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平等世界

作者: 九尾

もしかしたら、似たような作品があるかもしれませんが、なにかに影響を受けて書いた作品ではないのでご容赦を。

光と闇。

善と悪。

そして、幸福と不幸。

これらは相対する。どちらかを知れば片方も知ることになる、この世の概念だ。どちらかがなくなればもう片方も消滅する、二者一体の存在だ。

しかし、人は二者一体の闇を拒絶する。

この世が平等になりますように。

この世に不幸がなくなりますように。

善人たちは神に祈るだろう。

それは確かに、綺麗な願いだ。

万象幸せたれ。神よ皆すべからく救いたまへ。その善人たちはきっと心の底よりそれを願っているし、まさに聖人と言えるような精神を持ち合わせているだろう。

けれど、皆が幸せになるということは、不幸がなくなるということは、一体何を指すだろう。


ここに、誰もが不幸にならない平等な世界があったとする。

その世界は平等だ。

生まれた時より、容姿に何一つ差別はない。

皆すべからく同じ顔。皆すべからく同じ体格、同じ体力を持ち同じ筋力を持ち同じ学力を持つ。故に、身体障害は許されない。

その世界は平等だ。

幼児とその親は、公園へ足を運ぶグループが決められ、そこで毎日同じ面子で、同じ遊びをし、同じ時間に帰ることだろう。故に、帰りたくないなどというわがままは許されない。

その世界は平等だ。

数が均等に割り振られた保育園に、残らず預けられるだろう。平等にするため折り紙、砂場などの遊びはグループに割り振られ、決まった時間でのみ遊ぶことができる。故に、ほんの一秒の延長も許されない、でなくば平等なりゆえぬから。

その世界は平等だ。

やはり数が均等に割り振られた学校に、同じ人口密度の部屋で勉学に励むことだろう。席は当然、毎日入れ替えられる。掃除も何もかも、すべてを皆が平等に行い、定められる勉強時間も、また学力でさえも平等だ。故に、善し悪しに関係なく学力が皆と異なるものは許されない。

その世界は平等だ。

ひとつの職にとどまれる者などいない。日々己の職場は変化し、平等に皆で回していく。年功序列の世界で、年老いるごとに仕事が変わる。故に、己の目標など何もない。

恋などしない。愛などない。皆が平等であるのだから『好き』という概念が存在しないため、やりたいこともなにもなく、ただ新しい命を生むために今を生きる。不幸が無くなる代わり、幸福さえもが消え去った。

それも当然か。皆が同じことを行い、同じ結果になることが平等であるのだから、何をしたところで結果は同じ。『当たり前』しかその世界には存在しないのだから、そこのどこに幸福が存在するというのか。

勉強も。睡眠も。趣味も仕事も、精神的な全ては意図しないところで決められる。イレギュラーは排斥されるのだから、排斥される恐怖と隣り合わせで皆と同じになるため必死になるだろう。もっといえば、思考方法も、生まれ持つ肉体も、顔も肉体的な全ても決められる。ありとあらゆる全てが平等という鎖に縛られ、いつまでもそこから抜け出せない。もしかしたら、文明など発展すらしないかもしれない。

誰もが同じ年に結婚する。誰もが同じ年に子を産み、誰もが同じ年死ぬ。

それこそが、真の平等ではないだろうか。

同じ思考、同じ行動、同じ未来。そして親の辿る未来が子供の自分も歩むと知ったとき、その子は己の人生の末路を知る。

個性を奪われ、既に個はなく、個は全となる究極の大衆社会。はみ出たものは排斥され、その世界平等を貫いていく。

真の平等とはこういうものだ。故に、我らは個性を望む。

己が己たりえる理由を求める。生きる意味を求める。己の存在意義に、意味を求める。


就活したくない。

どうして人は働くのだろう。

自分の存在意義がわからない。何をするために生まれたのか、なぜ人は生きるのか。すべてが平等であれば、何も考えず生きられるのに。

それを前々から考えていたわけですが、究極的な平等とは何かを考えたとき、面白い世界観だなぁと思って書き起こしてみました。

お気に召されたのなら幸いです。

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