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ゆるい短編

言葉

作者: 閑古鳥

 私にとって言葉は花だ。心の中にある花畑から摘んで渡すものだ。私の大切な心の欠片だ。


 「ありがとう」や「ごちそうさま」は小さな一輪の花。花畑から一つ摘んでそっと相手に渡す。受け取ってもらえなくてもいい。ただ自分の気持ちをそこに残したくて私は心の花を摘む。

 独り言は部屋に飾る一輪挿し。自分の心を見えるように置いておくもの。時々それに反応する人も居るけれど、これはただ自分のために摘んだ花。覚えておけるように。忘れないように。気持ちを残しておきたいから私は心の花を摘む。

 会話はちょうど見つけた花を次々に渡すようなもので。直感で選んだ花を渡すから失敗しちゃう事も多くなる。刺が付いたままだったりあなたに似合わない色だったり。けれどそれが私にできる精一杯でしかなくて少し苦手に思ってしまう。それでもあなたと繋がっていたいから私は心の花を摘む。

 小説は色々な花を飾ったフラワーアレンジ。どれがいいかな。どうやったら綺麗に見えるかな。花畑の中でもいっとう綺麗な花を使って自分が満足できるものを作る。作るのも楽しいしできたものを自分で見ているのも幸せだ。でも飾って誰かに見てもらえた時が嬉しくてまた私は心の花を摘む。

 誰かに贈る言葉はたくさんの花を使った花束。花畑からあなたに似合うものを探して集めて纏めてあげる。包装やリボンにも気をつけて。私が貰った幸せをあなたに伝えたくて贈りたくて。たくさん迷って考えて。受け取ってもらえたらいいなって一つ一つ心を込めて。大切で大好きなあなたに贈るために私は心の花を摘む。

 何かへの叫びは花びらでできた紙吹雪。花畑から自分の気持ちに合う花を集めて花びらだけにして。芯がなくなってバラバラになって。ちっぽけな事しか伝わらないけどそれでもいいと花びらを撒く。腕の中いっぱいにかき集めた花びらを空へと放つ。私の言葉を見て欲しくてやっぱり私は心の花を摘む。


 誰も傷つけたくないから刺のある花は丁寧に刺を取って。刺を取れないものは使わずに心の中にしまったままにして。綺麗なものだけ見せたくて。汚れた花は丁寧に洗って。萎れた花には水をあげる。枯れてしまったものは心の奥にしまい込んで見せないように。

 ドロドロとした感情が渦巻いて泥団子にして投げたくなったり。もういやだって全部ちぎってしまいたくなる時もたくさんあって。紙吹雪に使う花びらの中に硬い石ころを混ぜてみようかなんて考える事だってある。栄養がなくて花はなかなか育たないし。雑草を抜いて手入れをすることも大変で。贈った花が受け取ってもらえないことだっていっぱいある。でもこれをしているのは自分のエゴだから。相手に望んではいけないことなんだってまた我慢を続けて。そうやって頑張ってきたけれどちょっぴり疲れてしまったのかも。

 言葉は魔法ではないから、何も無いところから生まれることはなくって。自分の中にある花畑から少しずつ少しずつ花が減っていく。また育つための環境が整えられなかったら、きっと言葉は消えてしまうんだろう。けれどきっと花を摘むことはやめられない。花がなくなってしまうのはきっと私の心が死んだ時なんだろう。

最近ちょっととげとげした言葉を見ることが多くて少し疲れたみたいです。もっと楽に生きられたらいいのに。

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