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第十四話

 パーティ会場に出ると、華やかさにまずは目がくらんだ。明るい色調に明るい照明。すべてが陽の雰囲気に包まれて、尻込みしてしまう。

 続いて、出席者から集まる視線に喉の奥から声が漏れてしまう。


 思わずロミアの背中に隠れてしまい、彼女に苦笑された。


「どうしたの?」

「いや、なんか変に注目集めてるみたいで……。やっぱり似合ってないんじゃ?」


 そのハルの言葉に、ロミアは黙りこくる。そして、無表情のまま頬をつねられた。


「痛いなんで!?」

「知らなーい」


 つねられた頬を撫でながら、ハルは涙目になった。


「私の家のパーティにようこそなのだわ!」


 そんな空気を打ち破ったのは、いつもの如くグレースの声だ。振り返ると黄色いドレスに身を包んだ彼女がいた。

 化粧が丁寧に施されてる分、なぜだか綺麗に見える。

 グレースの顔をじっと見つめると、彼女は困惑したようにたじろいだ。


「な、なんなのだわ?」

「いや、グレースってよく見ると綺麗だよなって」


 その言葉を聞いた瞬間、彼女は頭のてっぺんまで真っ赤にさせた。


「な、ななな何をいきなり言っているのだわ!」


 目をぐるぐるとさせて腕をワタワタと振り回す。しかし、どこかうれしそうにしている気配がある。


「天然たらしだ……」

「お嬢様が嬉しそうで何より」


 いつの間にか遠くに寄っていたロミアとエリンがコソコソと話していた。

 なんか、まずいことを口走ったような気がして、慌てて咳払いをする。


「い、いやほら招かれたからには……ね?」

「そ、そうなのだわ。社交辞令は必須のスキルなのだわ」


 お互いが空笑いをして、少し気まずい空気が流れた。

 

 沈黙を破るように、グレースが手を打つ。真っ赤になった顔を隠すようにそっぽを向いて、口を開く。


「今日は親睦会も兼ねてるので心ゆくまで楽しんでほしいのだわ」


 それだけ言うと、足早に去っていった。



※※※※※※※※※※



 正直な話、今まで男として冒険者を目指していたものが、いきなり淑女御用達のパーティに馴染めるだろうか?

 答えは、否であった。


 小さいころから上流階級の教育を受けていないハルにとって、歩き方さえままならなかった。

 これ以上ボロを出す前に、ハルは端っこに避難した。流れてくる四重奏の生演奏を聴きながら、招待された紳士淑女たちのダンスを眺める。


「せっかくのパーティ、楽しまないと損だよ」


 ロミアは左手で食べ物が山盛りの皿を持ち、右手で骨付き肉を持っている。そのまま肉を頬張り、おいしそうに目を細めた。


「いいよなぁ、ロミアは楽しそうで!」

「ん〜? 何が?」

「いや、なんかこのパーティを心行くまで堪能してるって思ってさ」


 ハルなんて、水を取ろうとするだけでも注目を集める。少しでも淑女らしくないことをするとコソコソ何か言われる。

 結果、何もできずに端っこで眺めるしかできなくなった。


 今でも男たちが探るようにチラチラ見てくるので、とても落ち着けたものじゃない。


「分かった分かった。私が何か代わりに食べ物持ってきてあげるから待ってて」


 ロミアは苦笑してから離れていく。仕方ないので、彼女の言う通りにこの場で待っていようと決める。


 そのとき視界の端からジュースを手渡されて、無意識に受け取った。

 ありがとうとお礼を言おうと顔を向けると、そこに立っていたのはウェイトレスの服に身を包んだニーチェだ。


「また会ったのですぅ〜」

「え、なんで? 下水道に流されたはずじゃ?」

「面白そうなので来てみたのですぅ〜」


 本当に神出鬼没すぎる登場だ。というか、ここまで来るとつけ回されてないかと疑ってくる。

 しかし、エリンの話では彼女の道具で助かったらしいので、邪険にせずにお礼を言おうと口を開いた。


「失敗作の運用記録をつけれたのでお互い様ですぅ〜」

「……失敗作?」

「少しでも間違ったら脳味噌ぐちゃぐちゃになるのですぅ〜」


 その言葉を聞いて、喉の奥からヒェッという声を漏らした。やっぱり関わっていい相手ではないと感じる。

 しかし同時に、彼女ならハルのことを知ってるのではないかと思った。


「なぁ、一つ聞きたいんだけどオレって──」

「コラ新人! サボるな!」


 しかし、ハルの声に割り込むように大きな声が割り込んできた。

 いかにもなコックらしき人が近づいてきて、ニーチェの襟首を掴んで引きずっていく。


「またなのですぅ〜」


 そしてそのまま、授業員用のドアの奥に消えていった。結局彼女が何をしに現れたのかハルにはまったく分からなかった。


「ほら、取ってきたよ」


 戻ってきたロミアから料理をを受け取ったハルは、しばらくニーチェが消えた方向を見つめる。


「何見てるの?」

「……いや、なんでもない」


 そして、何も見なかったことに決めた。あれはもうああいう生き物だと割り切るしかなさそうだ。

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