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斎宮崩壊編

とある大学の研究室の中から始まったストーリーです。皆さんが楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。

感想をお待ちしております。

<m(__)m>

挿絵(By みてみん)


現在の日本以外に平行世界に存在するといわれている「日本」。そこは日々の生活に「神々」が息づき、「斎式(さいしき)」という魔術の類が発達して生活にとけ込み、人々が平和に暮らしていた・・・その「神々」に仕える「斎宮(さいくう)」から、ある「物」が盗まれもうひとつの「日本」へと持ち出された。そして、少女が「斎宮(さいくう)」から「それ」を取り戻すために派遣される。苛酷で決して戻るあてのない片道行として知っていたとしても・・・。


挿絵(By みてみん)


西暦2025年 日本 三重県多気郡(たきぐん)明和町(めいわちょう) 斎宮(さいくう)歴史博物館。ちょうど、逢魔が時(おうまがとき)といわれる昼と夜の狭間(はざま)の時刻に少女はこの地に降り立った。少女は降り立った場所を何回か見回し、腕に装着している腕輪の形の機械に呼びかける。

「クサナギ、念のために聞くけど本当にここがこちらの世界の斎宮なの?」

少女の耳にはめたイヤホンから女性の声で答えが聞こえてくる。

「念のために走査しましたが間違いなく斎宮のあった場所です。」

これは少女のいた世界で開発された超小型AIの「クサナギ」

本来、舎人(とねり)任務支援のために斎宮が極秘裏に開発されていた装備だったが今回の任務のために特別に試作機を少女のために斎宮が手配した。

「今、近くにあるコンピュータに侵入してこの世界の情報を収集します。しばらくおまちください。」

その答えを聞くと少女は近くにあるベンチに座り、自分が平行世界を超えてこの日本へ転位するきっかけとなった事件を思い出していた。

少女の名前は川紀田(かわきた)(こう)。この小説の主人公である。


西暦2025年6月  日本 三重県 斎宮 深夜

斎宮 西廊下

「よかったよ、今日の宿直が岐南(きなん)ちゃんで。」

「私もだよ。どうしても夜の警邏(けいら)は慣れなくて。」

そんな、他愛ない話をしながら舎人(とねり)5番隊所属の岩田(いわた)式路(しきじ)岐南(きなん)鳴海(なるみ)は照明を落とした長い廊下を巡回していた。そのうち、警邏の目的地である、奥の院(おくのいん)の近くまできた時、扉の前に人影を見つけた岩田が岐南を手で制した。

「ちょっと待って、岐南ちゃん、誰かいる。」

「えっ。誰?」

岐南が薙刀(なぎなた)を構えた。

「誰なの?」

と岩田が聞く前に、薄暗い扉の前からその影が向かってきて、

「ごめん、私だよ」

と声をかけてきた。

「なんだ、南木(なんき)さんじゃん」

南木(なんき)章子(しょうこ)、舎人9番隊の隊長だ。

「南木さん、どうしたんですか?こんな時間に。」

「ごめんねぇ、驚いた?今日、そこの奥の院に昼間、忘れ物しちゃって、困ってたの。よかったら、一緒についていってもいい?」

と、南木は23歳とは思えない幼さが残る笑顔でふたりを拝み(おがみ)ながら話しかけてきた。

「なあんだ、そんなこと、いいよねぇ。岩田ちゃん?」

と岐南はすぐに岩田のほうを振り返った。

「うーん、私はいいんですがうちの隊長がうるさいんで、今、連絡してもらってもいいっすか?」

「えーいいじゃん。一緒について行くだけだよ。」

南木は、そう言いながら笑顔のまま、2人に近づく。

「岐南ちゃん、後ろへ縮地(しゅくち)!!」

岐南は理由もわからずに南木との距離を斎式のひとつ「縮地」によって取る。

「岐南ちゃん、戦装束(いくさしょうぞく)へ変換して!」

と言うなり岩田自身は

「戦装束、変換!」

と言った。

「えっと… 戦装束、変換!」

と岐南もあわてて叫んだ。

すると左腕に装着していた戦籠手(いくさごて)からナノマシンが排出され二人の全身を包み、グレーの戦装束へ変換した。バイザーがモニター表示になり、南木の情報を表示しはじめる。

「岩田ちゃん、何これ?隊長の南木さんだよ?何で?」

と岐南が画面越しに岩田に話しかけた時、信じられないものをみた。

縮地で充分に距離を取っていた岩田に南木は既に詰め寄っており、アサルトライフルの銃弾程度なら防ぐとされていた舎人の特殊装備「戦装束」の上から岩田の腹部を手刀で深々と貫いていた。


挿絵(By みてみん)


「岐南ちゃん…逃げて…」

岩田は南木の腕を両手で掴み叫ぶ。

浄化(じょうか)

と南木が呟くと岩田の身体はそのまま白い光に包まれて消えた。

「斎式!虎狼(ころう)

と叫び、気が遠くなりそうなのを必死に堪えて岐南は柏手(かしわで)を一度打つ。

同時に虎と狼が空中より出てきて南木に襲いかかった。南木は何も言わずに手を横に振ると虎と狼は何事もなかったように消えてしまった。

「弱い、弱すぎる」

と呟きながら南木は岐南に近づく。岐南の画面にはある表示が赤く輝いていた。それを信じられないといった表情で見つめていた岐南はやがて自身も白い光に包まれて意識がそれに呑み込まれていくの感じた。

廊下に静寂が戻る。

「あーしまった、2人とも消したら鍵、手に入らない。うーん、結局、壊して入るしかないのかぁ、封印もあるしメンドイなぁ。」

と南木は呟きながら奥の院の扉へ戻っていった。


ほぼ同時刻「斎宮」本庁(ほんちょう) 警邏本部。

持光寺(じこうじ)隊長!持光寺隊長!」

「どうしたの?」

と、今夜の警邏担当である舎人5番隊隊長 持光寺(じこうじ)弌世(ひとよ)は目を通していた書類から顔をあげ声の挙がったほうに向けた。

「たった今、奥の院、警邏中の岩田、岐南の両名からの信号が途絶えました。」

「何?もう一度」

「岩田、岐南両名の信号途絶!」

「なんですって!」

「… 2人から最後の信号位置確認、確認出来次第私に報告。手の空いている者は私と来て。」

と持光寺が立ち上がろうとした時に地の底から湧いて来るような轟音(ごうおん)が響き、走り出そうとした持光寺たちの動きを止めた。

「今度は何!」

「奥の院の扉周辺で爆発らしきもの確認!」

と舎人の悲鳴のような声が警邏本部に響く。

「場所の確認を。本当に奥の院なのね?」

「確認しました。間違いなく奥の院周辺で爆発しています。」

持光寺はひと呼吸だけ考え、

「第3警報!斎宮すべての門へ連絡して今すぐ閉鎖するように伝えて。それから舎人隊すべてに非常呼集を。」

「第3警報ですか・・・」

持光寺の指示を聞いた舎人が言いかけて絶句する。

第3警報。これは「斎宮」崩壊の危機を意味する。この警報は元々自然災害等の被害用の警報だった。

「まさかここで・・この状況で使うのか・・」

持光寺以外のこの場いる舎人全員が同じことを思った。

「隊長、第3警報発令には警邏担当の隊長の認証コードが必要です。」

「わかったわ、持光寺1701蘭。」

「認証完了、第3警報を発令します。」

斎宮全体に響き渡る警報。

「宿直に連絡してご当代をお起こし願って。」

「とはいえあの御方ならとっくに準備してるでしょうけど。」

口の中でそう呟きながら持光寺は部下の舎人ともに奥の院を目指していった。


斎宮 斎王(さいおう) 寝所(しんしょ)

 斎宮に警報が鳴り響いたのその瞬間、斎王はすぐに寝所から起きて、奥の院の方向へ短く何かを唱え柏手を2回鋭く打った。

「ご当代様、お目覚めですか」

と斎王寝所の警護担当の舎人たちが声をかけた時には手早く着替えを済ませていた。

斎王(さいおう)凛子りんし』第253代斎王として3年前よりこの斎宮の主である。

三木(みき)さん、急いで、私の戦装束を。奥の院へは誰か行ってくれてますか?」

緊張した様子の三木(みき)頼子(よりこ)が答える。

「はい、連絡によると警邏所に詰めていた5番隊長持光寺以下数名が急行したそうです。」

「そう。」

それを聞いた斎王は短く応え、心持ち首をかしげ少しだけ考えてから、

「三木さん、菊一文字(きくいちもんじ)を。それから誰かに先代と先々代の所に行ってもらって私のかわりに斎宮本庁の指揮をとってもらうために本部に来てもらって下さい。」

「ご当代様、それは…」

と三木が青ざめた顔で斎王へ言いかけると 

「そう、私も今から奥の院へ向かいます。だから急いでくださいね。三木さん。」

三木に斎王は微笑みかけてから寝所を出ながら

「斎式支援システム、クサナギ起動」

と手首に付けたバンドに向かって呟いた。


第3警報発令直後 斎宮内にある川紀田煌の自宅。舎人第3番隊隊長である川紀田煌は第3警報が発令された時、自室で「斎式実則(じっそく)」を読んでいた。

「斎式」今から700年前の南北朝時代と言われている戦乱に南朝方(なんちょうがた)の神職であった鎚御門鵺(つちみかどこう)祝詞(のりと)の短縮化と柏手の組み合わせで様々な効果を出すことができる「神術(しんじゅつ)」としての「斎式」を考案。以来、この世界では「斎式」は日常の生活の中で使われるようになった。だが、戦闘用の斎式だけは「禁術(きんじゅつ)」として日本では舎人と自衛隊の特務部隊のみ使用が認められているに過ぎない。「斎式実則」はその「斎式」を考案した鎚御門鵺が著したとされている書のひとつで「斎式」と「命力(みことぢから)」の関係、「祝詞」の短縮化と柏手についてが主な内容である。

「結局のところ斎式の効果は命力に左右されるということなのかなぁ」

と読みながら考えていた所へ携帯端末が鳴り響いた。

「隊長、起きていらっしゃいますか?」

と副長の沖田(おきた)(そう)が端末のモニターで出る。

「起きてます。これは第3警報ですか?」

「はい。我が隊も出動命令がでました。お支度を」

煌は椅子から立ち上がりながら

「承知しました。隊の配置については?」

「異変があったとされている奥の院周辺をとのことでした。」

「わかりました。」

「それから全員、戦支度(いくさじたく)でとのことです。」

煌は一瞬、端末を切ろうとする手を止めたがすぐに

「承知、5分後に。」

と答えて端末を切る。煌はすぐに自室に出て、玄関に向かった。すると廊下で母美智子(みちこ)が待っていた。

「煌さん、出かける前に父様のところへ。」

「母様、急ぎます。」

と煌は横を通り抜けようとしたが

「承知しています。ならばこそです。」



半ば強引に、父の待つの居間へ連れて行く。居間では煌の父、(いわお)が待っていた。

「父様」

「第3警報だな。只事ではないこと、承知している。ついては虎鉄(こてつ)を持っていきなさい。」

美智子が奥より「虎鉄」と名のついた白鞘(しろざや)に納まった刀を持ってきて煌の前に置く。

「ありがとうございます。しかし、急ぎますのでこれにて。」

と目の前の「虎鉄」を掴んで、はやくも立ち上りかけたところで

「この度の件、必要であれば魂刻斬(こんこくざん)を使うこと許す。」

と、巌は声をかけた。居間から出ていこうした煌の動きが一瞬止まって背中越しに

「承知しました。」

とだけ答え、家の前に出た。

「縮地」と短く唱えて柏手、一瞬で姿が消える。向かうは斎宮、奥の院。


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