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孤道  作者: SHIBAKU
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唐突に角谷零は問いかける

これはある少年の、誰にも届かない独白だ。

 汝に問う。友情とはなんぞや?

 共に行動することが友情か?一緒に遊ぶことが友情か?

 毎日の様に集い、騒がしくし、辛ければ慰め合う。それが友情か?

 この問いに何のてらいもなくYESと答えた人間は、きっと尊敬に値するだろう。よくもまぁ、他者を無条件に信用できるな、と。

 果たしてこの問いにどれ程の人が悩むのかは解らない。ただ、多少なり友人関係で失敗した人間ならば、どこかしらに違和感を感じたのでは無いだろうか。

 何にせよ、俺はこの問いに即答できる人間だ。

 すなわち、「友情とはその時その時を自分自身が快適に過ごすために設ける極めて利己的な関係性の事であり、それ故に流動的な存在である」と。

 まぁ今の説明では解らなかった方が多いだろう。

 だから、簡潔に言うとこうだ。

「うわべだけの薄っぺらい関係、それこそが友情」

 何だこいつ性格悪いなと思われるかもだが、こんな所で思考を休めてはいけない。突き詰めて考えていこう。

 まず、君達は三年前の友達を思い描いてほしい。毎日の様に顔を合わせて、特に意味もなく戯れていた、そんな仲間たちを。

 さて、その中の何人と現在も同じような友情を持っているだろうか。きっと意外に少ないなと感じることだろう。

 おそらく、彼らとの間柄が悪くなった訳では無いのだろう。出会ったら挨拶もするだろうし、再び別の環境で遭遇すれば、またつるみ出すかもしれない。

 それでも無理やり会いにはいかないだろうし、少しずつ、少しずつだが絆の強さは減退していく。

 人はこういう関係の事を旧友と呼ぶのではなかろうか。

 勿論、長きにわたって持続される友情関係もあるだろうし、一生涯の友人というのも存在するかもしれない。

 しかし、それはきっと一握りだ。

 三年という月日は、体感以上に長い物である。時が経ちふと周りを見渡せば、そこには去年とは違う顔ぶれ。案外そんなものだろう。

 これが、友情とは一時的に密接になる関係を指すことの証明であり、俺が流動的と表現した理由でもある。

 では、いずれは離れゆく友人を人は何ゆえ作りたがるのか。

 よく考えてみれば結論は出るだろう。

 それは友達という存在が、自分が心地よく過ごす為に必要だと思ったからだ。

「友達と遊んで楽しかった!」

  誰が楽しかったかと言えばそれは自分自身だろう。

  極論を言えば、友達という概念は自分自身の為に設けられるという事だ。自分がその時々を楽しく過ごす為に、共に盛り上がれる誰かを側に置いておくのだ。

 これこそが、俺が友情を利己的と解釈している由縁である。

 つまり、友人が自分の為の存在ならば、気の合う相手なら誰でも良いということになる。そしてそれは相手にとっても同じ事だ。

 気の合う者同士が、互いに己の為に付き合う。まさに利害の一致だ。ウィンウィンの関係と言っても良いかもしれない。

 しかし、そんな関係を気持ち悪く感じてしまうのは俺だけだろうか。

 俺は、あれだけ仲良さげな連中が、深層心理では打算で群れているなんて思うと寒気を覚える。

 なんと言うか、純粋に恐ろしい。

 必要な時だけ求め、不要になれば切り捨てる。そして自分もまた求められ、いずれ切り捨てられるのだ。

 だから俺は友情を美しい物だとは考えない。むしろ唾棄すべき物だとすら思っている。

 心の奥底から真に互いを理解しあい、いつまでも消えない関係性。この共生共存の関係こそが本物であり、真に憧れるべき対象ではないか。そう思える。

 だから俺は今自分自身が置かれている立場、「孤独」を悪く思っていない。

 薄ら寒い偽物の関係を無理やりにも作るくらいならば、俺は一人で良い。

 さて。

 議論は決したようだ。少し考えすぎたせいで頭がクラクラする。糖分が足りない。

 俺は糖分を摂取すべくたちあがると、MAXコーヒーを飲む為に冷蔵庫に向かった。

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