エピソード1‐3 物語はかくしてはじまる
都市・エヴェロヒカは世界でも有数の大規模都市だ。
一般的にエヴェロヒカと言えば都市中心部である四つの区画からなる部分を指す。東西南北に区分けされるが、多少の違いはあれど住む人種が違ったり文化が大きく違ったりということはない。
また、その東西南北に分けられた区画より外にも小規模な集落は存在し、その近くには砦や外壁なども点在する。
どうしてそんなものが存在するのか。それは端的に言ってしまえば『厄災』の折に世界にばら撒かれた脅威が外の世界にはいまだ存在するからである。
閑話休題。
そんな広大なエヴェロヒカの象徴とも言えるのが、都市中枢にそびえる巨大な建物、都市が誇る最大規模の教育機関、都立学院エヴェロヒカである。
都市の名を冠するその学院は、ただ子供を大人へと育てる為の一般的な学校とは少々毛色が違う。
かの『厄災』が残した傷跡はあまりに深く、そして痛ましいものだった。
多くの命が理不尽にも奪われ、生き残った者達は不条理に嘆き、その苦しみを今も抱えて生きている。
それはもう変えることが出来ない、過去の話だ。
現在は、そんなことがあっても立ち上がり、歩き始めた人々の強さにより、都市は復興した。
だが、一度退けた脅威は、完全に去ったわけではないことを人々は知っている。
もう二度と、あの悲劇は繰り返すまい。その想いから、未来を守る為に作られたもの。
それが都立学院エヴェロヒカだった。