ゴブリンって本当に魔獣?
朝になって、俺は冒険者ギルドに行った。
ちなみに、ほかの奴らは二日酔いになったらしい。
「おや、レヒト君じゃない。ちゃんと依頼探しておいたよ。」
「ありがとう、それで、どんなものがあるんだ?」
「とりあえず3つに絞ってみたよ。こんな感じさ。」
そう言って、依頼表を見せてくれた。
◇
ゴブリンの討伐依頼:Eランク
ゴブリンの討伐及び、その魔石の回収。
報酬:魔石1個につき50ゴールド
雑草取り:Fランク
畑の中の雑草取り。
報酬:1平方メトルで50ゴールド
薬草採取:Eランク
薬草の採取。
報酬:薬草1つで10ゴールド、薬草の種類や質によって加算
◇
なるほど。報酬が少ないのか多いのかわからないが、少なくとも25万を見た後では少なく感じる。
それにしても気になるのが依頼タイトルの横のランクだ。
「このランクってのはなんだ?冒険者ランクと同じか?」
「それは推奨ランクだね。自分のランクより2つ高いランクの依頼はギルド側が受けさせないように制限するのさ。簡単に死なれても困るからね。」
「そうなのか。ちなみに俺はFランクなのに、3つのうち2つがEなのはどういうことなんだ?」
「Fランクってのは街中でもできる小遣い稼ぎさ。だけどEランク以上は街の外でやる依頼なのさ。
だからFランクってのは登録したてのやつにつけられる仮のランクさ。
街の外で獣を狩った証拠でも見せればすぐにEに上がれるよ。」
つまりあの魔獣を売る前に見せればEスタートだったか。いや、それだと登録料が払えないからこれでよかったのか。
「じゃあ、ゴブリン討伐と薬草採取を同時に受けられるのか?」
「できるね。その2つでいいのかい?」
「あぁ、その2つを受ける。」
「あいよ、街の門は夜の8時には閉めてしまうから気をつけるんだよ。間に合わなかったら街の外で野宿さ。」
「気をつける。」
と言いつつも、野宿しない自信があるわけもないので、ヘンドラーの店に寄ることにした。
「ヘンドラー、買いに来たぞ。」
「いらっしゃい。レヒト君だね。本当にまた来たんだ。」
「あぁ、バルドの助言通り、冒険者になってゴブリン討伐とか受けようと思ったんだが、野宿しない自信が無いからな。野宿用セットとかないか?」
「なるほどな、準備は大事だ。毛布とテント、保存食…ジャーキーでいいか?あと薪が有ればいいよな?」
「いや、火打石も頼む。風以外の魔法は疲れるからな。」
「できないわけじゃないのか。いやー魔法が自分で使えるやつは便利だねー。俺も魔法使ってみたいぜ。」
「魔法書ならあるぞ、初級から上級まで書いてあるけど使い方までは載ってないやつな。どんな魔法があるか書いてある図鑑みたいな本だ。」
「ちょっと期待したけどそれじゃあダメだな。才能なのか、魔法を使う感覚を掴めねぇと無理らしいし。」
そう、俺は宿屋で魔法書を読んでる間に、各属性の初級魔法の中でも初級の魔法である、出現系を覚えたのだ。
とはいえ、やはり風以外の属性はうまくはできない。
火属性魔法は火種にしかならないほどで、さらに疲れるからな。
「そんじゃあまいど、1万ゴールドだ。」
「ちなみにそれは安いのか?」
「まぁ高いな。だけど値段に見合った性能は保証するぜ。軽くて持ち運びやすい割には丈夫なのも良いところさ。」
「それじゃあその値段で買うよ。ありがとな。」
「気をつけて行ってこいよ。まぁゴブリンくらいには負けねぇだろうけど、自然ってのはどうなるかわかんねぇからな。」
そうして俺は、バルドと会った門とは反対の、野原が見える門から街の外に出た。
◇
身分証があるってのはいいな。
とてもスムーズに街の外に出ることができた。
薬草に気をつけながら進むことにするか。
いや、薬草の前にゴブリンだな。少し進んだ先に5匹集まっている。
『レヒト、いい機会ですので近接戦闘の練習をしましょう。変身はしないように。』
「わかったけど…どうやるんだ?素手で戦えとは言わないよな?まさか、剥ぎ取りナイフか!?動いてるやつなんかに使ったら刃こぼれしちまうよ!」
剥ぎ取りナイフは皮や肉に対する切れ味はいいが繊細なのだ。
思いっきり振り回したり骨に当てたりしたら最悪の場合折れてしまう。
『わかってます。武器を作りますので、ゲーデを挿入してください。どちらのゲーデでも構いません。』
まあポーチから先に取り出した方でいいか。
えーっと、この色はシルフのゲーデだ。
『タイプ『シルフ』…では武器を作成、展開します。これは剣型になりますね。名前でもつけてやってはどうですか?』
「じゃあシルフィードソードで。」
『大変安直でわかりやすいですね。あまり凝った名前は分類が面倒ですので助かります。対応するゲーデをつけているときに、武器名を呼んで展開といえば取り出せます』
「わかった。でもそれ結局武器作るのに俺の魔力使ってないか?」
『魔導外装に使う魔力よりも格段に少ない魔力ですので。具体的には、魔導外装1回分の魔力で10本は武器が展開できます。』
「なるほど、そりゃお安いね。それじゃ、『シルフィードソード』展開。」
『承認…『シルフィードソード』展開します。』
出てきた武器はなんとなく形が曲がったような剣だった。
まぁ、形はどうでもいいか。そもそも戦闘技術がないんだから、そのうちこの形に動きを合わせればいい。
とにかく、まずは試し斬りといこうか。
ゴブリンに向かって走っていき、横薙ぎにぶん回してみる。
『グゲッ…』
「あれ、弱くない?」
ただ不格好に振るっただけの剣でゴブリンの首が飛んでしまった。
これなら村でみんなと一緒に戦った猪の方が強い。
『…これでは練習になりませんね。どこかに剣の練習場はないでしょうか?』
「…まぁ、今は依頼だけこなそうか。」
それからも俺は薬草探しとゴブリン討伐を続け、ゴブリンは合計20匹、薬草は50本ほど集まった。
だいぶキリもいいから帰ることにしようか。
◇
「…セーフ!間に合った!」
8時まで結構ギリギリだった。
「おやレヒト君、なかなか遅かったね。薬草については鑑定が必要だから報酬は明日だね。ゴブリン20体で1000ゴールド、魔獣を倒したからEランクに昇格だね。」
とのことらしく、俺が1000ゴールドとEランクのカードを受け取った頃には、さらに時間が経っていた。
宿に戻って夕食をとり、自分の部屋に入った頃にはもう女将さんしか起きていなかった。
さらにそこから眠れないまま少し経ってしまった。
もう起きている人は誰もいないような時間になっている。
「…なぁ、リンク。夜の散歩に行こうぜ。」
『…現在11時…といったところでしょうか。眠れないのはわかりましたが、外に出る必要性もないのでは?』
「探検だよ。ここ、けっこう広いんだからさ。」
『…はぁーっ…よほど外に出たいのですね。まぁいいでしょう。』
「よし!じゃあ今行こうすぐ行こう。」
俺はベルトポーチだけをつけて外に出た。
ゴブリンは魔獣です。
この世界的には魔石が体内にあるなら魔獣です。
その点精霊は自分の力を魔石にして放出できますが、本体に魔石がないので魔獣ではありません。