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いちわ

【ーーー辺りは白く染まり、前世の記憶を呼び覚ますーーー】



===◆===◆===



俺は永遠にも感じた夜を超え、走馬灯にケリをつけた。

三文劇場を見た後の怠慢感が残るbrainに状況を理解させる。

藁で囲まれた馬小屋…まさかここが家か。

冗談じゃない。何が目的の達成に適した環境だ、スラムにでも放り込まれたんじゃねぇか。

そう思う程に劣悪な小屋の壁の隙間から冬の凍てつく息吹が入り込む。

纏う布は一枚。荒く縫い付けたそれは僅かにしか体を守ろうとしない。

外は未だwhiteな月を写す。

だが、俺のど真ん中は既に空腹の音をつたえていた。

満足な食事は期待していない、暫く耐えてやるつもりだ。

たとえどんな地獄でも、一度言った事は出来るだけ曲げない様に善処する。

時を戻されたかの様に小さくなった体を、切られなかったのか伸びきった髪で包み、coldな風をしのぐ。








月の色が変わる頃、父親らしき男が小屋ーーーもとい家にやって来た。ただし、酷く酔い潰れて。そしていきなり、ーーーーー俺を蹴った。

「あぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ~らぁぁぁぁあぁぁふっへっへ・・・」

そのまま藁の絨毯に倒れ込み、いびきをかき寝てしまった。

体の上部にcriticalな一撃を喰らい、俺の意識は劇場に招待された。




===◆===◆===



朝起きた時には頭に包帯が巻かれていた。薬とかって貴重じゃないのか。

が、どうやらただの布の様だ。

止血にはなっているが。

父親が気付き話し掛けて来た。

「・・・飯を食え」

これに僕は頷く事で了承の意を伝える。

すると、稗や粟の上に少しの青菜と干し魚を湯戻しした物の乗った粥の様な物を机(と言っても板だか)に乗せ「食え」と言う。

とりあえず手を合わせてからがっつく。以外と量があるが、少し薄味だった。

塩気を残した魚は僅かな穀物を彩り、青菜の様な何かは魚の臭みを消していた。

しかし、穀物も硬さは少し他の食材の良さを抑えてしまっている。


父親は、何も食べない。食べるものがないのかもしれない。

食事中何も喋っていない父親だったが、loveを感じる味だった。と思った。


「夜、済まなかった。頭、痛むか?」


と、淡々と語る。酔うと性格が変わるtypeか。

そう思い顔を上げると声色とは裏腹に今にも泣きそうな顔をしていた。

声を掛けられなかった。

今慰めのserifを投げればボロが出る。

だから俺は黙った。ただ、そうする他なかった。

父親は、割と優しかった。




▽▽▽


月が黄色く染まりきり、星のaccentを散りばめられたNight。

父親は優しく語りかけた。


「今日はぐっすり寝るといい。

明日のご飯は昨日より良いものにするから」


そう語る男の目は哀しみの水で溢れていた。

しかし、どこか俺はその目にdéjà vu を感じていた。

まるで…それは…誰だったか。



そう、俺自身だ。

最後の夜、水溜り越しに見た俺の目。

子供の様にはしゃぐdreamと、真っ直ぐ決めた決意の眼。

懐かしい感覚と共に、早々に起きそうな別れに身を固まらせる。

だが、今の俺には流れに逆らう力はない。

父親の言葉を信じ、それがlastwordにならない事を願い。

首を小さく振り、肯定の意思を示す。


「暖かくして寝るんだよ。

毛布は剥がない様にな」


薄い布団と毛布という名のボロ切れに身を任せながら、また一つ悩みを抱える。

意識は三度目の暗闇に落とされる。





▽▽▽



瞼に差し込むshineに焼かれる様な錯覚を覚える。

耳に入る貪る様なペンの音、父親は手紙を書いていた。

俺が起きた事に気付き、顔を悲しみに歪める。

バツの悪い…とかそんなものではない。

俺は書きかけのletterに目を通す。

しかし、ここで問題が発生した。

文字が読めないのだ。決して比喩ではない。

漢字やEnglishと違うのは間違いないのだが、俺はこれに近い文字を知らない。

象形文字とも違う…これは英語に近い派生をした文字だろう。

少し背伸びしてこっぱずかしいが、読めない意思表示をする為に手紙を押し返す。


「そうか、だよなぁ。読めないのに何書いてんだか。

ここにはな、俺が…出て行くって書いてあるんだ。

お金は置いてく。生活に不自由しない様に俺が昔もらったアトリエもやる。

だから…どうか俺に夢を追わせてくれ」


言っている意味が分からなかった。どこかに行くのなら俺を連れて行けばいいし、仕事に就くのならここを出ていく必要は無いだろう。

だが、その後ろを覗く男から出る雰囲気や服装から、その夢は堅気のWorldでは叶えられないものだと理解した。

軽めの革鎧、薄汚いブーツ、そして鈍い光を覗かせる剣。

おそらく自警団か何かに入るのだと思った。


「俺は、冒険者になるんだ。そして、手柄を上げて騎士になりたいんだ。だが、平民が騎士になるには資格がいる。

次の魔物の定期討伐に参加して、その資格を掴み取ってやる。

でも、帰ってこれるかは分からない。だからお前をアトリエに置こうと思ってたんだ」


冒険者…魔物…少し理解に苦しむものだ。

冒険者とはよく探検家などと同一に考えられていたが、実態は墓荒らしだったと聞いている。

そして魔物、おそらく害獣あたりを指しているのだろう。

しかし、猪や鳥程度なら明らかに一般人でも追い払える。

わざわざ人を収集し、定期的に討伐する必要があるだろうか。


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