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ⅩⅦー5 龍の嫉妬

■散歩

 博物館にカイは今日も来なかった。

 もう一週間にもなる。がっかりしたまま、リトが大学から戻ってくると、ロビーから聞き慣れたベランメエが聞こえてきた。カムイだ。ということはカイもいる。リトは駆けだした。


「や……やあ、お帰り」

 光のなかで振り向いたカイに、リトが挨拶した。カイもまた挨拶を返した。

「キミも、お帰り」

 二人の間にカムイが立ちはだかった。

「やい、リト。カイさまはお疲れだ。引き留めるんじゃねえぞ」

「いや、よい。リト、何か新しい情報があったのか?」

 カイはカムイを止めた。カムイが恨めしげにカイを見る。

 カムイは、カイとリトの接近を歓迎していない。だが、主人であるカイの命令には背けない。カイの配慮がうれしくて、リトはカイのそばに駆け寄った。

「あっちへ行こう」

 リトがカイの腕を引くと、カムイがジトッとそれを睨む。カイは「わかった」と応じて、カムイに命じた。

「誰も入れないように」


 いつもの部屋だ。向かい合わせに座って、カイとリトは手を合わせた。久しぶりの思念交換だ。

 時空物語に関する整理を説明し、図書館事件で海の宮殿を見た気がすると話したくだりで、カイがリトを止めた。

(宮殿が見えた?)

(うん、そうなんだ。かなり遠いところでうっすらとだったけど、確かに見えた)

 カイが沈黙した。

 しばらくしてようやくカイが尋ねた。

(他に何か見えたり、聞いたりしたものはあるか? 図書館の時以外も含めてだ)

(うーん。あ、そうだ。キミが天月に戻っているときに、木の上から天月の方を見たんだ。そしたら、だれかが烏を放っているのが見えた。カムイが山の中腹で飛んでいるのも見えた。滝らしい音がしたよ)

(天月……。ここの木の上から天月が見通せたというのか? 滝の音まで聞こえたと?)

(うん。ほんの数分間だけどね。ものすごく疲れて木の上で寝ちゃってね。あとでばあちゃんとサキ姉にこっぴどく叱られた。みだりに九孤忍術を使うなって)

(そうか。……宗主との約束を破ってはいけない。キミもこれから気をつけることだ)

(うん。……そうだね)

(少し休もう。一緒に散歩にでも行かないか? ずっと籠もって仕事をしていたせいか、広いところに行きたい。離宮公園はどうだ?)

(もちろんっ!!)――うそおおお! カイが散歩に誘ってくれるなんて初めてだ!


 カイとリトは連れだって離宮公園を目指した。後ろでカムイがハンカチを噛んで恨めしそうに、遠ざかる二人の背中を見送った。「今日はついてこなくていい」とカイに言われてしまったのだ。最近のカイは、カムイを連れずに動くことが多い。ショックだ……。


 落ち込むカムイのそばにキキが近寄った。食品庫に出向いたカムイとキキは、隠しておいた一本の酒瓶を取りだし、庭に出てチビリチビリと飲み始めた。カムイは、キキにだけわかる声で愚痴をこぼした。

(カイさまがよう、リトに気をとられとる。……〈銀麗月〉と落ちこぼれ学生だぞ。差がありすぎるじゃねえか)

 烏姿のカムイが、グビリと酒を飲んだ。

(ほんまじゃのう。いったいリトのどこがええんじゃろの?)

 キキは、オロがリトに夢中なのが気に食わない。カムイがよそってくれた皿の酒をちょびっと舐めた。

(リトも悪いヤツじゃねえさ。けっこうタフガイだしよ。だけどよう、今まで二十年間、カイさまに尽くしてきたオレの立場はいったいどーなるわけ?)

(まあ、飲め。カイは、おまえのことも大事にしておるぞ。リトのことは一時の気の迷いだろうが、おまえは一生の連れだからの)

(そうかなああ?)

 キキになだめられて少し気持ちが落ち着いたカムイは、またグビリと酒を飲んだ。


 打って変わって、リトは有頂天だ。

――二人で散歩だ! デートみたいだ!


 少し秋を含んだ風が頬に心地よい。半時間ほど歩き、離宮公園に着いた。もうすぐ日が暮れる。西の空が真っ赤に焼け始めた。ベンチに座ってそれを眺めながら、二人でとりとめのない話を交わした。


(オレには三人の姉がいるだろ。みんなオレをかわいがってくれるんだけど、かわいがり方が独特でさ。ナミ姉は以前は菩薩みたいにやさしかったのに、今は厳しくなっちゃって、オレがやることなすことに冷たい反応を示すんだ。ミオ姉は、あの通り、自由奔放に生きている人だけど、いろいろと屈折しててね。素直じゃない愛情表現をする。サキ姉は、ばあちゃんそっくりで毒舌家なんだけど、いちばんオレのことを気にかけてくれてる。まあ、しょっちゅう、オレのことをこき使うけどね)

(キミはいい姉さんたちをもったね。宗主もキミのことがとても大事みたいだ)

(うん、そう思う。ばあちゃんは口は悪いけど、オレのことをいつも心配してる。もっとしっかりせんかって、しょっちゅう叱られてるけど)


 二人は思念交換のために手をつないだままだ。

(カイの家族は? ――聞いてもよければだけど……)

(いない……。わたしは生まれてすぐ、老師さまに拾われたんだ)

(拾われた……?)

(だから、親のことはまったく知らない。自分がだれかもわからない 。ただ、老師さまはわたしを大事にしてくださったし、さまざまなことを教えてくださった)

(老師さまに甘えたり、叱られたりしたの?)

(甘える? いや。……わたしはだれかに甘えたことなどない。いつも一人だったから。それが普通だった。そう言えば、叱られたこともない)

(叱られたことがないってのはカイだからだよ。子どもの時から優等生だったんだな。予想はつくけどさ。でも、子どもが誰にも甘えられないのは可哀想だ。オレなんかぜったい耐えられないな。カイは寂しくなかったの?)

(寂しい? ……わからない。そういう気持ちを持ったことがないから。家族がいるって、幸せなことなのだろうね?)

(むずかしいな。オレの母親は生きているけど、もう何年も会ってない。母さんは、オレと父さんを捨てて、初恋の人のところに行っちゃったんだ。勝手だろ? オレが五歳の頃かな。父さんは母さんのことが大好きだったから、ショックが大きすぎてさ。寝込んだんだ。オレは心配で心配で、父さんから離れようとしなかった。父さんにも捨てられるって思って怖かったんだ)


 カイはやさしげなまなざしでリトを見た。

 父のことを語るリトは、いつも以上に素直になる。

(だからかな、父さんは、オレには甘々だった。いつも言ってた。おまえはわたしの宝物だ。思い切り甘えて、すくすく育っておくれ、って。おれが悪いことをすると、オレを叱るんじゃなくて、自分を責めるんだ。申し訳なくてさ、父さんを悲しませることはできなくなくなった。いつまでも父さんはオレのそばにいると思ってた。でも、突然いなくなった。オレが十五歳の時に事故で亡くなったんだ。以前に言っただろ。このアカデメイアに来て、シャンラのルナ遺跡に調査に行った時のことだった……)

(うむ)

(父さんは調査旅行には必ずオレを連れて行ってくれた。オレがただ一度ついていけなかった調査旅行が、このアカデメイアだったんだ。ちょうど高校受験と重なっちゃってね。……だから、オレはここに来た。父さんへの詫びを兼ねて)

(そうだったのか……)

(オレ、父さんを忘れたくなくて、父さんが残したものを全部読んだんだ。ルナやウルの研究資料だよ。それがキミに役立った。だから、オレはとてもうれしかったんだ。キミの知識の中に父さんが生きているって思ったから)

(朱鷺博士の研究には敬意をもっている)

(ありがとう。父さんもきっと喜んでるよ)


■夕闇

 夕焼けの茜色がしだいに暗闇に紛れていく。

 二人はベンチに座ったままだった。東から月が昇り始める。夕闇の中に、アカデメイアのキャンパスの明かりが煌めく。まだ、学生も教員も残っているのだろう。


 カイがふと尋ねた。

(キミには、きっとたくさん友だちがいただろうね?)

(そうだね、友だちは多かったよ。今も何人か仲のいい友だちがいる。でも、じつは親友って呼べるほどの友だちはいないんだ。広く浅くってとこかな)

 「友だち」のことをカイが話題にするなんて初めてだ。

 ためらいがちにリトは尋ねてみた。

(……カイはどうなの?)


 カイはゆっくりと答えた。

(わたしにはそもそも友だちがいない。ずっと天月の山奥で老師さまに育てられたから)

(天月には学校がないの?)

(学校はあるよ。でも、わたしの場合は、すべて個人授業だったんだ。いろいろな先生には教わったけれど、学校で学んだことはない。だから、櫻館のような集団生活は初めてだ)

(へええ、そうだったんだ。きっとカイが優秀すぎたんだな。オレは普通の高校生だったから、クラブ活動でしょっちゅう合宿してた)

(クラブ活動?)

(夏前に〈蓮華〉の同好会合宿があっただろ? あれに似たヤツ。体育会系だと九孤忍術ってことがバレるから、音楽系サークルに入ってさ。ギターをやってたんだぜ)

(リトが音楽をするの? 一度聴いてみたいな)

(あはは、下手だよ)

(それでもいいよ)

(じゃ、今度ね)

(約束だよ)


 リトはうれしくなってきた。カイが自分に関心を示してくれている。やや肌寒くなってきた。だが、もう帰ろうとは、どちらからも言い出さない。

 リトはさらに話を進めた。

(櫻館の合宿は、オレ、ものすごく気に入っている。カイ、キミはどう?)

(わたしもだ。だれかと一緒に食事をしたり、議論したり、対戦するという生活など、天月にいたときには想像もできなかった)

(へええ、そうだったんだ。……オレさあ、カイと友だちになれて、ホントにうれしいんだ)

 うわああ、言っちゃった! ドキドキ……カイもすんなり答えた。

(わたしもだ)

 リトはカイとの距離がさらにグッと縮まった気がして、うれしそうに笑った。

(よかったあ! オレにとって、カイは特別な友だちだもん)

 リトにすれば、精一杯の告白だ。顔が火照(ほて)っているのがわかる。でも、闇が消してくれた。心臓の音も早いが、カイには聞こえまい。


 「特別な友だち」――この意味を、カイはわかってくれるだろうか?

 カイは、リトをまっすぐに見てこう言った。

(わたしもだ。キミは、わたしの初めての、そしてただ一人の友だ)

 期待以上だ! 

――「ただ一人の友」だなんて。……リトはうれしすぎて舞い上がるようだった。

 そのあと、カイは、一番聞きたい言葉を喉の奥にしまった。

――キミの初恋相手はだれなの? 

 そして、質問を変えた。


(ところで、さっき、天月の山で夜に烏を放った者を見たっていったね?)

(うん、そうだよ。空に向けて両手を挙げて、烏を飛び放たせた)

(それ以外に何か見えた?)

(ううん、それだけかな)

(時間は?)

(夜中の二時すぎかな)

 カイはまた沈黙した。

 おもむろに口を開いたカイは、リトを正面から見据えた。リトの心臓が飛び跳ねた。間近で見るカイの瞳は長いまつげに縁取られていた。その瞳にリトの姿が映り込んでいる。

(リト、キミが見たことを誰にも言っちゃいけない)

(うん、わかった。けど、どうして?)

(天月は烏を使う)

(知ってるよ。天月烏だろ?)

(だが、烏を夜に飛び立たせるなど普通はしない。烏は夜目(よめ)()かない。夜でも見えるのは、三足烏のカムイくらいだ)

(え? じゃ、あれは烏じゃなかったの?)

(いや。……烏だろう。だが、天月烏ではなくて、別の烏かもしれない)

(じゃあ、天月に天月以外の者がいるってこと?)

(そうなるね。しかも、だれかと何かの連絡を取っているようだ)

(……それって、かなりヤバイだろ?)

(そうだ。わたしのほうで調べてみるから、このことは秘密にしてほしい。こちらが気づいたことを悟られると手掛かりを消される)

(うん、わかった)

(リト、頼みがある。これからはくれぐれもあまり遠くを見たり、聞いたりするな。宗主の言う通りだ。キミの身がもたない場合がある。そんなことになれば、わたしは宗主に申し開きできない)

 カイは真剣な目でリトに頼んだ。リトもまた深く頷いた。

(うん、もうしない)

 カイがそばにいてくれるなら、遠い天月を見る必要などない。


■嫉妬

 月明かりの櫻館の玄関先で、ひとりの少年がせわしなく行ったり来たりしていた。オロだ。リトとカイの帰りをいまか、いまかと待っているのだ。

 櫻館に夕食膳を戻しに行ったとき、オロの姿を見かけたサキは、なりゆきが気になってそのまま様子見をした。


 突然、オロが走り出した。

「リトおお!」

 戻ってきたのだろう。多少赤い顔のカムイまでが迎えに走った。カムイはカムイで尋常な心持ちではなかったらしい。


「あれ? いったいどうした、オロ」

 リトはいつもどおりの脳天気ぶりで、走り寄るオロを受け止めた。

「だって、こんなに遅いんだもん。いったい二人で何してたの?」

 リトとカイは顔を見合わせた。カムイもオロも二人を睨んでいる。

「何って……散歩だけど?」

 リトが言うと、オロが噛みつくように訊いた。

「こんな遅くまで? なんで二人で?」

「なんでって……いろいろと相談があったんだよ」

 オロはカイを無視するように、リトの手を引いた。

「はやくこっち来てよ。教えてくれるって、約束したじゃないか。ずっと待ってたのに、ひどいよ!」


――オロがリトを好きというのは本当だったようだ。

 カイはそう思ったが、なにしろ「恋」や「嫉妬」という人間感情は、カイにとっては書物の中の話にすぎず、現実味がない……はずだった。なのに、どうにもこうにも、この前からやたらと胸がチクリチクリと痛む。

「ごめん、ごめん。わかったら、もう()ねるなよ。じゃあな。カイ、また明日」

 「うむ」という暇もなく、カイはカムイに引っ張られてダイニングに向かった。カムイがあれこれとカイの世話を焼いている。カイはリトが消えた部屋のドアをしばらく見つめていた。


 ライトアップされた庭のそばのソファに腰掛け、優雅に食後のコーヒーを飲んでいた彪吾とレオンが興味深そうに四人の騒ぎを見ていた。


 彪吾にはオロの焦りがわかる。

 自分だって、いまだにレオンがカイと話している時には、胸がザワザワするからだ。イ・ジェシンの振る舞いなどは見ていて脳天に血が上りそうだし、レオンといるときにうれしそうにするラウ伯爵のことを考えただけでも腹が立つ。なのに、レオンは誰に対しても礼儀正しく、自分に寄せられる好意にまったく無自覚だ。カイも同じだ。実に罪作りな二人だよ。

 

 レオンにはカイの困惑がわかる。

 天月修士、それも〈銀麗月〉ともなれば、つねに冷静沈着を保ち、禁欲を貫き、ありがちな人間感情に振り回されてはならぬと教え込まれているはずだ。他者から向けられる好意にも敵意にも羨望にも距離を置き、自身の気持ちを抑制し、自ら封印しているに違いない。だが、〈銀麗月〉と言えども「ひと」。カイは、封じ込めきれない「ひと」としての想いに戸惑っているのだろう。おそらく、カイはリトを愛している。だが、その愛が実を結ばないこともわかっているはずだ。〈銀麗月〉が生きる時間は「ひと」とは異なる。


 レオンは彪吾を見た。二十年以上も一途に自分だけを想い続けてくれた人。この愛しい人への想いを自身もまた十年近く抑え続けた。所詮かなわぬ想いだとあきらめていたからだ。

 だが、いまは違う。

「さあ、もう部屋にもどりましょう」

 レオンが彪吾に声をかけて、立ち上がった。彪吾が「うん」とうれしそうにレオンについていく。二人は指をからめあい、回り階段を登って、レオンの部屋に消えた。


■櫻館の嵐

 うーん。サキは思わず腕組みした。

――これは、櫻館が大揺れするぞ。典型的な三角関係じゃないか!


 考えてみれば、櫻館は、風子たちが来る週末を除けば、ほとんど男たちの世界だ。オロの目にはリトしか映っていないのだろう。

 もともと、ルル=オロは、自分が好きな者や好きなこと以外に関心が向かず、他人への配慮がほとんどできない問題児だ。いまは、リトがオロを大事にするから、オロは何とか暴発しないで済んでいる。だが、リトがオロよりもカイを重んじるようになれば、オロは黙っているまい。〈水の一族〉の青龍族は、恐ろしく嫉妬深いと伝わる。ヤバイ!


 小屋に戻ってばあちゃんに伝えると、ばあちゃんは思案顔でこう言った。

「風子の力がいるようじゃの」

「なんで?」

「風子は、本人も気づかずに、異能も激情もなだめることができるようじゃ。あのルルですら、風子と一緒のときには、風子の言うことを聞いて、他の者に協力できたようじゃしの。学校でもそうではないのか?」

 言われてみれば、そうだ。確かに、ルルは我儘(わがまま)身勝手(みがって)権化(ごんげ)だが、風子がそれをふんわりと取りなしている。ルルとアイリとシュウというまったく折り合うはずのない天才問題児をつないでいるのは風子だ。


「どうしたらいい?」

「寮を引き払わせて、もう一度、風子にこの櫻館に戻ってきてもらうことじゃな」

「できるかなあ? 寮だと、ここよりも気楽らしくってさ。おまけにキュロスが食事の用意をするから、何の苦労もないようだし。特にアイリがなあ。……あの子は「高級」なものや「金持ち」を(かたき)みたいに嫌っててさ。ご飯で釣ることができないってのは痛い」

「風子が弱いものは何じゃ?」

「うんっと……リクかな? 学校では、風子はリクのことばかり構っている」

「ほう? リクか……」

「どうかした?」

「カイが言っておったであろう。リクは香華の力を持っているかもしれんと」

「異能者か……」

「リトのためには、櫻館に異能者が揃っておった方がよかろうの。カイもそのほうが制御しやすかろう。おまけに、アオミ医師はシュウや彪吾の主治医じゃそうじゃの」

「ということは……リクを父親もろとも、この櫻館に呼ぶってこと?」

「ついでに虚空を呼んでもよかろう。あれは世界を放浪しておるから、各地の神話や伝説に詳しい。ルナ神話の分析には役立つだろうて」


 サキは虚空のことはほとんど知らない。ばあちゃんはこうも言った。

「虚空も恭介もリクの異能に気づいておるはずじゃ。じゃが、どうしたらええかわからずに困っておるに違いない。力を封じ込めるというても、虚空の力では限界があろうからの。わしだけではなく、〈銀麗月〉という強力な異能者がおるこの櫻館は、虚空らにとっても渡りに船じゃろうて」

 さらにこう付け加えた。

「それに虚空は獣医じゃ。モモやキキのためにもなると言えば、アイリもオロも飛びつくぞ。まあ、彪吾が承知すれば、じゃがな」

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