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3、スターを探せ(4)


 翌朝、我妻が運転する車が早瀬舞子の住むマンションから少し離れたところに停まっていた。

 しばらくすると早瀬舞子が大きなサングラスをかけて現れ、我妻の車の後部座席へと乗り込んだ。

「わざわざ車まで用意してもらってすみません」

「いや、こちらこそ急に時間をずらしてもらって申し訳ない」

「頑張ってくださいね」

 窓の外から笑顔で見送る優花を見て早瀬舞子は少し不服そうな表情を浮かべる。

「あなたは来ないの?」

「ごめんなさい、今日は別にやらなければいけないことがあるんです。応援してますからね」

「ふぅん、まぁしょうがないわね…あなたもずっと警備してくれてたんだってね、ありがとう学生さん」

「あ、いや、俺はまだ何も」

「明人」

 優花が明人の上着の袖を引きながら言ったので明人はそこで口をつぐむ。

「じゃあ出発しますよ早瀬さん」

 我妻は窓を閉めてから車を発進させ、明人と優花がそれを見送った。

 車が角を曲がって見えなくなってから、二人は揃って早瀬舞子のマンションまで戻る。


 少し待っているとマンションの駐車場に一台の車が止まり、明人たちの前に運転手が現れた。

「あっ、これはおはようございます!おや、我妻さんはいらっしゃらないんですね?」

「おはようございます、千歳さん。我妻でしたら早瀬さんを会場まで送りにいきました」

 優花が微笑みながら言うと千歳の眉間に一瞬しわがよったが、すぐにいつもの愛想の良い顔つきに戻った。

「なんと!そこまでしていただいてありがたい限りです!では私もオーディションを見に行ってくるとします」

「なぜあんな手紙を出したのですか?」

 優花の質問に運転席に乗り込みかけた千歳がぴたりと止まる。

「おっしゃる意味が分かりませんねぇ。まさか貴女は私が例の手紙の差出人だと言うんですか?」

「もう小芝居は結構です、千歳さん」

 優花が車の前に立ちはだかるのを見て、千歳はやれやれといった顔で車から下りてドアを閉めた。

「どうして分かったんですか?」

 そう質問してきた千歳の目は先ほどとはまったく異なり冷たく鋭い。

「昨日の攻撃です。それで今回のプロフェットがアストラルだと分かりました。まず、星加さんは別の事務所に所属していて早瀬さんの家を教えるほどの仲ではないと聞いていたので除外しました。北斗さんが今回のオーディションに抱いている感情は希望というより情熱が合っているように思えました。残っているのは千歳さんしかいませんでした」

「何より、ここに来たことが一番の証拠なんです。大人しくアストラルのカードを渡してくれませんか?」

「いやいや、昨日のは焦りすぎでしたか」

 千歳は大きなため息をつきながら懐から一枚のカードを取り出した。

「私はね、事務所をもっと大きくしたい。早瀬のおかげでここまで来ましたが、人気者が一人ではいずれ流行りが過ぎる。この先のためにも、北斗にも事務所の看板になってもらわなきゃ困るんですよ!」

 千歳がカードを自分の胸に押し当てると体が灰色の怪人へと変わっていった。

 アストラルは女性的なフォルムのプロフェットで、頭上には一際大きな星を中心にいくつもの小さな星が輝きながら回っている。

「大人の事情があることも分かります。でも…目標に、夢に向かって進んでいる人の背中を押してあげるのが人です!」

「会長、あなたの依頼はきっちり果たします。変身!」

『Release』

 941と打ち込みベルトを呼び出すと、明人はスマートフォンをスロットに差し込み前へとスライドさせる。

 青白い光の扉を通り抜けて姿を現したクスィーは右手を軽く振ってからアストラルに駆け寄った。

 アストラルが前に向かって手をかざすと、頭上の小さな星がクスィーめがけて降ってくる。

 その様はまさに降り注ぐ流星群で、ほとんどがクスィーに直撃した。

 よろけるクスィーに向かって残りの星が光の尾を引きながら襲ってきて、躱わそうと体をひねったクスィーの籠手や胸当てに何発か当たって火花を散らした。

 

「明人!」

「ちっ、とりあえず使ってみるか」

 地面に膝をついたままクスィーがベルトのスマートフォンをフリックすると画面がくるくると変わり、教皇が表示された時に画面をタップした。

『Realise Hierophant…Privilege!』

 電子音声と共にクスィーの足元から杖が現れ、引き抜くとその先端には十字架がついている。

 クスィーが杖を掲げると、すかさずアストラルが流星を放った。

 星々がまたもクスィーの全身を打ち、たたらを踏んでいるクスィーにアストラルが殴りかかってくる。

 アストラルのパンチをクスィーが杖で受け止めると、杖はそのまま真っ二つに折れてしまった。

「うそっ!分身とか出てくるんじゃないのこれ!」

 クスィーの裏拳がアストラルの顔面に入り、よろめいたアストラルに向かってクスィーは折れた杖を投げつける。

「プロフェットの解釈や能力をよく分からないで使ったらダメですよ!」

「優花、そういうことは早めに言って、よっ!」

 十字架がついた側の杖が直撃して後退するアストラルにクスィーが追い打ちとばかりに右左とパンチを浴びせかけた。

 苦し紛れに放たれた流星をクスィーが飛びすさり躱している間に、アストラルはクスィーとの距離をとって体勢を整える。

『私は…私は、もっと、もっともっと上へ行きたいんだぁぁ!』

 アストラルの雄叫びと共に頭上の星の数が増えていき、クスィーも再び画面をフリックする。

『邪魔は…させない!』

 アストラルが星を落とそうと構えた時に、クスィーはスマートフォンをタップする。

『Realise Chariot …Sonic!』

 アストラルの星が降りだすのと同時に電子音声がカウントを始める。

 クスィーは押し寄せてくる流星の中を素早く動いて通り抜けると、アストラルの顔面に思いきりアッパーを入れ、そのまま体をひねって蹴りとばしてから画面に触れた。

『Execution!』

 地面に倒れ転がるアストラルの方へクスィーが走り、踏み切る。

 空中で急加速したクスィーの跳び蹴りがアストラルの胸部に入り、クスィーが着地するとアストラルの灰色の体が崩れていった。


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