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第七話 山の主様、参上!

真っ赤になった鼻先を絆創膏で隠すが、まるでどっかの餓鬼大将だ。なんて、男子トイレの鏡に映る自分の姿に少々、飽きれながらも《そろそろ呼ばれる》仙田からのメールを見て気付けば、森の中に三島は立っていた。

さっきまで、授業終わりの誰もいない学校のトイレにいたはずなのに突然、変な場所に連れて来られ・・普通ならパニくるよな・・・

「・・ったく、真っ暗だな・・・」

一応、時間的には日が昇っているはずだが、周りはうす暗く、相変わらず音も何も聞こえやしなかった。

「ヤッホー・・・」

木霊を期待したが、音響は跳ね返ってくることはなかった。

「うわ〜、さみしい・・・」

「何バカみたいなことやってんのよ」

茂みを縫ってやってきたのは、生い茂った草の高さといい勝負の仙田だった。

学生服には、草が絡まりそれを気にすることなく仙田は三島に近づいてくる。

「ちゃんと服についた汚れを、ほろいなさい。ばっちぃでしょ」

そんな事を言うと、仙田は少々ムキになり、上を脱ごうと動きだす。

「こら!止めなさい!・・・ってか、やめて下さい。お願いします」

「よろしい、私に指図しようなんて百年早いわ」

「はい、すみませんでした・・」

仙田の体に取り憑いているこいつはいったい何者なんだろうか・・・そんな事を思いながら仙田をまじまじと見つめていると、向こうもそれに気づき「な、何よ・・」なんて、少々身構えながら反応を示す。

だが、三島はそんな事に全く気付かず、頭の中で色々な思考が飛び交う。

どういう生業で仙田の体に乗り移ったんだ?というか、なんで仙田はそれを了解して、この大会に参加してるんだ?・・っていうか、こいつは一体何なんだ。男の前で普通に服を脱ごうとするし、恥じらいってもんを持っていない。

「ちょっと、何よ。さっきから私の事見つめて・・・ねぇ、無視?シカト?」

仙田の問いかけにも応じず、三島はその思考回路の中で、ある結果を導き出す。

待てよ・・・男の前で普通に服を脱ごうとする・・・それってもしかして、仙田に乗り移っている者って、もしかして性別は男か?それなら、これまでの謎の行動も何となくだが、納得が出来る。・・・ん?男?・・・仙田は女。

「ちょっと、熱でもあんの?・・・ねぇ?聞こえてる?」

三島の目の前で手をヒラつかせるが、未だに三島は、それに気づかない。

女の体に男?・・それって、それって・・・

「それって、駄目だろーー!!」

「ギゃぁぁぁーー!」

突然の三島の叫びに驚く仙田、だがそんな仙田の両肩を逃がすまいと、三島は鷲掴みにする。

「おぃぃ!仙田ぁ!」

「えっ・・・なに?・・なに・・どうしたの」

血相を変えた三島に完全にビビる仙田。

「俺の問いかけに、正直に答えろ!」

逆らったらなにされるかわかったもんじゃない。ここは素直に従うしかない。そう思い仙田は力強く首を縦に振った。

一方、三島は質問をしようとするが、なんと言えばいいのかわからず、言葉が詰まる。

「おっ・・・」

「お?」

両肩を鷲掴みにされ、身動きが取れない仙田が首をかしげる中、三島の頭の中で再び思考が飛び交う。

聞いて俺はどうする?そもそも、性別なんてもしかしてないのかもしれない。・・いや、もしあったとして(性別が)もしも、男だったらどうする?

「おぃ、いつまでこんな事してんの!」

痺れを切らせた仙田のグーパンチが、三島の鼻にヒットする。

その場に倒れる三島。

「まったく、レディーに一体何しようとしてんのよ・・」

レディー・・その言葉に我に帰る三島。

「お前、女なのか?」

「はぁ?」

強気の『はぁ?』に一瞬、たじろぐが、なんか聞いたらいけないような気もするが、恥ずかしがりながら三島は聞いた。

「いや・・・だから、仙田じゃなくて・・・乗り移っているお前は・・その・・お、女なのか?って思ってさ・・」

「何、あんた私に興味でもあんの?」

明らかに煙たがれる目つきで倒れている三島を見下ろす仙田。

「冗談、誰が謎の寄生虫パラサイト甲に恋なんかするか!」

「何よ、その態度!っていうか、なんで甲よ!どうせなら乙の方がいい!」

「どっちだって変わんねぇだろ!謎な者に変わりはないんだから」

「乙の方が、何となく、しっくりくる」

「で?どっちよ」

仙田は一瞬、戸惑うが「もし、男って答えたらどうなる?」と質問返しをしてきた。

「お前を仙田の体から追い出そうとする気持ちが、より一層強くなる」

「そう、残念だけど、私は女性です」

そう言いながら仙田は倒れる三島に手を差し出す。

「本当だろうな・・・」

疑う目つきで仙田を見ながらも手を取る三島。

「なに、疑ってんの?人間じゃあるまいし。嘘はつきません。それに・・・」

「それに・・・?」

三島の襟を掴み、自分の顔の近くまで引っ張り耳元で「心も体も今は女性なのよ」なんて囁かれ三島は一気に鳥肌が立ち、仙田から離れる。

「なに、照れた?」

完璧に勘違いをして笑う仙田。

「お前・・・それ、男が女に変身した時に使いそうな言葉じゃねーか!」

三島の指摘に、段々と顔を赤くする仙田。

「嘘でしょ!男が女になる訳ないじゃん!」

「はぁ?何言ってんだ。今はそんな事ねぇんだよ!お前は昭和初期の人間か!」

「いや、そんなの嘘よ!だって男が・・女って・・いや、考えたくない」

顔を赤くしながら両耳を塞ぎ、今想像している事を振り払おうと頭を振る姿を見て、ようやく三島は仙田の体に取り憑いているのは女だと確信した。


「・・・それより、俺達、まだ敵に遭遇してないけど・・」

周りを見渡してもそれと言った動く物も見当たらない

「あぁそれなら、今、伊吹と交戦中」

知らないの?なんて顔で仙田に言われるが、三島はそれに驚く

「何だって!助けにいかないと」

「はぁ?冗談でしょ?」

「・・・えっ?」

「なんで助けにいくのよ」

仙田は倒れている大木に腰を下ろす。

「え?だって、仲間だろ?もしかして、助けに行く必要がないくらい圧勝してんのか?」

「う〜ん、どちらかと言うと押されてるかな?」

「だったらなおさら・・・」

続きを言おうとするが仙田の強い口調で三島の意見を押え込む。

「助けに言ってどうするのよ。負けたらその後、私達が頑張ればいいだけじゃない。むしろ、その後の方が敵も傷ついてるし、勝つ可能性は高くなるわ」

「お前、何言ってんだよ。あいつは、俺達を助けてくれたのに、俺達は助けないって言うのか?」

「助けた?私達を?いつ?」

「蚊の時だよ。あいつがいなかったら俺達は死んでた」

「違う、あれは私達を助けたんじゃないわよ。彼もそうしないと負けていた。だから、やったまでの話よ。いい?仲間仲間って言ってるけど、最終的には私達、戦う事になるのよ。今のうちに死んでくれれば、それはそれでライバルが減ってラッキーじゃない」

確かに・・そう納得する部分もあるが、そんな先の事はまだわからない。三島には目先の事しか入っては来なかった。

「確かに・・俺達は最終的には戦う事になるのかもしれないけど、今はまだ争う訳じゃないんだろ?だったら、助けるのが普通だろ」

三島の論理に溜息をつく仙田

「あんね・・それは、正義感ってやつ?」

「正義感も糞もあるか!ボケ。」

その時、遠くで大きな爆発音が森の中を駆け巡った。三島は驚くが、「大丈夫よ。問題ない」仙田は、落ち着きながらそう言い、後を続ける

「そういう偽善は、言わない方がいいわよ。仮に助けたとして次に私達を助けてくれる保証だってない。むしろ殺してくる可能性だってある」

助けようともしない、それはおそらく向こうもそうなんだろう。けど、そうしたら、ある矛盾点が出てくる。

「それだったら、どうしてお前達は仲間になったんだ」

「それは、相手に確実に勝つ方法があるからよ」

仙田は、悩みもせずに即答した。

「おそらく、伊吹も最後の戦いで私に絶対に勝てる必勝法があるから、仲間になったんだと思うわ」

「へぇ〜・・・って、そんなのはどうでもいい。とにかく、俺は知ってる人が死ぬって言うのは絶対に嫌なんだ!」

こんな話をしている間にも、伊吹と敵は戦い続けている。そう思うと三島の心は焦っていた。

だが、仙田はしばらく悩み、ある事を思いついた。

「・・・じゃぁ、交換条件を飲んでくれるなら、あいつがいる場所まで、案内してあげる」

「マジで?うん、その条件飲んでやる」

「即答かよ・・・」

「いいから、さっさとその条件とやらを言えよ」

「殺生をしなくなったのはどうして?って事聞きたいんだけど」

「なんだ、そんな事か・・」

「えっ?教えてくれんの」

「別にいいさ、そんぐらい。でも、後でな、場所まで連れて行ってくれたら教えてやるよ。でも、場所を教えてくれた後でな」

「はぁ?それは無しよ。大体、連れて行った後に教えてくれる保証もないじゃない」

「そっちこそ、俺が虫も殺せないほどの理由を言った後に場所を教えてくれる保証だってどこにもないだろ。こういう場合は、言いだしっぺが妥協するもんなの」

「まぁいいわ、だったら絶対に教えてよ」

「OK、俺が死んでなければ教えてやるよ。で?場所は」

「大丈夫、もぅ来る頃だから」

仙田がそう言うと、森が段々と騒がしくなっている事に三島は気がついた。

「ギャア、ギャァ」と不気味な鳥のような鳴き声がこっちに段々と近づいてき、息使いの荒い伊吹が茂みから飛び出してきた。

伊吹の体を覆うコートは所々破れ、そこからは血が流れている。

「よぉ、お前等、こんな所にいたのか・・・」

「大丈夫かよ。敵、そんなに強いの?」

かなりやられている伊吹に、少々焦る三島

「強い?冗談だろ、あんなの強いに入らねぇよ。ちょっと手こずってるだけだ。」

「それって強いんじゃ?」

「うるせぇな、おぃ餓鬼。これはある意味、お前のせいでもあるんだ。どうにかしろ」

「どうにか・・・って、え?」

「ほら見ろ。お前のせいで囲まれちまった」

周りを見渡すと、木の至る所に猿のような、黒い物体が張り付いている。目はこの薄暗い森で気味悪く赤く光り「ギャー」だが「グエー」だが、叫び、完全に三島達を囲んでいた。

「仙田、なにあれ」

「私は博学者じゃないっての!私だって知らないわよ。言っておくけど、私は今回、何もしないわよ。場所まで案内してあげたんだから」

仙田は、囲まれているにも関わらず、まったく大木から腰を上げようともしない

「冗談!教えたもなにも、向こうから来たんだろ」

「あぁ、それから今回は、別に私、守ってくれなくていいわよ」

「はぁ?なんで」

周りを囲んでいた猿。だが、その内の一匹がフライングで、仙田に飛びかかった。

「おぃ、仙田!」なんていう三島の声も届かぬうちに仙田の右手は、飛びかかってきた猿を一瞬にして突き刺していた。

「こう言う事。このぐらいの大きさなら、別に楽勝だから」

右手を振り下ろすと、ダラリとした猿は、仙田の右手からずり落ち、地面にドサリと落ちた。

その光景に、周りの猿の怒りは増し、叫び声がより一層強くなった。

「あぁあ、やっちまったよ。あのお譲ちゃん」

怒り狂う猿を横に腰が引ける三島。そして先ほどから落ち着いて吸う事も出来なかったタバコに火をつける伊吹。

「おぃ、餓鬼。この状況を、どうにかして打破しろ」

「冗談、無理です」

「あのお譲ちゃんは、別に守らなくていいんだろ?だったら、しばらくの間、俺を守ってくれねぇか?」

「はぁ?なんでよ」

「とにかく、あの猿を一匹生け捕りにしろ。」

伊吹がそんな事を言うと、タイミングよく猿が一匹、三島に向かってダイブしてきた。

「ぬおぉっ!」

バラバラに並んだ猿の歯が、三島の顔に食らいつこうと飛んでくる。

とっさに避け、地面に不時着する猿。そして少々強引だが、その猿の背中を三島は踏みつけた。

暴れる猿、骨格が人間と似ているとは言っても、関節を固めるのは容易な事ではなかった。必死に片腕を掴み背中にまわし、手首を返すが、その時、ボキッっと猿の骨が折れる感触が、三島に伝わってきた。

猿も痛みから「ギャー」と口から大量に唾液をまき散らし、暴れまくる。

「あぁ〜ごめんよ・・わざとじゃないんだ」

猿に謝る三島。

捕らえるのを確認すると、伊吹は注射器を取り出し、首から血を抜き取った。

「うし、もぅ放していいぞ」

三島が猿を解き放つと、その猿は腕を引きづりながら森の奥深くへと逃げて行ってしまった。

「おぃ、いいのか?」

逃げた猿を指さしながら伊吹に問いかける。

「問題ない。蚊の時と同じだ。時間がかかるから、それまで俺を守れ」

伊吹は右腕の袖を上げると、腕には大量の円陣が刻まれていた。

その内の一つの円陣に先ほど採取した血を一滴垂らし、ブツブツと唱え始めた。

猿は、むやみに攻撃ができず、木の上から三島達を睨み声を上げる事しかしなかった。

その間にも、伊吹の呪文はどんどんと出来上がっていく。

次第に伊吹の小さな声の呪文は、森中に響き始め、伊吹の唱えた呪文を森が、後に続いて唱え始めているように聞こえだした。

森の異常な現象に猿たちは、恐れをなし三島達から離れようと木々を上手に飛び移り始めた。

「砕け散れ」

伊吹がそう言うと、猿たちは一斉に砕けボロボロと地面に肉片が落ちて行った。



「大分苦戦したわね」

猿の血が付いた木をなぞりながら仙田は腰を下ろす伊吹に話しかけた。

「いや、突然の出来事に驚いてね・・・なんで、俺の所に敵は現れたのかなってな」

「それは、つまりそう言う事でしょ。私達より、あなたが弱いと判断されたから」

まったく話について行けない三島を置いてきぼりに会話は続く。

「ありえねぇ、俺とお前なら俺の方が強いと判断されていた。そして最下位の餓鬼がお前と組んでより一層、お前と俺の差は開いているはずだ」

「地球君のランキングは、数字じゃ計算ができないって事よ」

「・・・なるほど、つまりお前らより、俺の方が弱いと?地球は言ってんのか」

「正解。・・・見てわかるでしょ、あなたはこんなに傷だらけなのに、私達はかすり傷一つない。地球が判断するまでもないわ」

正直、服で隠れているが、三島の体にも猿の引っ掻き傷で至る所に傷はある。・・まぁ、伊吹程じゃないが・・

「まぁ、これでしばらくは、私達も楽出来るのかな?あんたが一人で頑張ってくれるから・・ほら、さっさと最後の一匹殺しなさいよ。まだ残ってるでしょ」

「あぁ、そうするか・・」

伊吹は重い腰を持ち上げ、最後の一匹がいる方向に右手を向ける。

「なぁ、どうしても殺さないと駄目なのか?」

そう言ったのは、もちろん三島だ。木に寄りかかりながら伊吹に話しかける。

「殺さないで、この戦いに勝つ方法ってないのかよ・・」

「一応、あるにはある。・・・降伏すればいいんだ」

伊吹は、三島の情けなさに溜息をつく。

「だったら・・」

「猿に降伏できると思っているのか?・・・あいつ等に出来るのは勝つか逃げるかだ。降伏なんて高等テクニックできる訳ないだろ。事実、あいつはまだこの世界で俺から必死に逃げている・・・まぁ、もぅ死んだけどな」

伊吹は、そう言うと手を下ろした。

スッキリとしない三島。そんな三島に伊吹が近づいてきた。

「助けてもらってこんな事するのは、常識はずれだと思うんだが・・・」

そう言うと、伊吹は何の前触れもなく三島を殴った。

殴られバランスを崩す三島。だが、足で踏ん張り、逆に伊吹を殴り倒した。

「あっ、ごめん、つい癖で・・・」

倒れる伊吹に手を差し出すが、伊吹はその手を払った。

「・・・ったく、これから俺が、いい事言おうとしたのに」

首を鳴らしながら立ち上がる伊吹

「ごめん、やり直す?」

「あぁ、そうする!」

伊吹は、両手を三島の頭に振り下ろした。

さすがに、それを喰らった三島は頭から地面に叩きつけられた。

「いいか?俺は、お前とは違って、この戦いに誇りを持っているんだ!そんな甘っちょろい考えで、生き残れると思うなよ!俺は、俺の種族を繁栄させるために戦ってるんだ!」

三島は、口に入ってきた土砂を吐きだしながら立ち上がる。

「お前だって人間だろ」

三島の言葉に伊吹は拳で返した。三島はそれを避けて、伊吹に近づき、頭突きを喰らわせた。

「お前は、この戦いを汚い物とでも見ているのかもしれないが、これは誇り高い戦いなんだ!だから、正々堂々と戦おうとしないお前が俺は憎い!」

鼻を抑えながら伊吹は三島に言ってくる。三島が倒れていて上から見下ろすように伊吹が言っていたら、説得力があっただろう。でも、実際は三島は元気に立ち上がり、伊吹は鼻を抑え、ちょっと鼻血が出ている。

「それは、お前が背負っている物があるから、言えることだろ。俺は何もない」

伊吹は、鼻を抑えながら痛みを和らげようとしているのかその場をグルグル動き回る。

「あぁ、それもそうだな。・・だから、俺はこの戦いに勝ち残る必要がある、どんな事をしてもな・・」

伊吹はそう言うと仙田の近くに寄り、仙田の頭に手を乗せ「まさか・・」そう呟く仙田の頭から何かを掴み取るような動作を取った。

すると、仙田は何か抜け落ちたかのようにその場に崩れ落ちた。

「仙田っ!」


倒れる仙田に駆け寄りるが、仙田はピクリとも動かない。

『おそらく、伊吹も最後の戦いで私に絶対に勝てる必勝法がある』記憶の仙田が三島の頭の中で話しかけてくる。

「仙田に何をした!」

「これで、形成は逆転だ。俺がまた一番に返り咲きだ。・・・返してほしけりゃ、俺を向こうの世界で探すんだな。」

そう言うと、伊吹は森の中から消えた。

「仙田?・・・おぃ、仙田」

頬を叩いても全く起きようともしない。首に手を当てると心臓はしっかりと脈打っていた。

「・・・気を失っているだけか?仙田?・・・起きろ〜」

まったく動かなかった仙田の眉が少しだが、動いた気がした。

良かった〜なんて思う前に、三島と仙田は森から姿を消し、夕日に染まる校舎裏に飛ばされていた。

泥だらけのはずだった三島の制服も、血まみれだった仙田の制服も奇麗なまま、校舎裏へと飛ばされていた。だが、仙田の意識はまだ戻らなかった。

「おぃ、仙田、仙田?仙田く〜ん、仙田さん!仙田殿!仙田様・・・」

眉は動き、おそらく声には反応している。だが、決定打がない。他に呼び方・・・なんて三島は頭を捻る。

「・・・千尋」

小さな声でそう言うと仙田の目がカッと開いた。

「はぁ〜、よかった。一時はどうなるかと思ったよ・・・」

一瞬、驚いたが一安心と胸を撫で下ろす。

「三島・・・君?」

状況が把握できない仙田

「ったく、伊吹の野郎、びっくりさせやがって・・・何が返してほしけりゃだよ。何を返して欲しいってんだよ」

三島の独り言の最中に仙田はある事に気づき、抱えられている三島の手を必死に振りほどこうとする。

「どうした、仙田・・おぃ、仙田」

「いや、いや、・・・イヤっ!」

「おぉ、悪いもぅ大丈夫だよな。た、立てるか?」

三島は手を離すと仙田は、三島の足から転げ落ちる。

「おぃ、大丈夫か?」

倒れる仙田の肩を掴み、上体を持ち上げる

「いやっ!離れて!」

仙田は、必死に三島の腕を振りほどこうとするが、動きがあまりにもおかしい

「せん・・だ?」

「嫌なの、嫌なの、嫌なの!嫌なのっっっ!」

途中から金切り声になってくる仙田に思わず三島は、声を失う。

そして仙田は、両手で三島を引き寄せた。そして、声にならない小さな声で「お願い・・・見ないで・・」そう呟いた。

訳の分からない三島。

だが、その三島の足元に温かい液体が染み渡ってくる。

何かと思い、下を覗こうとするが、

「いや、見ないでーーー!」

仙田の金切り声が、校舎裏に響きわたる。




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