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IF2:狼メイドローナさん

……とまぁ、そんなやり取りがあった末にボクはローナに成った訳なんだけど………



「ローナが一緒でキリカ嬉しい。」


「ボクもキミと旅ができて嬉しいよキリカ。」



ローナとキリカは親友って言ってたよね女神様!?

距離(ちか)ない!?

顔を赤らめたキリカはボクに正面から抱きついて上目遣いで見つめてくる……

心から信頼していますって態度、とゆうより、これは恋人に向ける視線の様な…………?



「んっ…ローナ、もっと耳撫でて?」


「ハイハイ、これでいいかな?」


「んぁぁ〜♡」



なぜこうなってるのか思い出してみよう。



















まず、ボクはローナの死体に重なる様に、再びこの世界に舞い降りた。

そして、既に空っぽだった器にボクが収まり、目を覚ますと、そこはどこかの物置で、周りには血の跡、そして身体を見下ろすとお着せはズタボロの血塗れになっていた。


………と、身体と周りを確認していると、ローナの身体としての記憶が頭に流れ込んでくる………

あれ、それならトワの身体でも問題無かった…?

いや、でも結局トワを演じるのはボクには無理だろうね、それに、あのクズ聖女の信奉者になったマリアなんか見たくないし。

それよりも……記憶によれば…どうやら、ケモノと交じわうのは嫌悪されているからか、ローナは性的暴行まではされず、ただただ痛め付けるように、致命傷を避ける様に、全身をナイフで刺されてジワジワと嬲り殺しにされたらしい。


最期はキリカの顔を思い浮かべ、最期に一目だけでも、と思いながら、幻のキリカに抱きしめられながら果てたらしい。

そうまでしないといけないほど、無為に痛め付けられた死に際のローナの心は壊れていた。



「うっ…!おぇぇぇ………ゲホッゲホッ………うぅ……



それを引き継いでしまったボクは、その場に嘔吐し、しばらく咳き込み、落ち着いた所で無性にキリカに会いたくなってしまった。



「………キリカ。キリカキリカキリカ……!!」



初めてこの身体でマトモな声を出す。

その声はとても澄んでいて、耳に心地が良かった。

キリカもローナ……ううん、ボク、の声が好きだったみたいだ。

それと、ローナは職場の先輩であるマリアさんからも大切にされていたらしい。

そんなに愛されていた少女なのに…いや、だからこそ、あのクズ聖女に目を付けられてズタボロにされたらしい。

まぁ、尻尾や髪を見る限り、サラサラの綺麗な銀髪だし、あのクズと見た目が近かったから標的にされたのかもね。



「うぅ……ともかく、先ずはキリカと会うべき、かな…?」



女神様の言葉を信じるなら、キリカはボクが殺された事を知らずに旅に出てしまう。

ならば、キリカには最初からエルーナは悪人だと伝えておくべきかな。

親友の言葉なら信じてくれるはずだし。


時間的にはもう今日出発……下手したらもう出発してしまったかも………だけど。


とにかく、キリカを探そう。

幸いにもボクは狼獣人。

キリカを匂いで探せる。

途中で水飲み場を見つけて不快な口腔内をゆすいでから改めてキリカを探し始めた。




「見つけた…!」



ローナ(ボク)はキリカの匂いは正確に嗅ぎ分けれるらしく、すぐに見つけれた。

どうやらキリカはまだ自室に居たみたい。

服装以外の旅支度は完了していたから本当にギリギリのタイミングだった…!



「キリカ!!」


「んっ…?ローナ?どう、したの…?」



キリカは狐獣人の小柄な少女だ。

何時も無表情で口下手な子。

そのキリカは何時もの無表情に蒼と翠のオッドアイの瞳でボクを見た。


挿絵(By みてみん)


「あのねキリカ、ボク、キリカに大切な話があって探してたんだ。」


「大切な話…?何?」


「突然の事で訳が分からないかもしれないけど、聖女エルーナには気をつけてほしいんだ。

アイツは…根っからのクズだがら…!

聖女がクズだなんて信じられないかもしれないけどー


「んっ。ローナは普段から、人を悪様には言わない子だから、信じるよ。」


ーどうか信じ…って、えっ?そ、そんなアッサリ…??」


「んっ。ローナはそんな冗談を言わない。

それに………ローナから、血の、臭いがする。

聖女にやられた?」


「(!)そう!ボクは……聖女の奴に…!!」



ボクはキリカにあのクズ聖女に殺されたが奇跡的に生還した事を伝えた。

キリカ相手の場合、下手に誤魔化すべきじゃないしね。


……あぁそうだよ、アイツさ、最初からボクを殺すつもりだったから顔も隠さずに、それどころか自らも聖剣でボクを斬って遊んでたし。

ちなみにトドメはエルーナのクソ野郎自らだ。

殺す直前にボクの喉を斬り裂いて声を出なくしてきた。

そして言ってきたんだ……


『アタシ、ケモノの分際で綺麗な声をしているアンタの事が気に食わなかったのよねぇ~♪無様な姿が見れて滑稽だったわ♡

じゃ、サヨナラ〜♪醜いワンちゃん??

来世はアタシみたいな立派な 人 間 になれたら良いわね!まぁ、無理でしょうけどwww

アハハハハハハ!!!!!』


ホンッット、耳障りな声だなあのクズが………今すぐぶっ殺してやりたい。

と言うかなんで殺らなかった…?ローナ(ボク)はそれが出来るだけのスペックがあるみたいなんだけど…?


と、静かに、心の中で怒り狂っていると、それを察したのかキリカがボクを抱きしめてきた……

と言っても身長差があるからキリカがボクの胸に顔を(うず)める感じになってるけど。



「ごめん、キリカがそばに居たら、ローナをそんな目に()わせなかった。」


「………ううん、キリカのせいじゃないよ?

ボクだって、本当なら抵抗出来たのに、出来なかったから、さ。」



これは本当だ。

ローナはエルーナと取り巻きの5人相手でも倒せなくは無い力を持つ、暗殺者だ。

お着せの下にはスローナイフがあるし、アイテムボックスには刀が入っていて直ぐに抜刀出来る。

にも関わらず、ローナは何故か抵抗らしき抵抗をしなかった。


…いや…違うね、冷静になってきて考えてみれば、確かに物理的には抵抗出来た。

けど、相手は外ヅラが完璧な聖女サマだ。

下手に抵抗して怪我をさせたら、獣人であるローナ(ボク)は即処刑……

教会は治外法権だからもしクズの一存でボクの処刑が決まったら、女王陛下ですらボクを守れない………

だから、抵抗が出来なかったんだ………

※この国は女王が統治する国


が。憎悪の気持ちは本物だった。

キリカに対する想いも本物だ。

と言うか、()()()()()()()()()()()()…って…えっ…?

あれ…?なんだか、視界がぼやけて…………だめ、だ………。

“ボク”が、と……け………て…………………



「キリカ………ボク、ボクね……キリカが好き。大好きっ…!ずっと、ずっとずっと!!

死んじゃってからキミに沢山の【好き】を伝えなかった事を後悔した!!」


「んっ。キリカも、ローナの事好きだよ。

やっぱり、両想い、なんだね?

やっとキリカと結婚する気になった?」


「ボクは……うん、そうだね。

ねぇ。キリカ、旅なんか止めよう?行かないでよ、ボクと一緒に居ようよ……



え、ボク、何を……?

ダメだよそれは、悪魔の誘いだ。

それに、原作通りならキリカはシャルロッテのことが好きなはず……

だから結婚に関しては冗談だよね?キリカ。

ボクほキリカの事が大好きだけど、キリカはきっと違うんだよね………あれ……?なんだろ、ダメだよ、シャルロッテ様を憎らしく思うなんて()()()()()()()……え?あれ??

“ボク”って、だれ??ボクはローナだよ??

頭が、ぐちゃぐちゃだ。

だからボクはソレに関しては軽く流したんだけど。



「んっ。分かった、キリカはローナのそばに居るよ?」


「えっ…?」


「怖かった、でしょ…?

そんなローナを置いて、旅に出るなんてキリカには出来ない。

それに………



キリカはいつもの無表情が嘘のように憎悪の表情を浮かべた。



「キリカのローナを傷付けた奴らと旅なんて出来ない。」


「えっ……でも、キリカは勇者パーティーのメンバーじゃないの?」


「どうでもいい。それよりローナが大事。」


「でも!それならシャルロッテ様は!?」


「………え?誰、それ。」


「えっ?」

「んっ??」



んん…?

キリカは無表情のまま首を傾げて本気で知らなそうな態度………

あれれー?何かがおかしいぞぅ…?


シャルロッテが居ない、なんて事は無いはずだよね??

ボク、さっき…と言うか現地時間で昨日に会ったはずだもん……

とにかく確認だ…!



「あの、近衛騎士隊長のシャルロッテ様だよ??

黒髪で、ポニーテールの。」


「んっ。黒髪で、ポニーテール。なのは合ってる。けど、隊長は“男”。名前は【シャルル】。」


「……………え?」



なに。それ。

じゃあ、この世界は、小説によく似てるけど、全く違う世界、なの…?

そっかぁ………なら、()()()()()



「あの、それ、じゃあ、キリカはその……シャルル……様…の事をどう思ってるの…?」



ボクがそう聞くと、キリカは嫌悪感を顕にしてボクの胸を揉みながら←(!?)答えた。



「キライ。大嫌い。この国唯一の公爵じゃなかったら、こ、ろ、し、た、い、程、に、憎い。

だから、ローナもあんな奴に様付けしないで。

だってアイツ、キリカ達獣人を見下してる。

キリカが近衛騎士隊の副隊長をしてるのも、兄さんの威光のお陰だとか抜かした。

その癖、に、ローナ、の、胸には、イヤらしい、目を…!!

ローナの(たわわ)は、キリカのなのに…!」


「そっか、ならシャルルの野郎は敵だねおっけー。

って!いやいや、ボクの胸はボクのだよ??

………まぁ、大好きなキリカになら、良いけど。」


「ローナのそうゆうとこ、好き。流石キリカのローナ。」


「あ、う…んぅ…!?」



キリカは口元だけで笑うと、小さくジャンプして抱きつき直し、ボクの顔と高さを合わせてからご褒美とばかりにキスをしてきた…!?

と言うかこうゆう時に獣人の身体能力の高さを活用するもんなの!?

振りほどく気は無いけど力強ない!?

って、あ、し、舌入れないで…!?

は…んぅ……!!?

ちょっ!?キリカ!?キミ無駄に器用だね!?

ボクに両手両足を使ってしがみついてる状態なのにキスしながら胸揉むのとかやめてぇぇ………舌使いしゅごぃのぉぉっ!?

あぅぅ………あひゃみゃ……ふにゃけぅぅ………しゅきぃ………♡

()()()()()()()()()()〜……♡



「ぷは……とにかく、キリカは陛下(エリザ)に相談する。

キリカ、勇者パーティから抜けるし、ローナも、元通りキリカ付きのメイドにしてもらう。

それで、2人で旅をしよう?」


「はぁ…はぁ…ふぅ………ひゃい………あにょ………はふぅ………あの、そ、そう上手くいくの?」



だ、だめだ、力が抜けて足腰が……

キリカは地面にへたりこんだボクから離れてくれたけど自らもしゃがみこんで視線を合わせて………

と言うか座った状態で抱きつき直してほっぺすりすりしてくる。

この甘えたさんめっ!!可愛い!好きっ!!


あ、ちなみにボク、相手が聖女サマだったから付かされただけで、本来であればマリア同様にその女王陛下付きの侍女だったからかなり地位は高い。

ボクの経歴としては獣人連合国の姫であるキリカ付きの侍女だったけど、友好の証としてキリカが陛下付きの護衛になったのでボクも陛下付きの侍女になり、陛下命令で聖女サマ付きになった、という訳。

……えっと、そう………確か何か理由があったはず。

そうでないとあの聖人な陛下がクズの所にボクを派遣しないだろうし。

だってボクは………


ともかく、陛下は人間だとか獣人だとかで差別をしない立派な人だ。

それは、ローナの記憶を思い返す限り原作通りらしい。

……えっと……?原作……?あれ??


だから、ボクは隣国の姫(キリカ)付きの侍女だった経歴から陛下付きに採用された。

そうすれば必然的にキリカの傍にも四六時中居られるのを込でそう采配してくれたんだ。

本当にいい人過ぎないかな陛下。


近衛騎士隊だって本来であれば完全実力主義だから、キリカは当然、実力で副隊長になったし、メンバーにはエルフやドラゴニュート、他の獣人…という、所謂【亜人】と呼ばれる人達だって居る。

でも、本来近衛騎士隊って陛下付きの部隊だから女性しかなれなかったはず………どうなってるの…?


と思っていたのが分かったのか、キリカが答えてくれた。



「アイツこそ、公爵家のコネで隊長をやってるクズ。」


「……………。」



何それ、原作と違うの……?

じゃあ、ボクは何のためにこの世界に転移してきたのさ………

ん………?転移??

()()()()?

()()()()()()()()()()??

それに………()()()()()()()()()()()()()

原作………?うーん…………??ま、いいか。

なんか変なワードや記憶が過ぎるけど、1()()()()()()()()()()()()()()でしょ。


……………?なんだろ、なんか、へん…?

いや、やっぱり死にかけたせいかな。


…………うん!それよりキリカだよね!!

キリカはボクのだ…ボクのお嫁さんだ…キリカをあんな奴らに渡してやるものか…!!



「………キリカ。」


「ん?なぁに、ローナ。」


「ボク、決めたよ。

キリカは勇者パーティーから外してもらう。

それでボクと一緒に逃げちゃおう?

だから、陛下への交渉、任せるよ。

ボクは陛下への報告書を作成してから行く。」



うんうん、色々と思い出してきたけど、あのクズ聖女の実態をきな臭いと感じていた陛下からの指示でボクが嗅ぎ回っていたのだった。


あと、シャルルのベイルフリード公爵家も怪しい家だとか………も、思い出した。


でもまぁ、ボクは実際に1度死ぬ様な目に遭った。

そんな存在が生きて陛下のそばに居たら色々辻褄が合わなくなるし、

ボクはどの道死んだ者としてこの城を辞するしかなかった。

だから旅に出ること自体は出来る。

理由としても【キリカのローナ追悼の旅への同行】、とかになるでしょ。


ともかく、そのままキリカの部屋で報告書を作成したボクは当然の様にキリカの部屋に置いてあった替えのお着せに着替えてから隠密スキルを最大限に使って陛下とキリカの元へ向かった。



補足説明:今回、“中の人”は死体に憑依した(と思っている)為、正史世界のお話でエルーナの身体に対して行った“元々あった人格の消去”を行いませんでした。


そして、嘔吐した時点で中の人の魂にヒビが入りました。


結果的に中の人は“元々のローナ”に自身の人格が徐々に喰われて“元々のローナ”と同化して補修しつつあるのを知りません。


まぁ本人も平行世界のローナであり、このローナは中の人を基準に造られたモノなので知らずに喰われてしまう方が幸せかもしれませんね……


と、少し……かなり?ダークな補足話をしました。

つまり……回想シーンに入る前のアレも実は…………



補足2:回想シーン後もう1話+続くので長いですごめんなさい。

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