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第四話 重力加速度?無視

「こんばんわ〜・・・そしてお邪魔しま〜す」

仙田は、先ほどとは打って変わって勝手に三島の部屋に上がり込んでくる。

「ん?なんだよ。せっかく来てやったのに、何か聞きたい事があるんでしょ?」

「こ・・・」

「こ?」

「ここは、二階だ!」

「はい、そうですか」

そういいながら、仙田は三島とテーブルをはさんで腰を下ろす。

「そうですか・・って、どうやって上がって来たんだよ」

「ジャンプ」

「ありえねぇ」

「なんだよ。あっちの世界だったら、すんなり受け入れてたくせに!」

仙田も勝手に戸棚から煎餅せんべいを見つけ勝手に開けて食い始める。

「当たり前だ。今は現実なんだからな」

「だから、どっちも現実だって言ってんでしょ」

「今日は、散々な目に遭ったって言うのに、これ以上なにかあるのかよ」

「あるよ。多分ね・・・食べる?煎餅」

「あぁ、ありがとう・・で?あれは一体何なの?」

あれ?この煎餅って持ち主、俺なんじゃ・・・まぁ触れないでおこう。

「どの、あれ?」

煎餅をテーブルに、こぼしながら仙田は、首をかしげる。

レディーが、そんな行儀悪い事するな!と言うのは心の中にしまっておき。

「全部だ」

「全部って言われても・・・とりあえず、あの世界についてだけど、あの世界に呼ばれたら敵を殺すか、自分が殺されない限り、元の世界には戻れないって言うのはいい?」

「その敵って言うのは?」

「チュパカブラみたいな未確認生命体や絶滅危惧種の動物。もしくは、伝説の生き物・・まぁ生存していればだけどね」

「ん?・・どうして戦わないといけないんだ?」

「それは、自分達の種族の繁栄のため。最後まで勝ち残れば、その種族が、今度の地球の支配者になる」

「・・・・はぁ?」

「人間の歴史でいえば、初代は恐竜と呼ばれるトカゲ君が、優勝したでしょ。そして、次に優勝したのが、現在人間と呼ばれる哺乳類って訳。」

「いや、ちょっと待った。・・・意味が全く、わからん」

「・・つまり、地球の気まぐれ。人間に飽きてきたって言ってもいいのかな?また新たな支配者を作りだそうとしている。人間同士が国を作って、互いにいがみ合うような、スケールのちっちゃなお話じゃなくて、生態系を崩壊させるような事が今、起きてるのさ」

三島は、このわからんちんの説明を聞いて受け入れられる自分に驚きながら、改めて思った事がある。

「あの・・・・それが、一体、俺にどんな関係が?」

「だから、最初に言ったでしょ。ごめんって、この子が勝手にあなたに抱きついて、ちょうどタイミングよく、あの世界に呼び出しをくらったからよ」

おぃおぃ、骨折り損にもほどがあるぞ。

「つまり、俺は実際、関係無いのになんやかんやで、あの世界に連れてかれたって事?そして、その大会に登録されたって言うのか?」

「正解。もちろん、人間代表もこの大会に参加している訳だし、あなたが死んでも特に問題ないの」

人間代表。その言葉を聞いて、まぁ自分の事を棚に上げておきながら聞くのもなんだが・・・

「人間代表?あんな奴等に、勝てるような人間がいるのか?」

「当たり前でしょ。どんなに体が、昔に比べて弱体化してても、前回のチャンピョンよ。どんな手を使ってるかわからないけどね」

「仙田が、人間代表なんじゃないのか?」

「冗談でしょ?私は、人間じゃないわ!私は・・・あぁやめとく、別に言っても関係無いでしょ」


煎餅を食い終えて、仙田は今度は饅頭まんじゅうに手を出し始めた。

「じゃぁ、あいつか?あの黒いコート来た男」

三島の答えに対し、仙田は饅頭を口に咥え、手で大きくバツ印を作った。

「ブッブー。違います〜、彼も一応、人間と言う部類でくくられてるけど人間代表ではありません・・・人間代表は、私もしりません」

「じゃぁあの男は、一体何なんだよ。」

「それは、彼から聞きなさい。自分の正体を教える、それ即ち死を意味します。だから、あなたも私に自分の正体を教える必要はないわよ・・・饅頭食う?」

だから、人の物を勝手に食っておきながら、それを持ち主に喰うか?なんて普通聞くか?

「今はいらね・・・ちなみに俺は、人間だ」

「かもね。でも、ただの人間が、トップ5に勝てる訳ない」

「トップ5?」

「前回の大会を踏まえて地球君も、ランキングを作ったの。一位は、もちろん人間でしょ。そんな感じで五人。彼等は優勝候補として、ある条件を満たしてくれれば、この大会の終盤まで出番はないの」

「で、その条件は?」

「新規登録者の排除。あなたみたいに、無関係の物が、大会に参加してきた場合、彼等に呼び出しがでるの」

「へぇ〜」

「で、トップ5にあなたが勝った」

「天狗がトップ5か・・・で、それに生き残ってしまった俺は今後どうなる」

「そこが、問題なんだよ」

仙田は待ってましたと言わんばかりに、饅頭を一気に飲み込むと、白い紙とペンを取り出し、テーブルの上で落書きを始めだした。

「おぃ・・・何落書きしてんだ?」

「どこが、落書きだ。ちょっと待ってなさい」

仙田は、紙いっぱいに大きな三角形を書き、横に線を何本か引き始める。

「ピラミッド?」

「惜しい、例えるなら生物学で出てくる、生態系の表みたいな奴?」

三角形の一番上には《トップ5》と書き、一番下には、マヌケ面の男の子の似顔絵を描いている。

「おぃ・・・そのマヌケ面の奴は、まさか俺か?」

「おぉ!よくわかったわね。もしかしてマヌケ面にピンときた?」

つまり仙田にとって三島は間抜けに見えると・・・?

「いや、トップ5の時点でピンときた」

「まぁとりあえず、これがランキング表みたいなものよ。上に行けばいくほど人数も少なくなる。ちなみに、あなたはトップ5に勝ったからと言って上に上がれるわけでもない。まだ一番下で〜す」

マヌケ面の部分をペンで何回もなぞる

「そうですか・・・」

「ちなみに私は、中間の上ら辺。あの黒いコートの男は上位の下ら辺」

ピラミッドの中間ら辺をグリグリ。ピラミッドの上ら辺をグリグリ。

「はぁ・・・」

「それで、残念な事に下のランクの者達は、上位ランクの者にやられてしまいます」

ピラミッドの下の方をグチャグチャと書きまわす。

「はぁ?なんで」

普通、テレビゲームなら弱い奴と戦ってレベルを上げて行きながらゴールを目指すのがセオリーだろ。なのになんで、ニューゲームで始まるのに最初っからボスキャラ!?

「それで、中間ランクの者は同じランク同志、戦って段々と上を目指してもらいます」

再び、中間ら辺をグチャグチャと書きまわし、もうほとんどピラミッドが、黒色に埋まってしまった。

「え、ちょっと待った!」


「そして、最後まで勝ち残った者が新たな地球の支配者になるのです」

そんな説明が終わるうちに、白かった紙は真っ黒になっていた。

「なんで、下位ランクの奴等は同じ者同士戦わないで、上位の奴等にやられるんだよ」

「だって、応募者が多いんだもん。優勝するためには、いつか上位ランクの奴とも戦うんだから遅いか早いかの違いよ」

「つまり、俺はまたこれからも天狗みたいな奴等に、殺されかけないといけないのか?」

「YES YOU CAN !」

「馬鹿にしてんのか」

仙田は、首をかしげ少し悩んだと「かなり」と端的に答えた。

「うん・・・そうか」

「まぁ、とりあえず。上位ランクの奴等と、戦わない方法ならあるわよ」

「マジで?どうすれば?」

「まずは、私と同盟を組みなさい」

「あぁ組んでやるから。その上位ランクの奴等と戦わない方法を教えてくれ」

「じゃぁ、交渉成立?」

「うんうん」

「わかった。それじゃ私達は、仲間よ」

「OK!で?どうすればいいんだ?」

「これでOKよ」

「・・・・ん?」

「私は中間ランクよ。中間ランクの人と仲間になったらあなたもこれで中間ランクの仲間入り。」

「つまり、俺は別にこの戦いから脱出できる訳ではないのね?」

「当たり前でしょ。私達はチームよ」

「俺、隅っこで見てるだけでいい?」

「いい訳ないでしょ。ビシッバシ働いてもらうわ」

「冗談だろ?俺は、何も殺したくは・・」

「わかってる!・・・あなたがどうして、そこまで殺生を拒むかは知らないけど、だから、とどめは、私がさしてあげる。だけど、時間稼ぎをしてもらわないと困るの。」

「つまり、仙田が必殺技を出すまで俺に逃げてろと?」

「正解!・・・読み込みが早くていいわ」

チュパカブラの目の前に押し出されたり、意識がもうろうとする中、『生き残るチャンスを上げる』なんて、教えられ、無駄に説明を受けないでチャンスを棒に振ってしまったり、かなり殺されかけてるんだが・・・

「なんか、前とそれほど変わらない気がするな・・・」

「他に聞きたい事は?」

「次に向こうに連れてかれるのは、いつ頃なんだ?」

「呼び出しがいつかかるかは、わからない。でも、仲間になったからと言って、近くにいない限り、同じ場所に出るとは限らないの。」

「近くにいれば、大丈夫なのか?」

「別に遠くても大丈夫よ。私が見つけるから」

「はぁ・・・」

「他は?」

「じゃぁ向こうの世界とかは関係なしで聞きたいんだが・・・その二面性は、何の為にやってるんだ?」

仙田は「はぁ?」なんて首をかしげるが、何かに気付いたらしく首を「はぃはぃ」なんて揺らした。

「そうだよね・・・・彼女と同じ学校なんだもんね。」

「彼女?」

「この体の持ち主よ。言ったでしょ。私は人間じゃないって、これは入れ物として借りてるの。いわゆる寄生虫パラサイトってやつよ」

「はぁ?仙田を乗っ取ってるって言うのか?」

「ちょっと人聞きの悪い事言わないでくれる。彼女からは、ちゃんと了承済みなのよ」

「ふざけるな!人格を乗っ取られて平気な奴なんている訳ねぇだろ!今すぐ出て行け」

「それは無理。彼女との約束だから」

「約束だぁ?なぁに、わからんコンチンな事、言ってやがる!」

「教えないけどね。これは、彼女の意志よ」

「お前・・・もしこの戦いでお前が、死んだらどうなるんだよ。」

「彼女も死ぬ事になるわ。まぁ、私は死ぬつもりはないけどね」

「てめぇは・・」


三島は立ち上がり、続きを言おうとするがその前に目の前にいたはずの仙田が消え、気付けば三島の首を掴み自分に引き寄せていた。

「わかってないねぇ、あなたは所詮下位ランクの人間なんだよ。実際、今ここで殺してあげてもいいんだけど、私に生かされてるって事忘れないでね。しっかり私を守ってよ」

三島の首筋を爪で引っ掻き、首筋に赤い蚯蚓腫ミミズばれがゆっくりと出来あがってくる。

「じょ、冗談・・それほど強いんだったら、俺が守る必要ないだろ・・だが、お前が守って欲しいって意味ちょっとわかったかも」

「何を・・・ひゃっ」

三島は、首を掴んでいた手を取ると手首を返し、そのまま地面に仙田を、うつ伏せに抑えつけた。

「目で追えないほど素早いが、力はやっぱり女性のままだな。掴んでしまえばこっちのもんだ」

「ちょ、ちょっとタンマっ!」

地面に押さえつけられ、その場でジタバタする仙田

「待ったなし!さっさと、仙田の体から出て行け」

そう言うと手首を返し、軽く関節をかける

「イテテテテ・・わかった、わかったから、まずは一度、彼女と話をすればいいじゃない!」

「はぁ?何を・・・」

言ってるんだ?なんて聞こうとするが、

「・・・ヒィ、・・ヒィィィィーー!」

突然、小さな声で悲鳴を上げながら仙田は先ほどの動きとは違う・・いや、尋常じゃない動き?いや、素人の動きを見せ始めた。

「おぃ、どうした?仙田?」

「えっ、えっ?三島君・・・なんで、三島君?・・痛い痛い痛い」

「あぁ、悪い・・」





「うん、知ってるよ。私、彼女と約束したの、そしたら私を自由にしてくれるって」

「でもよ、お前が知らないうちに勝手に出歩く事だってあるんじゃねぇの?」

部屋の隅で怯える仙田に、とりあえずお茶をテーブルに置き、煎餅と饅頭で、喉がカラカラなのかお茶に目を取られる仙田に「欲しけりゃ、テーブルの前まで来い」と言って何とか落ち着きを取り戻させ、自分の体が乗っ取られているのを知っているのか聞いてみて、今現在・・・

「それは、ほとんどないよ。日常生活では、主に私がメインなの。それが彼女との約束だから」

「ほとんどって事はさ・・今回みたいな事が・・」

「でも、私はそれでも自由が欲しかったの」

「自由?」

「でも、本当にごめんなさい。私のせいであの大会に参加させちゃって・・・」

「いいよ、別に・・それより、その大会で死ぬ事だってあるんだろ。仙田は、それでいいのかよ」

「でも、彼女との約束で彼女は、絶対に死なないって言ってくれたし・・」

「でもよ、死なないって事は優勝するって事だろ?仙田が、優勝したらどうなるんだ?」

「さ、さぁ・・・多分、彼女の種族が、地球に支配者になるんじゃ・・」

「つまり、それってさ・・・俺達が、死ぬって事なんじゃねぇの?」

「大丈夫です。彼女との約束で、恐竜の時みたく隕石とかで、一瞬じゃなくて、少しずつ減らしていくって言ってましたし。私達が、天寿を全うするまでは、それほど変化しないとか言ってましたよ。」

「そういう問題なのかね・・」

「地球にとって私達の一生なんてそんなものだそうです・・・・」

「温暖化とか、異常気象とか、森林破壊とかやってるのに地球は怒らないのかね」

「それも人間のただのエゴらしいです。人間が住みやすい環境をただ単に自分で破壊してるだけですからね。むしろ疑問に思ってるみたいです」

お茶を啜りながらまるで人事のように語る仙田に少々顔が引きつる三島。

「まぁつまり、仙田は体を乗っ取られていても特に問題ないって事だな?」

「はい」

笑顔で返してくる仙田、・・・やっぱいい子だよ、この子。めっちゃいい子だよ。

「・・わかった。もう一度、彼女に変わってくれないか?聞きたい事があと一つある」

「わかりました。」



「どう?これで理解した?」

「正直言おう、仙田が許してても、俺は人の体を乗っ取る事には、賛成できない。」

「別にどう思おうと構わないわ、それで?私を守ってるれるの?」

「守るよ。守らなきゃ、仙田が死ぬんだろ。」

「そう。読み込みが速い子は、嫌いじゃないわ」

「好きになるなよ。」

「人間に恋なんてする訳ないじゃない・・・で?聞きたい事って?」

「この戦いで、同盟を組んだとしても最終的には、優勝者は一人なんだろ?」

「・・・・そうょ」

明らかに声のトーンが下がる。

「つまり、いつかお前とも戦うって事か?」

「・・そうね。いつかは、そうなるわ。だから、忠告しておくけど、彼女とそれほど親密な関係にはならない事ね。対峙した時に迷いが生じないためにも」

「・・・一体、いつ戦う事になるんだ?」

「最後よ。だから、同盟を組もうなんて馬鹿、それほどいないのよ」

「俺は、その馬鹿になっちまったって訳か。」

「言っておくけど、私は躊躇しないわよ。彼女がどんなに心の中で、止めようとね」

「それ聞いて安心した」

「それじゃ、もぅ夜遅いし帰るわ・・・って日が昇りそうね」

「マジか・・・うわっ、もぅ3時じゃねぇか!あと1時間もしないうちに朝日が上っちまう」

焦る三島を横目に仙田は、ベランダへと向かった。

「それから、彼女は・・まぁ私もだけど、あなたに感謝してんのよ。あの電車の事故。あなたが助けてくれてなきゃ、私もろとも死んでたんだからね」

そういうと仙田はベランダから飛び降り、三島がベランダから、下を覗いても仙田の姿はどこにもなかった。


これで、ようやく長かった三島の一日が、終わりそうだ。




「ねぇ、さっきからドタバタうるさくて寝れないんだけど〜」

上を向くと、ベランダから身を乗り出し明らかに寝不足ですって言う感じの顔で、こっちを見てくる田村が不機嫌そうに言ってきた。

「あっ、悪い、あの・・・あれだ。部屋の掃除とかしてて・・だな」

「ん〜・・・眠いの〜」

目をこすりながらその場で再び寝ようとする田村

「馬鹿!そんな所で寝ようとするな!」

案の定、身を乗り出し過ぎていた田村は、上からずり落ちてくる。三島は、必死に落ちてきた田村をキャッチし、ふらつきながら自分のベランダへと担ぎこみ、その場に腰を降ろしため息をもらした。

「し、死ぬかと思った」

完全に目が冴えた田村

「そりゃ、こっちのセリフだ。いくら、寝起きが苦手だからってありゃないだろ・・・」

再び溜息をつく三島を田村は、ジッと見てくる。そんな視線に気づく三島。

「・・・な、なんだよ」

「元・・・あんた、その首」

指さした所には、仙田にやられた首の傷跡があった。

「あぁ・・これか、これはだな・・」

「元!あんた、左腕だけでは飽き足らず!遂に首までやるようになったってーのか!」

「はぁ?美野!違う。これは誤解だ!」

「何が誤解だ!そこに直れ!あんたのねじ曲がった根性、叩き直してやる!」

「だから、違うって・・・ちょ、ちょっとーー!」


三島の長かった一日は、どうやらこのまま二日目に突入しそうな勢いである。






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