第5話 運命の遭遇
見渡すと、茂みが僅かに揺れ、薄暗い影の中で何かが凶悪に光っている。
次の瞬間、一頭の黒い獣が茂みから飛び出し、鋭い牙を剥いて九条の首筋に襲いかかってきた!
九条は両手で杖を握りしめ、バットを振るように腰を捻って一閃。魔力伝導のために太く作られた杖の先端が、獣の右顎を強かに打ち据える。勢いを削がれた獣は、彼の脇をすり抜けていった。
目を凝らしてみると、それは九条とさほど変わらない体躯の黒豹だった。息つく暇も与えず、九条は一歩踏み込み、黒豹の頸椎めがけて杖を振り下ろそうとする。だが刹那、「ヴン」という音と共に、地面に黒い円形のゲートが出現した。黒豹は素早くその中に飛び込み、杖はゲートに消えきる直前の尻を叩くだけに終わる。転移門はすぐに消滅した。
九条は考える間もなく、再び杖を構え、背後へ向かって大回転打ちを放つ。それは寸分違わず、既に彼の背後の空中に現れていた黒豹の左顎を捉え、黒豹を空中で転がらせ、地面に叩きつけた。
黒豹はもはや起き上がらず、顎が外れ、無様な格好で四肢を天に向けたまま、九条を睨みつけている。
今度は九条が困った。この大猫、仰向けになられると、とどめを刺しづらい。
一人と一匹は、互いを睨み合ったまま、その場で膠着した。
「魔法だ、魔法が必要だ!」九条は心の中で叫んだ。
すぐさま、この生死を賭けた睨み合いの最中に、杖を振り回してみたり、筋肉に力を込めてみたりと、魔力を引き出そうと悪あがきを始めた。
集中して内なる魔力を感じ取るべきなのは分かっている。だが、この状況でどうやって集中しろというのか?
黒豹も野性の本能で、九条の心の迷いを嗅ぎ取ったのか、警戒しながらゆっくりと身を起こし、一歩、また一歩と後ずさり始めた。
九条には、黒豹に致命傷を与えられる確証がない。思えば、背後への一撃も運が良かっただけだ。
もし奴がもう一度空間転移を使えば、今度こそ命はないだろう。それでも彼は気迫を保ち、間合いを詰め、獣に隙を見せまいとじりじりと前進した。
黒豹は二度の痛打に怯んだのか、獰猛な顔つきとは裏腹に、それ以上攻撃の姿勢は見せなかった。
巨大な岩を背にするまで追い詰められた黒豹は、後脚で地面を強く蹴り、九条に威嚇の咆哮を放った。
九条も退かない。彼もまた構えを取り、黒豹に向かって叫び返した。「へあっ!来いよ、子猫ちゃん!」
咆哮と共に、黒豹は四肢に猛然と力を込め、天高く跳躍し、鋭い爪を振りかざした。
九条は好機と見て前に踏み込み、杖を逆手に持ち替え、杖の先端を地面に突き立て、細い柄の端で黒豹の腹を貫こうと運任せの一撃を繰り出す。
次の瞬間、「ヴン」という音。
再び空間が黒い裂け目を引き裂き、黒豹はその中へ一直線に飛び込んでいく!九条は心中で驚愕した。「まずい!」
電光石火の間、九条は無理やり意識を自身の内側へと向けた。わずか十五分前の、あの魔力の流れの記憶だけを頼りに、精神が魔力と肉体を引っ張るような感覚で、黒い裂け目の方へと押し出した。そして、必死に杖を構え、裂け目に接近する。
奇妙なことが起こった。黒い裂け目は突如として不安定になり、収縮を繰り返す。周囲の空気と塵が、狂ったように裂け目へと吸い込まれていく。そして裂け目は唐突に閉じ、ゲートに収まりきらなかった黒豹の尻尾の先を、ぷっつりと断ち切った。
だが、それで終わりではなかった。
裂け目が閉じたその瞬間、魔杖の先端にも黒い裂け目が生まれ、強力な引力が九条を飲み込もうと引きずり込む。
九条は即座に右手を離し、杖が裂け目に消えるに任せた。
強烈な眩暈が襲い、視界が霞んで倒れそうになるが、なんとか片膝をついてこらえた。
裂け目から脱出した黒豹が森の奥へと逃げていくのを見届けると、彼はまるで糸の切れた人形のように、意識を失って後ろへと倒れ込んだ。
第5話、ついに皆様に胸躍る戦闘シーンをお届けすることができましたが、ここまでの展開はいかがでしたでしょうか。
九条の冒険は、これからも思いもよらない出来事が次々と待ち受けています。
どうか今後の物語にもご期待ください。もしよろしければ、ブックマークや感想などをいただけますと、それが私にとって最高の励みとなります!




