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機械腕のレヒト  作者: 生牡蠣
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領主から呼び出しをくらう

「…勝てた…のですか?」


「ああ、魔石は完璧に砕いている。」


『ここまで魔石を損傷した状態では生きられませんよ。』


「そうですか!仮面さん、ありがとうございました!助けていただいた恩は必ず返します!」


「いや、気にしなくていいよ?俺が勝手にやったことだし、それに君みたいな小さい子から何か貰うわけにはいかないだろう?」


「…小さい……そう、見えますよね…。

その…私は19歳ですよ?確かに良く幼く見られますけど、もう15歳はとっくに過ぎて成人扱いなんですよ?」


「…19歳なの?まじで?」


マスクルといい、この少女といい、見た目と年齢が一致しないなぁ。絶対この2人は年齢が逆でしょ…。


『あの肉ダルマも倒せましたし、そろそろ帰りましょうか。』


「あ、待ってください!名前を知らないとお礼をしに行けません!私はアイリーです!仮面さんのお名前はなんですか!?」


「俺?俺の名前はレヒト!本当にお礼とか気にしなくていいから!じゃあな!!」


『…教えちゃいましたか。まぁ、いいんじゃないですか?』


今の発言はどうでもいいんじゃないですかって雰囲気がした。

まぁいいか、流石に疲れたしぐっすりと寝てしまおう。


朝起きると、昨日より部屋の外が騒がしかった。

聞き耳をたててみると、どうやらあの肉ダルマの叫び声を聞いた奴がいるらしく、魔獣が出たのではないかという話があったようだ。

だけど肉ダルマの死体は残っていないし、砕けた魔石もアイリーちゃんが回収したのか見つかっていない。

あの時戦場になった小屋だけが崩壊していたので、古い小屋の崩れる音を聴き間違えた奴がいたのだろう、ということになっているようだ。


まぁ、少し噂が経つくらいで、誰も真相にたどりつかない程度の騒ぎで止まっている。

なら普通の生活を再開しても良さそうだな。

とりあえずは、冒険者ギルドで薬草のお金を受け取りに行くか。


「レヒト君!?あんた一体何をしたんだい!?」


ギルドに入ると開口一番、おばちゃんがそう言ってきた。

何をした、と言われても俺にだってわからない。


「何って何さ。もしかして、すごい薬草があったとか?」


「薬草は全部珍しくもないやつだったよ!50本で500ゴールドの平凡な奴さ!わたしが聞きたいのは領主様からレヒト君に指名依頼が来たことについてさ!」


「…え?領主から?いやいや待ってくれ。俺、ここに来てからまだ1週間も経ってないぞ!?領主様に合った覚えもないし、依頼される理由もわからない!」


「でも、領主様の耳に入るような何かをしたのは間違いないんだよ。依頼ってことは良いことなんだろうけど、指名依頼なんて久々すぎてびっくりしたよ。」


「そうなのか。なんか、すまなかった。」


「まぁ謝ることじゃないけどね。それで、君はランクが低いし、今受けている長期依頼もない。そうなると領主様みたいな偉い人からの指名依頼は強制なんだ。内容を話してもいいかい?」


と、聴きながらしっかりと薬草の値段500ゴールドを手渡してくる。


「あぁ、よろしく頼む。」


「じゃあ話すよ。といってもただ領主家に顔を出せってだけなのさ。そこで依頼を言い渡すのかと思ったけど、どうもそういうわけでもないらしい。」


「領主家に行くだけでいいのか?」


「そうらしいね。それで依頼の報酬も向こうに着いてから決めるそうだ。」


「よくわからん話だけど、とにかく行かないと始まらないってことだな。じゃあ今からでも行ってくるか。」


「それがいいね。領主様の家は正面の門に門番が立っている大きな建物さ。この街で一番大きな建物だから見ればすぐわかるよ。」


やっぱりあのでかい建物は領主の家だったか。

…というか、門番なんか立っていたのか?俺が見たのは裏側だった…とか?


いやまてよ、もしかして昨日の夜に建物をしっかり見ていたのがバレて、不審者として事情聴取とか!?

だけど悲しいことに強制。

おばちゃんが言うように良いことだと願うしかない。


「…じゃ、じゃあその依頼受けに行ってくるよ。」


やらかした、かな。俺だって夜中に目をギラギラさせながら領主の家を見てるやつなんて不審者だと思うし。

はぁー…何言われるんだろう、怖いなぁ。


そんなことを思っていても、歩いていればいつかは着いてしまうもの。自分の思っているより早く領主の家に着いてしまった。

夜に見たのは確かに裏側だったらしく、立派な門の前には門番が2人立っている。


「なぁ、門番。領主の家ってここであってる?」


「そうだ、だが中には入れないぞ。」


「入れないのか?そうか。こういった依頼をされたんだけど…」


門番なら依頼が出ているのは知っているだろう。

だから依頼書を見ればわかるはずだ。


「…こんなふざけた依頼出したか?」


「いやでも、左腕が魔導具になってる人の話をお嬢様がしていたような…」


「そうなのか?そしてこいつも左腕が魔導具か…なぁ、一応名前を聞くぞ?」


「俺の名前?レヒトだ。それで、依頼書通りに来たんだけど入れるのか?」


「あぁ、確かお嬢様が話してたのもそんな名前だったな。」


「しかし確認は取らなければ……レヒト。中には入れるが、領主様は忙しい。少し別室で待っていてもらえるか?案内はこいつがする。」


「こいつ呼ばわりされた門番のジークだよ。荷物は…とりあえずそのナイフだけ預かっても良いかな?こういうお偉いさんの家に武器を持ち込まれるわけにはいかないから。」


「あぁ、わかった。とりあえず案内してくれ。」


そうして、俺は領主の家の客室で待つことになった。

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