桃太郎
森のくまさんとおんなじジャンル。
昔々。
あるところに。
おじいさんとおばあさんがおったと。
おじいさんとおばあさんとの間には子供はおらず。
二人とも、子供は特にいらないと思ってきた。
厳密にいえば――昔は欲しかったが、二人の人柄がいいと、そこに付け込む輩が現れた。
――。もうお分かりいただけただろう。
お金を吸い取られ、その影響もあってか、いつからか子供が欲しいが、いてもいいへと変わっていった。
いてもいなくても、どちらでもいい。それだけの認識。
そんなある日。
神の気まぐれ。そんな言葉がとても合う出来事が、二人の身に起こった。
川上から、子供が流れてきた。
どんぶらこ、などの勢いではなかったが。
ゆったり流れてきたその子供を、二人が見逃せるわけもなく。
その、正体不明な子供は――二人の子供となった。
そこからは至極平凡な時間が流れていった。
とても速く。思い出が更新されていく。幸せ真っ只中。
そんなある日。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に。
桃太郎は――一人、留守番することになった。
留守番で暇をしていた桃太郎は、暇を潰してくれる人も、友達もいなかったため、少し寝ることにした。
それから。何時間かが経過した頃。
ふと、桃太郎は起きて、周囲を見渡した。
そこには――誰もいなかった。
暗くなってきたのに。
どういうことかと、外へと出た桃太郎。
しかし、やはり、誰の姿も見えない。
目の錯覚などでは、断じてない。
そして、桃太郎は、外に出て言葉を失った。
全てが――赤に染まって。
人も。
建物も。
全てが赤く、鉄臭かった。
それを見た桃太郎は――立ってなどいられなかった。
――親はどこに……。
それは、桃太郎を立たせるだけの力があり、そして。
絶望させるだけの力をも、持ち合わせていた。
――鬼が、いた。
見たことのある、ずっとそばにいてくれたはずの、シルエットを。赤くなったシルエットを片手にぶら下げた、鬼がいた。
口から赤を流し、桃太郎を見下し――よだれをすすり。
赤が、視界に広まっていく。
体が赤に染まっていく。
痛みが広がる。そして。
命の終わりが――聞こえる。
耳の隣で、うるさく鳴り響く。
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