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第十七話

「号外! 女神を信仰していると嘘偽りのカルト教が国によって粛清されたよぉ! 詳しくはこの──」


 あの後、しばらく鍛錬したがやはりうまくはいかなかった。

 グレースの教え方が致命的に下手なのもあるが、もっと根本的なところで問題を抱えているような気がする。


 怒ったグレースは、気晴らしに買い物に付き合えと言ってきた。商店通りまでやってきてある程度の買い物をグレース一人が楽しむ。エリンの手の中にある手荷物がいっぱいになったころ、陽は傾きかけていた。


 街の喧騒に混じって、新聞配達員の少年が声高々に喧伝している。


「ふぅ、スッキリしたのだわ」


 ベンチで座って休んでいたハルとロミアの前に、グレースが戻ってくる。後ろのエリンが持っている荷物がさらに二段増えていた。

 

 エリンは荷物を降ろしてから肩を回していた。さすがの彼女も少し疲れ気味な顔をしている。


「でも意外だな」

「何がなのだわ?」

「いや、こんなところで買い物するなんて……。庶民のところで売ってるものなんて品位が下がりまわ! って言う感じかと」

「私をなんだと思ってるのだわ!?」


 憤慨するグレースに対して、ハルの横に座っていたロミアが吹き出した。睨まれて知らん顔をしている。


「まぁ実際、数年前まではグレースお嬢様はその通りのようなことを言ってましたよ」

「エリン!?」

「ふーん……でも、言わなくなったんだな」

「まぁ、姉としての建前ですかね」


 確かに、弱っている妹がいるのなら、わがままを言っていては格好つかないとグレースなら思うかと納得した。

 

 ちょっと感心するように見ていると、「辱めなのだわー!」と、大きな声を上げていた。


 あまりに大きな声を上げすぎたのか、顔が真っ赤になっていた。肩で息をして、近くの植え込みに手をつく。


 呼吸を整えてしばらくしてから、彼女はこちらに向き直った。腕を組み、ジーッとハルの顔を見つめる。


「それにしても、本当なんで魔法が出ないのだわ?」


 グレースは不思議そうな顔で見つめてくる。

 

「お嬢様の教え方が、下手すぎではないですか?」

「そんなことないのだわ!」


 エリンに突っ込んでから、グレースはこちらに顔を限界まで近づけた。


「そんなことないはずだわ!?」


 彼女の圧に負けて、視線をそらした。その反応にグレースはショックを受けたような表情になる。

 またしてもロミアが我慢できずに吹き出していた。


「いやでもグレースが全面的に悪いわけじゃないから」


 ハルの才能がなかった。それに尽きるのだ。

 しかし、彼女は俯いてわなわな震えてから、覚悟を決めたように顔を上げた。


「決めた! 何が何でもハルに魔法を使えるようにするのだわ!」

「え、いや……そんなに燃えなくても」

「いいや、決めたのだわ。私の家名に賭けて必ずしも使えるようにするのだわ!」


 それだけ言うと、彼女は大股で去っていく。途中で振り返ってから──


「エリン、早く帰るのだわ!」


 それだけを言って去っていった。エリンはこちらに頭を下げてから荷物を持って追いかけていく。


「大変なことになったねぇ?」


 呆気にとられているハルに、ロミアがニヤニヤ顔を向ける。


「……ロミアは良いのかよ? オレが魔法が使えるのは反対なんだろ?」

「反対はしてないよ」


 そう宣言してから、彼女は続ける。


「ハルが選んだのなら反対はしない。でも、流されてるだけなら全力で止める」

「……何の違い?」

「それは自分で感じるものじゃない?」


 ロミアは立ち上がってから、ハルに振り向いた。こちらに向かって手を伸ばしてくる。

 ハルは肩をすくめてから彼女の手を取る。力を込めて立ち上がった。その際、ロミアは耳元に口を寄せる。


「ハルはさ、もっと自分が特別なことを自覚したほうがいいよ」

「……どういうこだよ?」


 くすりと笑って、ロミアは離れる。手を後ろに組みながら先を歩いていく。

 少し離れたところで肩越しに振り返って、視線を合わせた。


「教えなーい。教えたら、絶対に取り返しがつかなくなるもん」


 一体自分は何の力を持っているんだよと、肩を落とした。学園に帰っていく彼女の後ろを、数歩遅れて追いかける。



※※※※※※※※※※


 

 短い夢をハルは見た。何か優しげな女性が、こちらを抱擁してくる。

 どこか温かな雰囲気を纏っている彼女は、何も言わずにただ微笑んでいた。


──あなたは誰?


 そう口にしようとして、声が出なかった。自分の身体が曖昧になっていることに今気がついた。

 女性はこちらに向きながら、口を開く。


「我に祝福されし者よ。力を正しく使い、魔を滅せよ。そなたはマナを解く者」


 その言葉の意味は分からなかった。どういう意味か尋ね直そうとした時、ハルは目が覚めた。


 窓から漏れる日差しを受けながら、自分は何の夢を見たっけと首をひねった。

 思い出せないまま、一日が始まる。

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