改変後1:女騎士さんのトロ甘膝枕
「うぅ…?」
再び目を覚ますと、ボクはシャルの膝枕でベッドに寝かされていた………
「む?起きたか。
エル、本当に身体は大丈夫か?
魔力枯渇で気絶して丸一日寝込んでたのにまた気絶したとか、休み足りなかったんじゃないのか?」
「…いえ、そんな事はありませんよ?」
(所謂“ただの尊死”ですし。)
「…イマイチ信用に欠けるな…まぁとにかく今は休め。
………お前の旦那としてのお願いだ。」
「イケ女ン…!しゅきぃ………♡」
「ははっ…何時ものエルだな。」
そう言って笑ったシャルが、ボクの髪をすく様に優しく頭を撫でてくれる……
いい匂いがするし、鍛えられて程よく締まった太ももの感触も良い……
思わず太ももに頬ずりしていると、シャルが頭を抱きしめてきた………
「エル……正直に言うと、オレはお前が気絶した時、甘く見ていたんだ。
朝になれば、目が覚めるだろうと。
それが、全く目を覚まさなかった時のオレの気持ちがわかるか…?」
「分かります…とは言えませんね…
「…何故、倒れるまで無茶をした………そうなるくらいなら、最初の【非殺傷武器化】だけしたら見守っていてくれれば良かったのに…!!」
間近にあるシャルの顔が…泣きそうな顔をしている……
ボクはそんなシャルの口に軽く唇を合わせ、微笑んでみせた。
「無理ですよ……だって、私は【聖女】だから。」
「その前にお前はただの少女だ!!オレより年下で!オレより華奢で!
そんなお前が、騎士であるオレより勇敢に戦うな…!
ソレはオレの役目だ…もっと………オレに頼れ…………エル…………オレは、エルに助けられてばかりだ…………
「シャル………
ボクの言葉に涙を流しながらそう反論したシャル……
ボクは、シャルを追い詰めていたの?
ボクが、原作からかけ離れた話にしようと、躍起になりすぎた…?
そんな事は無いはず………それに、あれが最善だった……はず………いや、本当に…?
精霊神様だって居た。クロウさんだって居た。
瘴気にトドメを刺したのはトワちゃんだ。
シャルもキリカちゃんも暴走する魔王様を押さえ付けるのは出来ていた。
そもそもアルカ様1人でずぅぅっと耐えてきたんだし、原作よりは早く到着してるから、魔王様を無理してまで正気に戻さなくても良かった。
アルカ様を治癒しつつ、多少時間をかけて魔王様を正気に戻せばよかった。
「……………ごめんなさい。」
だけど全てはもう終わった事だ。
今更、ボクが無茶して倒れた事は変わらないし、その後すぐに、尊死したのは迂闊だったとしか言いようが無い。
……………そう、
ただの尊死なのにこんなシリアスになってるのがいたたまれないの!!
気まずいよぅ…!!ただの限界オタクしてただけなのにこんな空気になるのは辛いよぅ…!!
あらヤダ精霊神様?馭者台からコチラをチラ見してニヤニヤしないで下さいまし?
運転に集中なさいな?
(謎の怪しいお嬢様言葉)
…………うん、まぁ、でもさ、悪いのはボクだしなぁ………
魔王様と戦った時に無茶したのは事実で、魔力も神聖力も枯渇させた上で気絶して、天界(?)で女神ルミエール様…ルル様と対話してた訳で。
うん…………所謂仮死状態と言っても過言では無いのでは!?
「………あれ?そう言えば他の皆は…?」
「ルイーゼ殿とクロウ殿が馬車番兼護衛で残っただけで残りは全員外で休憩中だ。」
「………もしやもうお昼時ですか?」
「そうだぞ。」
わぁ……午前中ずっと気絶してたのかボク………はずかし………
だから精霊神様はニヤニヤしながら見ないで下さい!?
きゅぅ〜……
「ふぁっ!?」
「ははっ、可愛い腹の音だな?」
「お恥ずかしい……
「なに、生理現象だから気にするな。飯は用意してあるぞ。」
そう言ってシャルが差し出してくれたサンドイッチを受け取ったボクは、流石に寝たままは行儀が悪過ぎるから座り直して食べ始めた……うん、マリア姉様のサンドイッチ、相変わらず美味しい。
「むぐむぐ…こくん………ふぅ………ご馳走様でした。」
「ん?もう良いのか?相変わらず少食だな。」
「はい。魔力消費や剣術修行をしてもお腹が空かないのは考えものですけどね。」
お陰さまで厳しい修行をしても筋肉が付かないこの身体。
勇者パーティーを結成してから、シャルに師事して本格的に剣術修行をし始めたのに未だに身体強化無しではマトモに剣が振るえない。
まぁ、その分神聖力がメキメキ上がっていったから身体強化の持続時間と効果が上がって聖女としては更に強くなれたし、剣術自体は上達したから完全に無駄だった訳じゃあ無いんだけど。
………あれ?そうなると原作エルーナって………いやそりゃそうだよね、無詠唱で神聖魔法を使ってた位だから、身体強化もお手の物だったはずだ………
だから剣も魔法も優秀なラスボスだった訳だし………
RPGで言えば裏ボスとか隠しボスと言っても過言では無い性能してたからなぁ……原作エルーナ………
具体的には
・シャルに押し勝てる剣術
・無詠唱or詠唱破棄で発動可能な神聖魔法
・魔術は詠唱破棄可能
・槍魔法を掴んでぶん投げれる
・キリカちゃんの放つ矢を素手で掴んで投げ返してカウンター出来る
・原作マリアさんの本気の隠密を感知可能
・そもそも暴走する魔王様をシャイニングバインドで拘束出来るチート神聖力
と、色々考えてたらシャルに優しく頭を引き寄せられて再び膝枕された………
「え、あの…シャル…?食べて直ぐに横になるのは体に悪いのですが………
「嫌か?」
「嫌では無いですけど……
「なら、今は何も考えずにとにかく休め。
体勢を横にすると良いらしいぞ。
耳かきをする時みたいにな。」
「…………ついでに耳かきしてくれたり?」
「なんだ?して欲しいのか?」
「出来れば……?」
「………やけに素直だな?いつも素直だが、いつも以上に。」
「いやぁ、あの、(尊死しただけなのに)心配をおかけしたのでここは素直に旦那様に甘えておこうかな、と。」
「フフッ、いい心掛けだ。これからも遠慮なくオレを頼って甘えてくれ。」
「………ダメ聖女になりそう♡」
なお、そのあとボクは耳かきされながら無意識にシャルに抱きついてそのお腹に顔を埋めて眠ってしまったらしい。
再び目を覚ました時にキリカちゃんに
『ん、ならキリカとも膝枕するべき。尻尾布団もしてあげる。』
と迫られたのは別の話。




