1話 始まり
今日の仕事もやっと終わった。
最近仕事内容が変わったため、慣れておらず本当に疲れる。
ちょっと飲んで帰ることにしよう。
俺は石井雄二。先日三十歳になったばかりの会社員。
ちょっと前までは、言われたことをやっていればよかった会社の歯車だったが
先輩が突然退職したせいで管理する側にまわってしまった。
独身だが彼女はいるぞ。最近すれ違いが多いが。
「はっ!なんだこれ」
思わず声が出たが、本当になんだこれ!
仕事が終わり、いつものチェーン店居酒屋で飲んでいると先輩から電話が掛かってきて、一緒に飲むことにしたはずだ。
先輩は酔っぱらっていつものように、人の悪口を延々と言っていたのは覚えてる。
棗先輩(退職して俺を忙しくした張本人?)が的になっていた。
適当に相槌をうちつつ俺もそれなりに飲んでいた。
ぐでぐでになった先輩に肩を貸して、店を出て、気づいたら草原にいた。
慌てて振り向くと、居酒屋がない。
それどころか何もなく、一面に草原が広がっている。
「夢か。俺ものんだもんな。」
一人ごとを言いつつ、すぐ横を見ると、酔っぱらいが肩にもたれ掛かっている。
まぁ、酔っぱらいは先輩なんだが。
先輩が俺の夢にまで出てきているのか?というか、重みを感じるんだが。
考えることを放棄して、そのままなんとなしに立ちすくんでいた。
どれくらい時間がたったのだろう。10分か?1時間か?そこで、ふと思いついた。携帯だ。そうだ、警察だよ。
慌てて携帯を取り出して確認すると、画面には何も写し出さない。
いやいや、電池残量はまだまだあっただろう!でも、何を押しても反応しない。
先輩の携帯を漁って確認したが、こちらもダメだった。
いよいよ万策尽きた俺は、再び立ちすくむのだった。