仕事より趣味を優先するタイプで助かるな。そしてそのまま負けちまえよ髭面!」


「おうおう言うじゃねぇか!返り討ちにしてやるよ仮面野郎!」


「…仮面さん!勝ってください!!」


「ガキは黙ってな!あんな仮面野郎に負けるかよ!どうせ俺が勝つ!」


「大丈夫だ。あんな髭面誘拐犯に負けはしない!」


ファング・ウルファング!初戦闘といこうか!

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