ショートショート『つまらない友達』
思春期のあるある話です
つまらない友達(佐藤ゆきお)と帰り道が同じだった。
仕方なく一緒に歩く、なぜなら今日風邪で休んだ山田直紀(親友)のプリントをこのつまらない友達と直紀の家まで届けるよう先生からそう言われたからである。
帰り道は佐藤と同じなのに今まで帰ったこともないし、同じクラスでも話すこともない、僕の中ではつまらない友達であった。
僕は佐藤と学校を出てからまだ一言も会話していない。
もう10分は無言で歩いていると思うが、その時間は物凄く長く感じた。
いつもなら、直紀と冗談を言いながら帰っていたはずなのに……。
昨日発売のマンガ雑誌の話で盛り上がっていただろうな、などと直紀との想像でなんとか頑張って歩いている状態だった。
僕は元々あまり話すタイプの人間ではない。
佐藤もそんな感じだった。
この重い空気に僕は窒息しそうになりながら、早く直紀の家に着かないかと指折り数えて歩いていた。
足音と息づかいだけが耳にこびりつく、僕は学校を出て初めて横目でチラッと佐藤を見た、なんと佐藤もチラッと僕に視線を送っていた。
その顔はちょっと気まずそうで、話しかけたそうな思春期の少年の顔だった。
僕はそれを見て少しドキッとした──
そして、僕はなんだか心の中がスッと軽くなったように感じた。
佐藤も僕と同じ気持ちなんだろうか……
僕は佐藤をつまらない友達と揶揄したことを反省した。
「き…昨日マンガ雑誌買った?」
佐藤が小さな震えた声で、この沈黙を破ってくれた。
僕は──
「ウン買った」と小さなホッとした声で返した。
「僕も買った、それ行けサッカー部、僕好きなんだ」
「僕も、僕も!」
「単行本も集めてる」
「僕も、僕も!」
僕たちは堰を切ったように話し出した。
さっきまで止まっていた時間が、空気が、一気に洪水のごとく流れたようだった──
あの日から僕は佐藤と友達になった。
そして、親友になり──
大人になってもそれは変わらず親友だった。
今、直紀のアパートに向かって沢山のビールとツマミをもって佐藤と歩いている。
今日は直紀の誕生日で宅飲みパーティーで祝うのだ。
思春期のあの時の記憶を、思い出しながら
僕と佐藤は直紀のアパートに向けて歩いていた。
おわり
【あとがき】
懐かしく自分の記憶から引き出しながら書いてみました。こういうものは初めて書きましたが楽しい気持ちになりますね。
自分の想像ですけど(笑)近い感じはあったような……




