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第6話 ブラックシャドウ

【魔力枯渇により、あなたは昏睡状態に陥りました】

【ゲーム内時間で約3時間後に覚醒する見込みです】

「はぁ……ゲーム始めて早々、気絶かよ」

「どうすっかな。真っ暗で身動きも取れないし、一旦ログアウトして待つか」


「カチャ」という軽い音を立て、生命維持ポッドのキャノピーが開いた。九条はヘッドギアを外し、身体を起こす。時計を見ると、現実世界ではまだ20分しか経っていなかった。

 ゲーム内では、既に一時間近くが経過しているはずだ。

 九条も聞いていた。『ガイア・クロニクル』の神経接続による思考加速技術は、本物の最先端技術だ。遥か昔、軍隊が兵士の訓練に用いていた代物だとか。


 先の戦いの余韻(よいん)がまだ残っている。一瞬、これがゲームだということを忘れさせる、生死を賭けた真剣勝負だった。一歩間違えば、あの黒豹に引き裂かれていたかもしれない。

「木の杖一本で、どうやって黒豹にトドメを刺せってんだ……。それにあの裂け目、間違いなく空間魔法だよな?」

 九条が偶然にも黒豹の魔法詠唱を妨害し、自ら空間の裂け目を開いた時、あの「感触」は非常に奇妙なものだった。強いて例えるなら、星空に手を伸ばそうとしたら、本来届くはずのない万物が掻き乱され、自分の手さえも星々の一部に変わってしまうような――神秘的で、現実世界の人間の知覚を遥かに超えた感覚。


 彼は本来、攻略情報は見ずに、純粋にゲームを体験するつもりだった。だが、先ほどの遭遇はあまりにも彼の好奇心を刺激した。少しだけ葛藤した後、彼は結局インターネットで情報を漁り始めた。「空間魔法」「黒豹」「ブラックホール」「転移する黒豹」、思いつく限りのキーワードで検索し、それなりの収穫を得た。


 空間魔法は非常に希少で、習得も極めて困難。有名な空間魔導師としては、地獄サーバー(第二サーバー)の【マルチバース探求者】と、覇権戦争サーバー(第五サーバー)の【グリフィス】がいるらしい。

 二人とも圧倒的な実力者で、かの【マルチバース探求者】に至っては、サーバーが地獄と化した元凶の一人だという。彼らの活躍を見るに、空間魔法の用途は戦闘、移動、生活、チーム支援と、まさに万能だった。


 九条が選んだのは、三ヶ月ほど前、一年ぶりに新しくオープンした第十サーバーだ。まだ時間が短いため、サーバーは大きな変化を遂げておらず、通称「新世界サーバー」と呼ばれている。

 黒豹に関しても、いくつかの目撃情報はあったが、確定的なモンスターデータは存在しなかった。ネット民が付けた呼び名は、やけに格好いい。「ブラックシャドウ」


「現れたり消えたり、とにかく速い」

「この前、俺ら4人パーティが遭遇して全滅した……」

「デカいし、空間魔法を間断なく使ってくる」

 ...?

 九条は首を傾げた。「いや、待てよ。確かに強かったけど、彼らが言うほどじゃなかったぞ?」

「背ビレが生えてる……?」

 ますます奇妙だ。彼が戦ったあの黒豹は、どこからどう見てもただの黒豹で、特別な特徴など何もなかったはずだ。

「きっと、話題にする価値もない亜種か何かだったんだろう」と九条は結論付けた。そうでなければ、ネットの噂通りなら、とっくに一撃でやられていたはずだ。

 ――あるいは、幼体だったとか。


「フラグなんか立てないぞ。この流れだと、絶対あの黒豹に追いかけ回されるパターンだ!」

「やられる前に、やる――と、ある偉人は言った」。九条の顔に黒い影が落ち、殺意に満ちた目で生命維持ポッドを睨みつけた。

 だが、「狂想の主」はまだ昏睡状態だ。仕方なく、彼は次の戦いに備えて、何か食べるものを買いに出かけ、頭を空っぽにすることにした。

 

 九条は数分前にゲームに再ログインした。キャラクターは案の定、まだ昏睡状態だった。目の前は真っ暗で、体は動かせない。操作パネルを意味もなくいじって時間を潰す。

「やっちまう、なんて言ったものの、杖も無くなったし、このメイジの貧弱な身体でどうやって倒すんだか」

 まるで、杖さえあれば黒豹を殴り殺せるとでも言いたげな口ぶりだ。

「その辺の枝でも拾うか……。よく考えたら、俺の今の状況ってめちゃくちゃヤバくないか?」

「魔法だ!やっぱり魔法しかない!」

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