第21話 感動の再会
空間魔法暴走中心部
光線の偏折から魔法の暴走まで、わずか二秒足らず。
九条は迷うことなく踵を返し、黒焦げになった足を引きずり、長槍を杖代わりにして脱出を図った。
奇妙なことに、九条は裂け目の予兆を感じ取れるようになっていた。
空気が異様に震えた瞬間、彼は本能的に頭を下げると、漆黒の細い線が頭皮すれすれを走り、髪の毛を数本切り飛ばした。続いて無様に横へ転がり、腰の横で突然開いた半メートルほどの裂け目を回避する。
九条は逃げながらも、必死に地面を這いずるシューさんや、早々に消え失せた俺様最強卍への挑発を忘れなかった。「ハハハハハ!その程度で強盗だと?出直してこい!お前ら、よーく……おっと!」言葉の途中で彼の目の前に再び裂け目が現れたが、予感が働いてサイドステップでかわす。
「お前ら、よーく覚えておけ!今日お前らを倒したのは、空間の大魔法使い――『狂想の主』様だ!ハハハハハ!」
あの二人がどれだけ新人をカモにしてきたのかは知らないが、特にあの俺様最強卍、最初の一撃を防いだのは相当レアな身代わりアイテムだろう。あいつも運が悪かったな。俺も死ぬかと思ったが、あの円盤がまさか魔晶石の起爆剤になるとは!因果応報ってやつだ!
空間の嵐が荒れ狂う中、九条は足を引きずりながら右へ左へと回避を続ける。一度反応が遅れれば即死という状況下で、彼はなぜか興奮し、この混沌を楽しんでさえいた。
「残念ながら装備は全部虚空の彼方だ!誰も拾えねえぞ!アハハハハ!」
よろめきながら6、70メートルほど走ると、空間魔法の余波が弱まり始めた。
少し歩を緩め、息を整えようとしたその時、心臓が早鐘を打った。
その時のことだった。
左上空の空気が突然歪み、新たな裂け目が――今度は規則的な形の裂け目が開いた。黒い影が虚空から躍り出る。その巨躯が太陽を遮り、逆光がその輪郭を巨大に映し出す。暴走する空間の嵐の中で、それは全てを破壊する黒い稲妻のようだった。
刹那、九条が見上げた先で、氷のような冷徹な瞳と視線が交錯した。
琥珀色の瞳には、狩人の殺意が宿っている。時間が無限に引き延ばされたような一瞬、九条は黒豹の口元にこびりついた乾いた血痕さえも視認した。
終わった。
戦闘本能が彼に右手を上げさせた。あの日、黒豹の尾を切断したあの魔法干渉を再現しようとしたのだ。
だが、精神は集中できず、腕は引きちぎられんばかりに重い。残っていたわずかな魔力は、黒い底なしの井戸へと貪欲に吸い込まれていく。黒い裂け目は暴走するどころか、むしろ安定してしまったかのようだ。
この微弱な抵抗は、黒豹の落下軌道を1ミリたりともずらすことはできなかった。九条の視界は急速に暗転し、魔力枯渇による強烈な眩暈が意識を断ち切る。彼は糸の切れた人形のように、棒立ちのまま後ろへと倒れ込んだ。
【魔力枯渇により、あなたは昏睡状態に陥りました】
【ゲーム内時間で約2時間後に覚醒する見込みです】
「くそっ!こんなのありかよ!?勝ったと思ったのに、またコイツが出てきやがった!」
「フィードバック機能ON!」
「おい!俺が短期間にこの黒豹と再遭遇することはないって言ったよな?どういうことだ!」
「データベース内にお客様と類似したプレイヤーデータが極端に少なかったため、計算に誤りが生じました。深くお詫び申し上げます」
……。
こいつ、謝ったのか?
あのいじわるフェアリーが、初めて言い返さずに謝罪した。九条は逆にどう返していいか分からなくなった。
「ま、まあ、人間だもの、間違いはあるよな!いや、AIだもの、か!」
「ご理解いただき感謝します。あなたのプレイスタイルは非常に……特異ですので、貴重なデータをご提供いただき感謝いたします」
どうも雲行きが怪しくなってきた。「いつ俺がデータを提供するなんて言った?」
「お客様は利用規約に同意されています。『ガイア・クロニクル プレイヤー利用規約』第……」
「ストップ、ストップ!フィードバック機能OFF!」
やっぱり油断ならない奴だ。




