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Ⅶー6 エピローグ――ランチ仲間

【これまでの話から】美少年シュウは、護衛キュロス付きで、落ちこぼれ校〈蓮華〉に転入してくる。担任はサキ、同級生には風子、ルル、リクがいた。金持ちが嫌いなルルはシュウの護衛キュロスにケンカをふっかける。キュロスと互角の戦いを見せたルルに、サキは驚く。

「ああ、またですね。六人でランチしてますよ」 

 職員室のだれかが言った。サキが窓の外を見ると、大男キュロスのそばに、シュウ、ルル、リク、風子、アイリがいた。キキもモモもいる。

「なんで、アイリまで来るんでしょうねえ」

「アイリは〈蓮華〉の寮に住んでるそうですよ。来ても不思議じゃないかもです」

「それにしても、シュウくんはいつ見てもきれいですね」

「いやいや、ルルくんこそかわいらしい。さすがにルナ・ミュージカルの主役を張るだけのことはありますよ」

 この前までギスギスしていた職員室が、最近は六人の話題でワイワイと(なご)やかだ。シュウたち四人の担任であるサキはうらやましがられている。


――いやいや、あの子たちのいるクラス運営はラクじゃないんだってば!

 シュウは抜群の頭脳でクラスの議論をリードするが、高度すぎて、だれもついて行けない。識字障害をもつルルは文字が読めないので、風子が音読して伝えているが、テキストを無視したルルの発想や質問は突飛すぎて、だれもついて行けない。


 シュウとルルはともに数学が得意らしく、しばしば妙に張り合って問題を解きあっている。見ると数学オリンピックの問題集だ。サキにはさっぱりわからない。黒板いっぱいに数式が並び、二人が競い合っている姿を見るたび、頭痛がする。廊下では、キュロスがシュウとルルの競い合いを見ながら大喜びで目をウルウルさせている。


 と思ったら、今度はシュウが風子と古代文書論議をはじめる。だれも読めない古文書(こもんじょ)のコピーを前に二人があれこれと楽しそうにおしゃべりする。これもまた、キュロスが大喜びで窓枠にすがりつくように二人を見つめている。サキにはこの議論もさっぱりわからない。


 つまり、シュウは数学と古文書学で存在感を発揮し、自分に匹敵するライバルを得て、生き生きとしているが、ほとんどの生徒はどちらにもついていけず、サキがせっせと面倒を見なければならない。


 だが、風子が来る前まで無気力であった生徒たちにもやる気が出てきたようだ。積極的な提案をするようになり、自分たちからシュウやルルや風子に教えを乞うようになった。そうなると、何事にも超然としているリクが天女のように見えてくる。サキがなんとか教師業を発揮できるのはリク一人になってしまった。


 先の戦い以後、キュロスはルルに敬意を払うようになった。そして、シュウの次にルルに尽くすようになったのだ。ルルが一番喜んだのは、キュロスの手作りの弁当だった。

 学校には給食はない。給食センターを維持する資金がなくなったからだ。今では、みなが昼食を持参する。リクや風子は近くのコンビニでパンを買い、ルルは何も食べないことが多かった。昼食代など出す余裕がなかったからだ。ところが、シュウの弁当はいつも豪華だ。それを見て、ルルの腹がキュルルと鳴った。

 その翌日から、キュロスはルルと風子とリクの弁当も持参するようになった。昼休みの一時間を、キュロスを交え、校庭の芝生の上に座って五人でランチをする。

 

 キュロスはいつも木陰にピクニックシートをひき、弁当と飲み物と果物などを広げて、子どもたちを待っている。たいがいはモモとキキが早めに来て、キュロスの(いこ)い相手になっていた。もちろん、キュロスはモモとキキのためのランチも用意している。いつの間にか、アイリも弁当仲間に加わるようになった。アイリもタダ(めし)が大好きだ。しかも、毎昼、モモと一緒にピクニック気分のランチだなんて、うれしすぎる!


 ルルは食べ物に弱い。いつの間にか、キュロスはルルのお気に入りになり、ルルはついでにシュウのことも敵視しなくなった。

【お知らせ】次から、第八章「古代ルナ遺跡」に入ります。十五歳たちが、古代ルナ神殿遺跡の謎に迫っていきます。

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