梨が好きなあの人と
僕は梨が嫌いだった。
梨のなにが嫌いかと聞かれても答えられない。
とにかく梨が嫌いだった。
あの日まで。
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僕は高校に入ってすぐに片想いをした。
彼女はいつも明るく笑っていた。
そして、とても優しい人だった。
僕は、彼女を好きになって二週間ですぐに告白した。
学校の屋上。いいシチュエーションだった。
でも、告白した瞬間、彼女は真面目な顔になって、
「駄目」
冷たい声で言い放った。
その日は後悔と悔しさで
眠れなかった。
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次の日。
学校では特に何もなく。
ただ、眠かったので授業はほぼ寝てた。
放課後。午後6時くらい。
僕は部活(天文部)を終えて、帰ろうとしていた。
しかし。
突然の雨。
夕立だった。
僕は傘を持っていたからいいが、問題は......
そう。例の彼女。
「あー。傘持ってくれば良かったー。」
予報では晴れだったけどな......
と呟いて、彼女は
「よし、走るか!」と言って走り出そうとした。
濡れてもいい気らしい。
「あ、待って!」
自分でも気づかないうちに叫ぶ。
「え?」
そこからは、不思議とスムーズに言葉が出てきた。
「昨日は、変なこと言ってごめん!」
「え?いや......」
「これ、使ってください!」
「え?2本持ってるの?......っておーい!」
彼女がまだ何か言ってた気がするけど。
聞いてる余裕は無くて。
恥ずかしさで僕は走り出していた。
「......そんなことないよ。」
彼女はポツリと呟いて、ゆっくり歩きだした。
傘をさして。
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次の日は学校が休み。
朝9時ごろ、来客が。
玄関を開けると、彼女がいた。
気まずい空気。
「......えっと、こんにちは?」
「......あ、こんにちは。」
気まずい空気。
「これ、傘。返しに来たの。」
「あ、わざわざ...ありがとう。」
気まずい空k......
「いや、こちらこそありがと。いや~、やっぱ濡れて帰らなくて良かったよ。」
「どういたしまして...」
「弟がね、傘忘れて濡れて帰ってきて、お母さんに怒られててさ、本当助かったよ。」
そう笑いながら彼女が言って。
気まずい空気なんてどっか行った。
やっぱりそこが彼女の取り柄なんだな。
「そうだ。これ、お礼。」
そういって手渡されたのは、ビニール袋に入った数個の梨だった。
「おばあちゃんがね、昨日送ってきてくれたの。」
「へ、へえ。じゃあ後でいただくから......」
お忘れだろうか。
僕は梨が嫌いだ!
「あ、そうだ。」
そういって彼女が取り出したのは、タッパーに入った、切ってある梨だった。
「ね、感想。聞きたいから、今食べてみてよ。ほ、ほら、皮も取ってあるから。」
困った。
何か断る言葉が見つからない。
とうとう観念して、食べようと思った。
そのとき。
「一昨日はごめんね。あんな冷たい返事しちゃって。」
「え?」
なんだなんだ。流れ変わったな。
「あれは、その、別に断るつもりじゃ無くて......」
はい?今なんて?
「なんか、テンパっちゃって、駄目なんて言っちゃったけど、あれは、えっと、えっとね、待って、言葉が、出てこないにゃ、ああああれえ?」
まあ僕は答えを急かさない。
待つことにしよう。
↑といいつつ、突然の展開に頭が付いてかないだけ
「そう。わ、私も、昨日、好きになった。か、かっこよかったよ。うん。付き合ってください!」
......
↑思考回路ストップ
「あ、えっと、駄目だったかな?ご、ごめん、あ、明後日、学校で、答え、待ってるからね、よろしく!」
彼女は逃げていった。
僕はひたすら梨を食った。
3つ食って、腹を壊した。
答えなんて決まってる。
Yes,I love you too.
答え方を考える。
僕もずっと好きだった。
↑キザだなこれ
こちらこそ、よろしくお願いします!
↑固いな。
まだ答えは決まんないけど。
とりあえず。
僕は梨が好きになった。
そして、僕は答えを決めた。
付き合うことに異論なし!
梨だけに!
そしたら彼女、笑ってくれるかな。