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梨が好きなあの人と

作者: king松茸ご飯

僕は梨が嫌いだった。

梨のなにが嫌いかと聞かれても答えられない。

とにかく梨が嫌いだった。

あの日まで。

__________


僕は高校に入ってすぐに片想いをした。


彼女はいつも明るく笑っていた。

そして、とても優しい人だった。


僕は、彼女を好きになって二週間ですぐに告白した。

学校の屋上。いいシチュエーションだった。


でも、告白した瞬間、彼女は真面目な顔になって、

「駄目」

冷たい声で言い放った。


その日は後悔と悔しさで

眠れなかった。

__________


次の日。

学校では特に何もなく。

ただ、眠かったので授業はほぼ寝てた。


放課後。午後6時くらい。

僕は部活(天文部)を終えて、帰ろうとしていた。


しかし。


突然の雨。

夕立だった。


僕は傘を持っていたからいいが、問題は......


そう。例の彼女。

「あー。傘持ってくれば良かったー。」


予報では晴れだったけどな......


と呟いて、彼女は

「よし、走るか!」と言って走り出そうとした。

濡れてもいい気らしい。


「あ、待って!」

自分でも気づかないうちに叫ぶ。


「え?」


そこからは、不思議とスムーズに言葉が出てきた。


「昨日は、変なこと言ってごめん!」

「え?いや......」

「これ、使ってください!」

「え?2本持ってるの?......っておーい!」


彼女がまだ何か言ってた気がするけど。

聞いてる余裕は無くて。


恥ずかしさで僕は走り出していた。


「......そんなことないよ。」

彼女はポツリと呟いて、ゆっくり歩きだした。


傘をさして。

__________


次の日は学校が休み。

朝9時ごろ、来客が。


玄関を開けると、彼女がいた。

気まずい空気。


「......えっと、こんにちは?」

「......あ、こんにちは。」


気まずい空気。


「これ、傘。返しに来たの。」

「あ、わざわざ...ありがとう。」


気まずい空k......

「いや、こちらこそありがと。いや~、やっぱ濡れて帰らなくて良かったよ。」

「どういたしまして...」

「弟がね、傘忘れて濡れて帰ってきて、お母さんに怒られててさ、本当助かったよ。」


そう笑いながら彼女が言って。


気まずい空気なんてどっか行った。

やっぱりそこが彼女の取り柄なんだな。


「そうだ。これ、お礼。」


そういって手渡されたのは、ビニール袋に入った数個の梨だった。


「おばあちゃんがね、昨日送ってきてくれたの。」

「へ、へえ。じゃあ後でいただくから......」


お忘れだろうか。

僕は梨が嫌いだ!


「あ、そうだ。」

そういって彼女が取り出したのは、タッパーに入った、切ってある梨だった。


「ね、感想。聞きたいから、今食べてみてよ。ほ、ほら、皮も取ってあるから。」


困った。

何か断る言葉が見つからない。

とうとう観念して、食べようと思った。


そのとき。


「一昨日はごめんね。あんな冷たい返事しちゃって。」

「え?」


なんだなんだ。流れ変わったな。


「あれは、その、別に断るつもりじゃ無くて......」


はい?今なんて?


「なんか、テンパっちゃって、駄目なんて言っちゃったけど、あれは、えっと、えっとね、待って、言葉が、出てこないにゃ、ああああれえ?」


まあ僕は答えを急かさない。

待つことにしよう。


↑といいつつ、突然の展開に頭が付いてかないだけ


「そう。わ、私も、昨日、好きになった。か、かっこよかったよ。うん。付き合ってください!」


......


↑思考回路ストップ


「あ、えっと、駄目だったかな?ご、ごめん、あ、明後日、学校で、答え、待ってるからね、よろしく!」


彼女は逃げていった。


僕はひたすら梨を食った。

3つ食って、腹を壊した。


答えなんて決まってる。

Yes,I love you too.


答え方を考える。

僕もずっと好きだった。


↑キザだなこれ


こちらこそ、よろしくお願いします!


↑固いな。



まだ答えは決まんないけど。

とりあえず。

僕は梨が好きになった。


そして、僕は答えを決めた。


付き合うことに異論なし!

梨だけに!


そしたら彼女、笑ってくれるかな。


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