3話 草原の先
しばらく無言で二人で歩いていると、いろいろと気づくこともあった。
まず、草原の植物が見たこともない物ばかりだ。
あきらかに色がおかしい。赤い草や白い草がその辺に群生している。
そして、虫のサイズもでかい。親指ほどの蟻や蠅がいる。
最初に見たときは言葉が出なかった。
学者はこんなのを見かけたら狂喜乱舞するのだろうか?
俺には気持ち悪いだけだ。
ここは日本どころか地球ではない。
違う星か、漫画であるような異世界か、どちらにしろありえないことが
起こっている。
「雄二、なんか飲み物持ってないか?」
先輩に声を掛けられて、首を横に振る
お互いの持ち物を確認したが、ライター、たばこ、財布、使えない携帯電話、鍵、
ハンカチそして腕時計だけ。
そういや、今日は飲みに行くんで会社にカバンを置いて帰ったんだ。
飲み物もなく、再び無言で歩き続けることになった。
どれくらい歩いただろうか?すでに2時間は立っているだろう。
俺も先輩も焦燥している。飲み物もなく、先も見えずにただ歩くだけ。
奇跡か。目の前のはるか先に空に向かって一筋の白い煙が見える。
「な、なんかありますよ!」
「あぁ、煙が見える。なにかあるぞ!」
先輩にも見えているらしい。俺の幻覚ではないのだろう。
普通に考えるなら、人工的な何かであろう。
「石井、いくぞ!」
行くしかないだろう。このままでは脱水症状になってしまう。
なにも分からないところで、彷徨っていても死ぬだけだ。
「行きましょう。それしかないですよ。」
目に見えていたので、近いと思ったが割と距離はあった。
それでも、目標が出来たのだ。ただ、黙々と歩き続けた。
2時間ほど歩くと、建物が見えてきた。
木と布のようなもので作られた、ちょっと頑丈なテントのような物が
いくつか見える。
簡易な木の柵のようなもので囲まれており、その中から煙が立ち上っている。
「集落ですか?」
ちょっと規模の大きいキャンプ場に見える。
「石井、行くぞ」
「先輩、ちょっと待ってください!」
いやいや、少しは警戒しろよ。何がいるかわからないのだぞ。
「少し様子見しましょうよ。先輩も分かっているでしょう。
ここは地球じゃないんですよ。あそこにいるのが人間かも分からないですよ。」
走りだそうとした先輩も立ち止まる。
「あぁ、そうだな。ここは地球じゃないんだよな。」
今まで、意識的にそこには触れないようにしてきていた。
地球じゃない。言葉にして出したら心が折れると思っていたから‥