改変後2:姉様と妹と白銀ご飯
あれから更に数日後、魔国内をのんびりと行く馬車は穏やかな雰囲気に包まれていた。
「う〜ん……姉様の膝枕も素晴らしいですね♪」
「うふふ♪いつもはトワちゃんにしていますけど、たまには私に甘えたくなりましたか?エルちゃん。」
「姉様は【姉様】なので。旦那様やキリカちゃんとは別枠ですし。」
「理由はどうあれ、私に甘えてくれるのは嬉しいですよ、エルちゃん。」
「………あの……でしたらお願いがー
「意外ですね。
キャラメルを作ったりクッキーやケーキを作ったりしていたのでてっきり料理は得意なのかと………
「あははは………
まぁ、前世でも【お菓子は化学】と言いましたし。
お菓子は“レシピ通りに正確に”さえ作れれば基本的に誰が作っても大体同じ味になります。
(もちろん、厳密には作り手により差異が発生しうるのでお菓子作りをバカにしてる訳ではありませんが。ボクが作るお菓子も多少のアレンジありですし。)
ただ、料理はそうも行きませんからね…………
そもそも、私が作るお菓子は基本的に刃物を使わずとも作れる様な簡単な部類になるので。
「では、一緒に作っていきましょうねエルちゃん♪」
「はーい♪」
ーで。何故こうなるのですか?」
「…………。」
ボクの目の前には美味しそうな白銀に輝くお米。
炊きたてホヤホヤの美味しそうな、ご飯。
おかしい。
ボクは今シチューを作っていたはずです。
間違ってもお米は触っていません。
なのに目の前にあるのは炊きたてのお米。
そんな、鍋いっぱいのお米を見て訝しげな顔をするマリア姉様。
「ところでコレ、食べれるのですか?
家畜の餌を蒸したものに見えるのですが。」
「食べれますよ!!すごく美味しいんですよ!?」
「………エルちゃんはコレが何かご存知なのですか?」
「コレはお米ですね、東方の国では主食とされています。
嘘だと思うなら数多の本を読み込んで博識なトワちゃんに聞いてみてください。」
「………トワちゃーん?」
ボクがそう言うと、マリアさんは近くで別の料理を作っていたトワちゃんを呼びます。
呼ばれたトワちゃんは嬉しそうに寄ってきました、可愛いですね!
「なぁに?マリアお姉ちゃん!」
「コレが何か分かりますか?」
「わぁ〜!コレってお米!?いつの間に買ってたの!?」
「………どうやらデマカセでは無いようですね?」
「おにぎりにしよう!おにぎり!!
わたし、1度おにぎりを食べてみたかったんだぁ〜♪」
「それなら私が作りましょうか?」
「えっ!?エルお姉ちゃんもおにぎりの作り方知ってるの?」
「はい。」
まぁ、元日本人ですし?
「では一緒に握りましょうか!」
「うんっ♪」
「はぁ………では今日の所は2人に任せます。
私はトワちゃんが作ってた料理の続きをします。」
「あっ…ごめんね?マリアお姉ちゃん。」
「いえ。2人が楽しそうなら姉としては嬉しい限りですので♪」
さて、とりあえず握っていきましょうー
ーで、どうしてこうなった。
「輝く銀シャリおにぎり…………
え、何ですかこの無駄に神聖な雰囲気漂うおにぎり(塩)。
「エルお姉ちゃん!これ酸っぱいよ!?
それにこの赤いの………もしかして東方の【ウメボシ】!?」
「え。」
そんなおにぎりを試しに1つ食べたトワちゃんが差し出してきたおにぎりは………
輝く銀シャリおにぎり(梅)
なんで!?
塩しか使ってないですよねボク…?(震え声)
自分でも1つ食べてみると…?
「シャケだぁぁー!?」
なんで塩しか使ってないのに
輝く銀シャリおにぎり(鮭)
になってるんですかぁぁ!?
あ、コッチは普通に塩にぎりですね。
「それはわたしが握ったやつだね!おいしい?」
「はい、おいしいですよ?」
…………なんでだよ!!(素が出る)
ボクが握ったおにぎりだけどっから具材生えてきたの!?
嘘でしょ………?
ボクは震える手で水に手をつけ、塩を手に取り、そしてお米だけを握る。
「トワちゃん、これ食べてみて?」
「うん?………これ、なんだろ?甘辛い…?」
「…………こんぶ。」
「なるほどぉ〜!これがこんぶおにぎり!!」
なんでだよぉぉぉっ!!?
トワちゃんは嬉しそうに頬張ってるけどボクは打ちひしがれたよ!?
「………トワちゃん、おにぎりは主食なのであまり食べると直ぐにお腹が膨れてしまいますよ?」
「あ…ごめんなさい…もうおなかいっぱい……
「あらら………
遅かったかぁ………マリア姉様に叱られるかなぁ?
とは言え主食ではあるから大丈夫かな?
けどマリア姉様には言っておかないと……
「マリア姉様ー。」
「どうしましたエルちゃん?」
「トワちゃんがおにぎりを試食してたらおなかいっぱいになってしまいました、ごめんなさい……
「そうですか……でも、お米は東方では主食、なのですよね?」
「はい。お昼ご飯はおにぎりだけ、なんて事もある程にポピュラーな物ではありますね。」
「サンドイッチの様な食べ物なのでしょうか?」
「そうですね、概ねその認識で間違いないかと。」
パンに様々な具材を挟むのと
ご飯で様々な具材を包むの違いだからね。
「………では許しましょう。」
「ごめんなさいマリア姉様。」
「ごめんねマリアお姉ちゃん……
「いえ。おにぎりは美味しかったですか?トワちゃん。」
「うんっ!わたし、エルお姉ちゃんのおにぎり大好き♪」
「ありがとうございますトワちゃん………
アレでこんなに喜んでくれるのはちょっと照れくさいなぁ…………けどまぁ、トワちゃんが嬉しそうならいっか!
ちなみに、他の皆にもおにぎりは好評だった。
けど………
「何故貴女が作ると全ての料理がお米関連になるんですか!?」
「私が知りたいですよ!!」(泣)
煮れば炊きたて
焼いたら炒飯
蒸せばお餅
揚げたらおかき(揚げおかき)
どう調理してもお米になるのはもはや呪いでは!?
メシマズじゃないだけマシとはいえ、
以降、ボクの料理は必要な時以外基本禁止になってしまうのだった。
ちなみにお菓子は今まで通り作れたので【料理だけ米になる】みたいです。
なぜだ。
ちなみに、色々試したらおにぎりの具材は自由自在に変えれるようになったこと、そしてボクの作る米料理(?)には神聖魔法による強力なバフがかかっているので食べると一時的に能力アップする事を追記しておきます。
お米の聖女…………(ボソッ)
エル:怒っていいですよね?(^ω^)ニコニコ




