第六話 今日は焼き肉だ!
「今の見たろ。この引き金を引けば、お前は燃える。残念だけど、俺はお前を認めない。」
伊吹は、右手で作った拳銃を三島に向けたまま動こうとはしない。
「だから俺を殺すんですか?」
三島も、拳銃を向けられたまま動く事が出来ない。
「その通り、チームから抜けるにはその方法しかない。」
「そうですか・・」
突然三島は、わざとらしく深くため息をついた。
「なんだ、冗談だとでも思っているのか?」
「別に・・・」
「死にたくないか?」
「別に・・・」
「死ぬのが怖い」
「別に・・」
「命乞いしないのか?」
「別に・・」
「お前、本当は死にたくはないんだろ?」
「別に」
「本当は命乞いがしたい」
「別に」
「お前、俺を舐めてる?」
「別に」
先に感情を見せ始めたのは伊吹の方だった。
「ふざけんなよ」
「何がですか?」
怒りを見せる伊吹を三島はせせら笑う。
「てめぇ、何考えてやがる」
「別に何も・・・ただ、お前に本当に俺が殺せるのかな?って思って」
伊吹は、三島の態度を見て右手を降ろし、深くため息をついた。
「正解だ。一定の条件が満たされなければ、俺の力は発動しない。だから俺の右手では、まだお前を殺すことはできない」
「まだって事は、いつかは殺せるみたいですね」
「それも正解。だが、殺すのは、この大会の最後でだ。」
伊吹は、電柱で三島達のやり取りを見る仙田を指さす。
「あいつにも言われたかもしれないが、俺達に絶対、隙なんか見せるなわかったな?見せた途端、それは死を意味する」
「・・・だから、正体も伏せておくって事ですか」
「いや、俺は別に正体を隠すつもりはない。俺は魔術師だ」
「へぇ〜魔法使いですか」
「なんだ、受け入れるの速いな」
「それが俺の取り得です」
「で?お前は一体何なの?」
「仙田にも言われたけど、俺は人間です」
「その仙田とやらにも言われたかもしれないけど、ただの人間に天狗が勝てるとでも思っているのか?」
「俺が生き証人です」
「だから、その本人が・・・あぁいいや別に・・俺、もぅ帰るわ」
そう言うと、伊吹は目の前から突然、いなくなった。
「なに、伊吹と争ってんのよ」
電柱から仙田がようやく降りてきた。
「いや〜死ぬかと思ったよ〜。あぁ〜やな汗かいた」
動かせなかった体を動かし、腕などを伸ばす。
「その割には心拍数も呼吸も特に乱れてなかったけどね」
「・・・そんな事までわかるのかよ」
「私の身体能力舐めるなよ。嗅覚が研ぎ澄まされてるからあんたの場所もすぐに見つけれたのよ」
「なるほど・・・伊吹って人、魔法使いだってさ」
「そうね。・・・でも、伊吹って本当の名前じゃないわよ」
「えっそうなの?」
「彼、日本人じゃないもの。今はそう名乗ってるだけよ」
「へぇ〜」
「それじゃ、私もそろそろ帰るわ。」
そう言って消えようとする仙田の腕を掴み三島は引きとめた
「ちょっと待って。どうやって帰るの?」
「ちょっと触んないでよ。ってか、そんなのわかるでしょ」
仙田は、掴まれた腕を振りほどくが、三島は帰り方がわかるでしょ、とか言われてますます混乱していた。
「全然、わかんねぇ」
「今迄、どうやって帰ってたのよ」
「し、死にそうになって気付いたら元の場所にいた」
「じゃぁ私が、ここで殺してあげる。歯くいしばりな」
「いやいやいやいやいや、それはいい。遠慮します」
「・・・・もぅ仕方ないな!私の手握って。戻る所、病院だけどいいでしょ」
「助かります」
三島は、仙田の手を握り、目を閉じ、目を開けるとそこは病院ではなく三島の部屋だった。
「あれ?戻れた?」
だが、仙田の手はまだ握ったままだ。横を向くとそこには仙田がいた
「何やってるのよ!あんた戻れるんじゃない!」
「いや、俺、戻ったつもりはないぞ」
「嘘つけ!今、こうして戻ってきてるんだから!わざとか?わざとやったのか!か弱い女子を無理やり部屋に連れ込みやがって」
「冗談!お前のどこがか弱いんだ!」
「ほぉ、なら彼女ならどうだ」
そう言うと、仙田が元に戻った。
仙田は「いや、見ないで」なんて言いながら恥ずかしそうに体を隠しながら、三島のベットから毛布を奪い、上から羽織り、毛布から顔だけを出し、涙を眼に浮かべながら、潤んだ目でこっちを見てくる。
「確かに、か弱いな・・・」
なんて呟くと「ヒィ」なんて怯えた声を洩らす。
「いや、冗談だから」
そう言いながら玄関に向かいレジ袋から冷蔵が必要な物を急ぎ、冷蔵庫の中へ放り込む。
「あっ、私、病院いかないと」
「あぁそうだったな。タクシー呼ぶか?・・・いや、飛んで行った方が早いか」
「私は、そんなこと出来ないもん。」
毛布を引きずりながら、三島に寄ってくる。
「いや、彼女に代ってもらえばいいんじゃないか?」
「それにこの服装だし・・・」
「よく言うよ。その服装で俺の所に飛んできたくせに」
「違うもん!私は嫌だったの!着替えようって何回も言ったのに、動きやすいからってそのまま病院飛び出して・・・なのに・・ふ、ふ、ふく、ふく、服を脱ぎだすって言い始めて・・」
「あぁ・・・ほんと、伊吹って人が助けてくれて助かった」
「伊吹?」
キョトンとした顔で三島を見上げる仙田。
「ん?何言ってるんだ?・・・まぁとりあえず、服は脱がずに済んだって訳だ」
「で、でも、それと、三島君が・・・」
「俺?」
「三島君が・・・私のム・・ムムム、胸を・・・」
「いや、違うんだ。あれは気付かなくてだな・・・」
「気付かないって・・・気付かないって、それって、聞くまでもないですけど、あぁ言う意味ですよね?」
「いや、ほら、あれだ・・・諦めるな、明るい未来が待ってるはずだ」
とまぁ、とりあえずその場も、収集が付き後の問題点は、どうやって仙田を病院まで連れて行くかだった。彼女は、この服装で外に出歩きたくない。だが、服と言っても三島の服ではサイズが合わない。
と、なれば、方法は一つ。
「美野、何も言わず、服貸してくれ」
「変態」
田村は、そう言うと自分の部屋の扉を勢いよく閉めた。
「美野、違うんだ。変な意味合いで、そんな事を言ってる訳ではないんだ!」
三島は、田村が部屋の鍵を閉める前にドアノブを握り、開けようと踏ん張る。
「ギャー!開けようとすんな!それに、変な意味合い以外に、どう捕らえろって言うのよ!」
「わかった。正直に言う、とりあえず俺の部屋まで来てくれ!」
「ふざけんな!部屋で一体、何しようってんのよ!」
「違う、ちょっと俺の部屋で、説明しにくい状況があるんだ!」
「何よ、知らない裸体の女性でも、蒲団の上で寝てたとでもいうの?」
「惜しい!知っている人だ。お前も知ってる人!」
「そりゃもっと、どういう状況だ!そして、私にどうしろと!帰れ!変態野郎!」
部屋へ戻ると、毛布にくるまった仙田が期待に目をキラつかせながら、結果を期待する。
「やっぱり、俺の服じゃ駄目?」
その問いかけに仙田は首を横に何度も振った。
「嫌、それにサイズも合わないもん」
「じゃぁ仙田が、美野にメールで状況を説明して、服を持ってきてもらうって言うのはどうだ?」
「う・・うん、そうして見る・・」
仙田は、携帯を取り出しメールを打とうとするが、打とうとする指が止まった。
「どう説明すれば、いいんでしょう」
「あぁ・・たしかに・・」
「・・・で、検査で病院にいたんだけど、なんやかんやで、元の部屋に今、いると」
頭をかきながら田村は、三島の部屋で毛布にくるまる仙田に話しかける。
「そう、なんやかんやで気付いたら、ここにいたの」
必死になんやかんやで押し切ろうとする仙田
「元、あんたこれはどういう事?」
「いや・・・なんやかんやだ・・・とりあえず、病院に連れてかないと・・だから仙田に服貸してやってくれ。」
「まぁ・・それは、別にいいんだけど・・・あんたはいつまでここにいるつもり?」
「はぁ?」
「部屋から出て行けーー!」
田村に勢いよく追い出される三島。「ここ俺の部屋なんですけどー!」と言う主張も虚しく、空を切った。
田村は、三島を外に追い出し扉を閉めた。
「まったく・・・千尋、あんたら一体どんな接点があるって言うのよ」
仙田に服が入った紙袋を渡し、覗き窓から三島が動いていないか確認する田村
「えぇっと、同じ電車に乗ってた・・とか?」
「それだけ?」
「まぁ・・今の所は・・」
「それだけで、どうなったらこんな事になるって言うの?」
「それは・・なんやかんやで・・」
「なに、もしかして千尋、もしかして悪に惹かれる年ごろ?」
「そ、そんな事は・・・それに悪じゃないでしょ?」
(会話中の彼女らの動作は、ご想像にお任せします)
「あぁ・・そっか、元ってしばらくグレてた事あったのよ」
「えぇ!うっそ」
「ホントよ。・・・えっと、多分ここら辺に・・」
そう言いながら、田村は三島の部屋を勝手に荒し始め、テレビの裏側からタバコを見つける。
「ホラッ悪ぶって、タバコ買ったくせに結局、3本しか減ってない・・多分、ここに隠したのも忘れてるんじゃないかな?」
「でも、どうしてグレてたの?」
「ん〜、千尋は入院してたから知らないと思うけど・・まぁ色々とね・・・必死に悪者を演じて、でも結局、根が優しいからいつも通りに戻っちゃったの。・・・ほんと、馬鹿だよね」
呆け始める田村、そして服を着替え終えある事に気付く仙田。
「あ・・あの」
「ホワッ!やだ、自分の世界に入ってた。ごめん、今のなし、忘れて」
「いや・・・そうじゃなくて・・これ・・」
田村の服を着た仙田だが、やはりサイズが合わず、首元から下手すりゃ肩が片方はみ出るんじゃね?って言うくらい露出され、袖からは手が全く出ていなかった。
「あぁ・・小さいの選んだんだけど、やっぱり無理だったか・・ちょっと待ってて、昔のジャージ持ってくる」
そう言うと田村は部屋から出て行き、仙田は再び、毛布の中へと潜り込んだ。
扉が開き、三島が振り返ると田村はすばやく扉を閉めた。
「おぃ、俺ってそんなに信用ならないか?」
「念のためよ、それから、まだ終わってないから、私がいないからって入っちゃ駄目だからね」
「へぃへぃ」
田村は、この部屋から反対側にある階段へ向かい、足音を立てながら階段を上がって行った。
上の階で扉が開く音が聞こえ、閉じると同時に、三島の部屋の扉が開いた。
「あんた、昔悪だったって?」
扉が少し開き、そこから少しだけ顔を出す仙田がそんな事を言ってきた。
「はぁ?誰からそんな事聞いた?・・・って美野か・・」
「何で悪だったの?大人の不条理なルールとでも戦いたかったとか?」
「・・・今、お前はどっちだ?」
「借りてる方」
「お前な・・・日常生活は主に仙田が、やるんじゃなかったのか?」
「いいじゃない。それに、千尋の奴、こんな蒸し暑い中、毛布にくるまって寝ちゃったんだから」
「マジか・・・寝てんのそれ?」
そう言われてみれば、扉に必死に寄りかかっているようにも見える。
「うん、寝てる。だから今、私も非常に眠い」
「なら寝れよ。」
「そうだけど、どうしても聞きてい事があったから」
「なに、俺に聞きたい事?」
「あんたが、殺生をしたくない事とグレていた事って、なにか関係あるの?」
「はぁ?・・おまっ・・・何言ってんだか・・・早く寝なさい」
明らかに動揺する三島。
「当たりか・・」
仙田はそう言うと顔を引っ込め扉を閉めた。
三島の部屋の扉が閉じると同時に、上の階で扉が開き、上から田村が上手に飛び降りてきた。
「部屋、覗いてないだろうね」
「覗いてません」
「よろしい。・・では、引き続きあんたは、そこで待機」
田村は、再び部屋に入ると、扉の中から声が聞こえてきた。
「千尋〜服持って来たよ〜・・・ってあれ?千尋?・・こらっ、千尋!寝るな!」
田村からようやく了解を得て、中に入ると先ほどとは、服装が違う仙田に多少の胸を貫く衝撃を受けるが、その事を田村に悟られ、三島は田村の蹴りに、かなりの衝撃を受けその場に倒れた。
ダボダボのジャージを身にまとった仙田は、眠たそうに眼を擦りながら携帯を覗き「あっ」なんて声を上げた。
「どうかしたの?」
三島を倒し、服についた汚れを手でほろいながら、田村は聞いた。
「・・・あの、時間が・・・」
「時間?」
デジタルの目覚まし時計に目をやると、テレビ的に言うとゴールデンタイムが、始まりそうな時間だった。
「病院・・閉まっちゃってます」
「うそ・・・じゃぁもぅ手遅れ?」
仙田は小刻みに頷き、田村は残念そうに頭を掻きむり、三島は今日見たいテレビ番組がないか、頭の中でテレビ欄を思い出すが、見たい番組が何もない事に溜息を洩らす。
「元、お腹すいた」
さっきから倒れたまんまの三島に猫のような澄んだ目で、こっちを見てくる田村。
「飯の時だけ、表情変えやがって日頃、俺に優しくない人に与える餌なんてねぇよ」
倒れる三島の腹に再び田村の蹴りが入る。
「元、お腹すいた」
「お前な・・・態度と表情がミスマッチしてるぞ。むしろ、その表情が気味悪く見える」
「今日ぐらいいいじゃない!千尋だってお腹すいたよね?」
田村の急な振りに返事に困る仙田は、オドオドするしかなかった。
「大体、食器がないって!」
「だったら、食器を少量ですませる料理を作ればいいじゃない!」
「作るって言ってもよ・・・何があるって・・」
悩みながら一つの答えが思い浮かぶが、これはさすがに無理。って事でなかった事にしようとしたが、田村は見逃さなかった。
「何かあったみたいね・・」
勝ち誇ったかのように、三島を見下す田村。
「いや・・あったにはあったんだが・・・」
「それをやれ」
段々と目をぎらつかせてくる田村に負けて、三島は台所へと向かった。
しばらくすると、三島の部屋の窓からは香ばしい匂いと、田村の喧しい声が聞こえてくるようになった。
部屋の中心に肉と野菜が置かれたホットプレートが敷かれ、それを囲むように三島、田村、仙田が座っていた。
「いやはや、焼き肉なんて久しぶりだねぇ。いや、今年初めてだ!」
なんてビール片手に、喜びはしゃぐ田村
「はぁ・・しばらく部屋からこの匂い抜けないだろうな・・」
溜息をつきながら、肩を下ろす三島
「・・・・」
この状況についていけない仙田
「美野!てめぇ、野菜も食いやがれ!さっきから、肉ばっか食いやがって」
「いいの、久し振りに温かい料理を食べてるんだから」
「そんなんじゃ、ニキビできちまうぞ!」
三島は田村の皿に強制的に野菜を放り込んだ。
「あぁっ、元!この野郎。はい、千尋、野菜パス」
「え?・・・あぁ、ありがとう・・」
田村は仙田の皿に野菜を移す
「仙田、ありがとうじゃないだろ、嫌なら嫌って言えばいいじゃん」
「いいの、私、お肉そんなに食べないから・・」
「もしかして、菜食主義者?」
「ううん、肉よりは野菜の方が好きなだけ・・」
そんな事を言いながら、縮こまる仙田に田村が、腕を回し引き寄せる。
「ほら〜、だから私の行動は正しかったのよ。ねぇ〜千尋〜、いや〜かわいい奴だねぇ〜」
田村が頭を撫でると仙田は落ち着くのか、なぜか表情が和らぐように見える。
「・・・ほらっ、千尋、飲めっ」
三島がボケっとしていると、気付かないうちに田村は仙田に無理やり酒を飲ませようとしていた。「イヤ〜」なんて小さな声で言いながら仙田は必死に拒否している。
「コラっ!美野、お前、無理やり飲ませようとしてんじゃねぇ!」
「えぇ〜だって、千尋が酔ったところ見てみたいんだもん・・」
「未成年の喫煙、飲酒は法律によって禁止されてんだよ」
「コップには酒が注がれ、テレビの裏にはタバコが隠されている奴にそんな事を言われても説得力ないね」
田村の言葉に思わず納得する三島
「・・・だとしても、強制的に飲ませていいと言う事には、ならないだろ」
「まぁそれもそうね・・」
すると田村は、仙田のコップにビールを注ぎ、仙田から離れた。
「おぃ、美野。言葉と行動が矛盾してるぞ」
「違うもん。これは強制じゃないもん。この後は千尋の判断だもん・・・さぁ千尋、これを飲まなければ、捨てられてしまうよ。勿体無い精神の千尋には少々、堪えるんじゃないかな〜」
まるで術をかけるかのように両手の指をヒラヒラとさせ、仙田に何かオーラを飛ばす田村。
仙田は、机の上に置かれたコップと少しの間、睨めっこを始める。
「・・お、おぃ仙田・・無理はするなよ・・飲んで倒れられても困るからさ・・」
三島は止めようとするが、仙田はコップを両手でつかむと一気に中に入っている液体を一気に飲み干した。
「「おおおぉぉぉ・・」」
あまりの飲みっぷりに声を合わせて唸る二人。
そして仙田は、深く溜息をつき、コップを両手で持ったまま横に倒れた。
「・・・お前のせいだぞ、無理に飲ませようとするから」
「うん、今、かなり反省してる」
二人の会話が聞こえ、目を開けると三島と田村の顔が映った。
「おっ、気がついたか」
「ごめん、私のせいだね。大丈夫?」
心配そうに見つめる二人、周りを見ると部屋はプレートや空き缶も綺麗に片づけられ、元通りの部屋になっていた。そして、仙田は今、三島のベットで横になっている事に気づいた。
「今日は、もぅ遅いしな・・・俺の部屋で泊ってくか?一応、布団もあるし」
三島の考え無しの発言に驚くが、すぐに田村に頭を叩かれる。
「あんたね、不謹慎にもほどがあるわよ。私の部屋、上だしそっちに泊めさせます」
美野ちゃんの部屋・・・そう思うと思わず「ヒッ」と小さく声を漏らし、その声を三島は見逃さなかった。
「おぃ・・・美野。お前、まさか・・あの部屋に大変身を遂げてるって事はないよな?」
「はぁ?な、何言ってんの。大丈夫に決まってるじゃない」
布団をギュッと握りしめる仙田を見て、三島はベットを飛び越えベランダに飛び出す。
「ギャー!待て!元、止まれ!」
三島は、止めようとする仙田の包囲網を突破し、ベランダから上の階の部屋を覗き見るとそこには・・・・
三島は、先ほど見た光景を処理するため、しばらくの間、ベランダでうずくまり、三島に目を合わせようとしない田村に攻撃を始める。
「美野!お前、またあの惨劇を繰り返そうとしてんのか!ちょっと、成りかけてるじゃねぇか!」
「ごめん、悪気はないの」
「この前よりは酷くはなかったが、あの部屋に仙田を泊らせようと言うのか!」
アレよりも酷い光景?・・仙田は、少し想像してしまい顔から血の気が引いてくる。そして一瞬、戻しそうになる。
「だって、あんたの部屋に千尋一人を泊らせるのが不安だったのよ」
「だったら、お前も泊ってけばいいだろ。お前もあの部屋は、さすがに嫌だろ」
戻しそうになった気を抑えようと悶えるが、段々とヤバくなってくる仙田。ベットで一人、格闘する仙田に気づかず、ベランダで交渉する二人。
「えっ?マジ?泊っていいの?・・やった、久し振りに綺麗な布団で寝れる。」
「その代り、明日は大掃除だからな!」
「OK!その代り、手伝ってね」
「よし、なら仙田は俺の部屋で泊まるの決定な」
「えっそれは駄目よ。」
「はぁ?ならどうするんだよ」
「あんたは上の階。私達はここで寝るから」
「冗談、あんな部屋に俺を放り込む気か!」
あんな部屋・・・仙田は思わず、想像してしまいストッパーが外れた。
「千尋〜私達、この階で寝る事に・・・って千尋?」
仙田は、急ぎトイレに駆け込み、トイレの外に聞こえる、聞こえたくない音を二人は、流れる水の音と一緒に聞き流す事にした。
「お前、もぅ絶対に仙田に酒飲ませるなよ・・」
「そうします」
その後、田村と仙田がベットで一緒に寝て、三島は布団で巻かれその上にロープで縛られ、玄関に放り出された。
鼻の上に蚊が一匹止まり、食事を始め、手で退かそうにも手も完全に縛られどうにもできない。
「やっぱ、ついてねぇ・・・」




