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第一章 月世界へようこそ
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高校デビュー。少年にとって、それは甘美な響きであった。
その第一日目がまさにはじまろうと目を輝かせながら自転車を漕いで、河川敷を風のように駆けていく。
中学の時は目つきが悪いせいで友人は少なく、不良に絡まれそうになることもしばしばあった。だが、高校にあがるにあたって少年は秘策を思いついた。
伊達メガネである。
たまたま中古ショップで買った伊達メガネであったが、そこで彼はこの案を思いついたのであった。
かくして意気揚々な彼は近道をしてやろうと高架下の人が二人並んで通れるくらいしかないトンネルをくぐろうとする。
物語はまさにここからはじまったのである。