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機械腕のレヒト  作者: 生牡蠣
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シルフ村の終わり

『レヒト。魔導外装の本質は性質の再現です。実際に魔導外装を装着した今なら、その使い方も理解できるはず。その力であいつをぶちのめしてやりましょう。』


『ああ、もちろんだリンク!俺の家族の(かたき)を討つ!!』


『グオォォォォオオオ!!』


なぜこの様なことになっているのか。俺の出自も含めて簡単に話そう。



俺の名前はレヒト。生まれてすぐに風の森と呼ばれるダンジョンに捨てられた、現在15歳の人間だ。

なぜ捨てられたのか。それは、俺の姿が人間にとって欠陥品だからだ。

俺の左腕は肘から先がない。俺の親代わりだったシルフ達も初めて俺を見た時から無かったと言っている。だからこの腕はきっと生まれつきのものであり、捨てられた原因はこれだろう。


しかし、今の俺にはアーティファクトの左腕がくっついている。

人間の腕というには硬質で、手の甲の部分から手首にかけて透明な水晶体のついたアーティファクトであり、名前をリンクと名付けた。

シルフの中でも、俺の姉ちゃんみたいな存在だったアイレが、木のウロの中にうまっていたのを見つけたらしい。他のシルフ達と一緒にダンジョン内の散歩をした際に、たまたま見つけたと言っていた。


だけどきっと、左腕がなくて苦労してるのを知ってた姉ちゃん達が必死に探してくれてたんだろう。リンクをプレゼントしてくれたとき、アイレはボロボロになっていて、その後2日ほど寝込んだのだから。

当時5歳の俺には大きすぎて、15歳になった今でもやや大きいくらいの腕は、きっと俺の成長が止まるとピッタリな大きさになるだろう。


リンクは喋るアーティファクトだった。左腕のない俺を見たリンクは、


『私が必要みたいですね。では、今日から私があなたの左腕となりましょう。幸いにも魔力量はあるようですし。』


なんて話しかけてきた。最初はびっくりしたけど、今ではいい話し相手になってくれている。

リンクを見つけてくれたアイレ達と、左腕になることを受け入れてくれたリンクのおかげで、今の俺は五体満足であるかのように振る舞えるのだ。


シルフ達との生活は満たされていて楽しかったけど、ここはダンジョンなのだ。15歳になってしばらくした今日、今まで平和だったのがおかしいのだと言わんばかりに、獣災が訪れた。


シルフの村に狼が現れた。ただの狼ならなんとかなっただろうけど、今日やってきたのは大きすぎる牙を持つ、明らかな異形の狼型魔獣であった。


普通の獣なら破れない風の結界は容易く破られ、風の魔力を見ているのか、風の魔力しか持たないシルフ達は簡単に見つかってしまい、簡単に殺されてしまった。


そんな中、俺はアイレと一緒にダンジョンの外まで逃げようとしていた。しかし、魔獣は無慈悲にもアイレの居場所を割り当て、追いかけてきたのだ。


『レヒト!私がいる限りあなたも追いかけられるわ!だからあなただけでも逃げて!!』


『何言ってるんだ!姉ちゃんも一緒に逃げよう!俺も頑張るから!!』


『無理よ、もうすぐ追いつかれる!…よく聞いてレヒト!私達シルフは精霊、死んでも世界樹に帰って生まれ直せるの!だけどあなたはそうじゃない!だから逃げて!』


『でも!』


『いいから!私達はあなたに人間の言葉も教えた!近くの村も教えた!もうあなたは人間として生きていけるの!』


人間として生きられると言われても、今までシルフ達と暮らしてきたのに、そんな簡単に割り切れるわけがない。


『レヒト。アイレの言う通り逃げた方がいいでしょう。これ以上立ち止まってると本当に逃げれなくなりま…いえ、手遅れですね。』


『『…え?』』


『グオォォォォ!』


気がついたら、もうそこまで魔獣は迫ってきていた。

もう逃げられるタイミングは逃してしまった。


『…レヒト。これを受け取って。』


そう言ってアイレは、薄い黄緑色の宝石を手渡してきた。


『…それは!!』


『それは魔石、魔力の結晶よ。その魔石には私の魔力を込めたから、目眩しくらいはできるわ。私は逃げられないけど、あなたなら逃げられる。だからお願い、あなたは生きて、レヒト!』


それだけ言い残したアイレは、俺の目の前で魔獣に踏み潰された。目の前が真っ暗になったような気がした俺は、言う通りに魔石の魔力を使おうとして…


『待ってくださいレヒト!魔石があるなら話は別です!今すぐ魔石を左手(わたし)に渡して!』


何を言ってるんだとも思った。だけど俺は、リンクの言う通りに左手に持ち替えてみた。そして…


『何、これ?』


左手にあったのは元の形の魔石ではなく、同じ色に透き通る鍵だった。


『それはゲーデ。魔導外装を作るのに必要な鍵です。これ以上の説明は後にしましょう。早くしないとあの魔獣に殺されてしまいます。』


そう言うと、リンクの一部、左手の手の甲に当たる部分が浮き上がって、その下に鍵穴が出現した。


『ゲーデをそこに挿入して、キーワードを唱えてください。キーワードは人語で『変身』です!』


『えっ…この穴に挿して…』



『ゲーデ確認。タイプ『シルフ』!』


「へ、変身!」


『承認。……魔導外装を作成、展開します。』


『…っとお!?』


リンクの手の甲にある水晶体から風が巻き起こり、薄い黄緑色の魔力が巻き起こる。

それは渦を巻きながら、俺の体を包み込むようにして、翅のついた外装の形で装着された。同時に…


『これは…シルフの力?』


シルフの使える魔法が、この外装の扱い方が、そして風の流れが手に取るように分かる。俺に戦うための知識が流れ込んできているのが分かる!


『どうですか、レヒト。魔導外装の本質は性質の再現です。実際に魔導外装を装着した今なら、その使い方も理解できるはず。その力であいつをぶちのめしてやりましょう。』


そうだ、できる。シルフ達の、家族の戦い方を身につけた今の俺ならあいつに勝てる!


『ああ、もちろんだリンク!俺の家族の(かたき)を討つ!!』


『グオォォォォオオオ!!』


そうして、この状況になったわけだ。

俺の帰る場所は無くなったが、家族に生きてくれと言われてしまった。さらに、俺の手には敵を取るための力がある。

ならば敵討ちのための戦いを始めよう。

ただ、復讐心だけの敵討ちじゃない。

敵をとれないと、俺はきっと、人間の道も歩めないのだ。

そうか…僕に足りなかったのは…仮面ライダー!!

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