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第三十九話 熊殺し 対 忍

「・・・だから、私のせいなの。私を恨んで」

「恨まねぇよ。・・・あいつは、美野はお前を助けようとしたんだ。俺がお前を恨んだら、美野が残した物をないがしろにするって事だ。」

「元っ!私は、言ったでしょ!その優しさが、どれだけ私を苦しめてると思ってるの!」

「だからって、俺はこの性格を直すつもりはねぇよ。・・・・お前もさっさと仙田に体返してやれ。あいつだって、本当は心の底から泣きたいはずだ。」

三島の指示に、煮え切らない顔をしながら仙田は、持ち主に体を返した。

煮え切らない表情をしていた仙田は、今にも泣きそうな顔で「美野は?」と三島に尋ねた。

「悪い・・・全部、俺のせいなんだ。」

仙田の問いかけに目を合わせることなく答えると、仙田は三島にしがみ付き、泣き始めた。

「嘘っ、嘘・・・嘘・・」

嘘という単語を連発し、仙田は三島の体を何度も叩いた。

今にも倒れそうな仙田に対し、三島はただ仙田が落ち着くまで、佇む(たたずむ)事しかできなかった。




三島の連絡により、避難キャンプに先生がヘリに乗せられ到着し、それを仙田と三島が出迎えた。

先生は、ヘリから降り立つと三島に近寄り、無言で佇む三島の頬を思いっきり殴った。

その場に倒れ込む三島を見て、仙田は思わず息をのんだ。

「馬鹿野郎っ!どれだけ、お前は単独行動を起こせば、気が済むんだ!お前、一人くらいなら誰も心配しないと思ったのか!しかも今回は、仙田までも巻き込んだ!」

先生の怒りに怯え、声が出ない仙田。そして、頬を拭いながら立ち上がる三島を先生は、思いっきり抱きしめた。

「だがな、お前がどうやってあの地震を予知したのかは知らないが、お陰でこっちはそれほど怪我人が出なかった。よくやった・・・三島」

「ご心配を・・・お掛けしました。でも、俺は・・また誰も救う事が出来なかった。仙田までも危険に巻き込んじまった。」

目に涙が込み上げ始める三島を先生はさらに強く握りしめた。

「馬鹿野郎。・・・お前は神にでもなったつもりか。お前はいつも自分を責める癖がある。だがな、誰でもミスはするもんだ。それは、お前が人間だって証拠だ。」

「はい・・・」


地震のマグニチュードは、歴代一位の記録を塗り替え、専門家はあと百年は、この記録を塗り替える地震は起きないと断言するほどの酷さだった。

死者・行方不明者は、未だに特定されないが、北舟高校での怪我人は十四名。死者は田村の一名だった。

そして、最悪の修学旅行は終わった。


帰って来た三島達を地元は大雨で向い入れ、降り続いた大雨は、田村の通夜まで降り続き、まるでみんなの心を映し出すかのようだった。

異種武道の部員達は、通夜の会場となった外で大声で泣き、雨のような涙を流した。




「親父さんには、本当の事を言う」

三島は、自分の部屋で猫仙田に、心の内をさらけ出し、言っても無駄だと言う助言も無視して胴衣に着替えた三島は部屋を出て行った。

道場で親父さんは、瞑想を続け、三島はそんな親父さんの前に姿を現した。

「来たか、元。・・・・何を話してくれると言うんだ?」

「全てです。」

三島は、親父さんの前に座り、今自分が別の世界で戦っている事、そして、その戦いのせいで田村を死なせてしまった事を親父さんに伝えた。


「剛や子島も・・・その戦いの被害者です。剛や子島も俺が殺したようなもんなんです。そして、美野も・・・。」

親父さんは、体制を崩さず三島の説明を瞑想をしたまま、聞き続けていた。

「信じてもらえないでしょうけど、これは、ただのけじめです。最後まで聞いてくれて有難うございました。」

深く一礼すると三島は立ち上がり、この場を去ろうとするが「待て」と親父さんに呼び止められた。

「元・・・お前の口から今まで嘘偽りを聞いた事がない、だからお前の言葉を信じよう。・・・だがな、お前が胴衣姿だと言う事は、覚悟の上だと言う事だな?」

座っていた親父さんは、腰を持ち上げ、壁に掛けられている武器の中から大きな太刀を選び、手に取った。

「問おう!お前は、その戦いを続ける覚悟はあるのか!」

「・・・続けます。俺はそのためにここに来た。」

三島の言葉に親父さんは、太刀を三島に向けた。

「ハッキリと言おう。俺は反対だ!その戦いを続けて何になる。これ以上の犠牲を増やすつもりか!」

「違います。これ以上、犠牲者を出さないために、俺はこの戦いを続ける。・・・これ以上、俺の親しい人間を死なせないために!」

「ならば、その覚悟を俺に示してみろ!」

三島は、掛る短刀を手に取り、腰に差し込んだ。

「元、今の俺は手を抜けるような状態ではないぞ。」

「それは、俺も同じです。・・俺だって親父さんと同様、大切な物を失いました。・・・そして、親父さんと同様、・・・俺も武人だ!」

三島は、一気に親父さんに摘め寄り、腰から短刀を抜いた。

だが、親父さんの大きな手が、上から勢いよく下ろされている事に気付き、後ろに飛び退いた。

距離が開いた三島に大きな太刀を振り抜き、三島は体を捻りながら、再び後ろに交わした。

大きな親父さんの身丈ほどある太刀を、自在に操る親父さん。

そんな親父さんの攻撃を紙一重で避け続ける三島。

だが、それも長くは続かず、親父さんは腰に差していた鞘で、三島の両足を弾いた。

両足を弾かれた三島は、地面に倒れ、親父さんの振り下ろされた太刀を腹にまともに食らってしまった。

本物であれば、今頃、三島の体は真っ二つだ。

再び太刀を振り上げる親父さんに気付き、三島は素早く立ち上がり、横に退けようとするが、親父さんの鞘がそれを許さなかった。

鞘に攻撃された三島は、振り下ろされる太刀を短刀で受けとめようと、待ち構えるが、振り下ろされた太刀は、横から伸びてきた薙刀なぎなたによって防がれた。

「よぉ、三島。なんだかわからんが、俺も混ぜろ」

薙刀の持ち主は、なんと先生だった。

突然の訪問者、そして、先生は素早く薙刀を引き戻すと、親父さんに向けて突き出した。

親父さんは、薙刀により、押し戻され、体制を立て直した三島が、親父さんに猛突進した。

「三島、お前は前衛だ!後ろは俺に任せろ!」

「オスッ!」

懐に潜り込んだ三島は、親父さんの足を蹴り飛ばそうと、足元を蹴るが、親父さんの足はビクともせず、太刀を下に構えた親父さんは、三島に目がけて振り下ろす。

だが、その太刀は、長い薙刀に弾かれ、三島に当たる事はなかった。

「ドゥオリャ!!」

先生は、薙刀を渾身の力で振り回し、太刀の動きを封じた。

改めて見ると大きな親父さんと先生を比べて見ると、先生も結構な大きさだった。

「三島!離れろ!」

先生は、三島にそう指示すると薙刀を背中の後ろにまで振り上げ、思いっきり振り下ろした。

親父さんは、振り下ろされる薙刀を避けようと、するが、さっきの三島の攻撃で、足が動かず太刀で薙刀を待ち構えた。

バキッという音を立てながら、薙刀は折れ、先生は「みしまぁ!」と大声で叫んだ。

太刀の動きを封じ込めた、隙を突き三島は、再び親父さんに接近した。

足が駄目ならば・・・膝だ!

三島は、親父さんの膝裏を短刀の柄で突き、親父さんは片膝をつき、その隙に、三島は親父さんの首元に短刀を押し当てた。



立派な顎ひげをたくわえた親父さんの口からは生温かい息がかかり、三島も肩で息をしながら首元に押しつけた短刀を放した。

「いいだろう。突然の乱入もあったが、俺の負けだ。」

大量にかいた汗を拭いながら、親父さんは立ち上がり、三島と先生に一礼をした。それに気付いた二人も親父さんに一礼で返した。

「有難うございました。」

「三島。・・・ちょっとここで待ってろ。」

親父さんはそう言うと、道場から出て行った。

「先生、どうしてここに?」

「ん?・・・親父さんに頼まれてな。飛んで来てみたら、この調子だし、乱入してしまったって訳よ」

「頼まれたって何を・・・」

「そりゃ、殺されそうになる三島を助けてやれってな・・・あと」

続きを言おうとする先生の前に小さな箱を持った親父さんが現れた。

「おぃ、要らん事を言わんでもいい!」

「・・だそうです。まぁ俺は親父さん見たくホィホィ人の過去を喋ったりはしませんから。」

両手を広げやれやれと言った気分で話す先生を百戦錬磨の親父さんが睨みつけ、先生は黙りこんだ。

親父さんは、三島も目の前に腰を下ろし、二人も腰を下ろした。

そして、親父さんは小さな木箱の紐を解き、蓋を開けた。

木箱の中には、丁寧に布で包まれた小さな短剣が入っていた。

「田浦。これから俺が三島に渡す物を、他言する事は許さないぞ」

「・・・わかりました。」

何か事が起きている事を感じ取った先生は、真剣な表情でそう答え、深く追求する事はなかった。

「三島。・・・これは俺の宝物だ。このお陰で山籠りをしていた俺を熊から救い出してくれた。・・・それをお前に授ける。」

箱から短剣を取り出し、布を取ると雷と龍がデザインされた短剣を三島に手渡した。

「いいか、お前がする事に俺はもう一切、口を出さん。命一杯やってこい」

「ウスッ・・・」

「・・・頼む、美野の死を無駄にしないでくれ。」

親父さんは、二人の前で涙を流し、座りながら頭を下げた。

「わかりました。・・・失礼します」

三島は、そう言うと道場を後にした。




部屋に戻ってきた三島を待っていたのは、後になって腫れあがった顔じゅうの痣を心配して駆け寄ってる仙田だった。

「だから、言ったじゃない。言っても無駄だって!」

「いや、そうでもないさ・・・。ちゃんと理解してくれた。」

「じゃぁこの痣は何なの」

そう言いながら痣に触れる仙田。

「イダダダ、仙田、てめぇ」

「あっ、ごめん。」

思わず尻込みする仙田。

「仙田・・・」

「何?」

「この戦い、早く終わらせるぞ・・・。これ以上、犠牲者を出してたまるか。」

三島の言葉に戸惑う仙田。なぜなら、この戦いを終わらせるという事は・・どちらかが死ぬと言う事だからだ。だが、そんな気持ちを押し殺し仙田は笑って見せた。

「うん、そうだね・・・。早く、終わらせるために頑張ろ。」

そんな仙田の気持ちもわからずに、三島は手に握った短刀を強く握りしめた。





そんな三島の決意は、次の戦いで発揮される事になった。

水を操る河童の攻撃を次々と交わしながら、近づき後ろに回り込んだ三島は、河童の喉元を一気に切り裂き、河童の息の根を止めた。

「なんだ?三島の野郎・・・やけに張り切ってるじゃないか。・・なぁ、にゃんゴロ。」

仙田の体ではなく、ロイちゃんの体に入った仙田は「ニャー」と呟くだけで、伊吹には何が何だか理解できなかった。

「おぃ、三島。」

「ん、何?」

「いや、やけに張り切ってるなって思ってよ。・・・なんかいい事でもあったのか?」

「別に・・・なんもねぇよ。」

「けどよ・・・。」

心配する伊吹を背に向け、三島は元の世界へと戻って行った。

「・・んだよ。あいつ・・。」

不貞腐れる伊吹は、三島の後を追って元の世界へと戻っていった。





「私は・・・もう、こんな戦い嫌。」

「えっ・・でも、千尋。」

元の世界で仙田に病院に呼び出された猫仙田は、仙田の思いに戸惑っていた。

「気持ちは、わかるよ。私だって悲しいもん。でも、美弥ちゃんの死を無駄にしないためにも、私にとっては千尋の体が必要なの。」

「でも、美弥が死んだのは、その戦いのせいなんだよ。・・・私じゃなくて、死んだのは美弥なんだよ。」

「だから、こんな戦いを早く終わらせて・・・」

「なんで、戦わなくちゃいけないの?・・・別に他の人に任せればいいじゃない。」

「それは・・・。」

「そんなに自分の種族が大事なの?私達、人間はそんなに邪魔な存在なの?ねぇ、三島君は?・・三島君は人間なんでしょ。それに無理やり戦いに参加しちゃってるだけなんだよ。なのに、なんで戦いを続けるの?」

椅子に座ったまま黙る三島に仙田は問いかけてきた。

「・・・いや、仙田の気持ちは一理ある。だから、別にいいだろ・・・お前、しばらく猫のままでいろ。」

「えっ、でも・・・それじゃ、私が全力を出せないじゃない。」

「俺が守ってやる。・・・そういう約束だろ。・・・仙田もまた気持ちが、変わったら連絡してくれ。後一つ・・・この前修学旅行で戦った相手は、人間なんてまるでゴミのように扱ってたんだ。そんな奴らに、この戦いを任せられない。だから、俺はこの戦いを続けてるんだ。」

三島は、未だにショックから立ち直れない仙田にそう言い放つと、病室から出て行った。

「・・・・千尋。本当の事、言わないといけない時期だと思うから、言うわ。」

猫仙田は、仙田に最後に戦う相手が誰なのかを伝え、仙田はその内容を聞いて驚いていた。

「そんな・・・。それじゃ、三島君が・・・。」

「だから、しばらくの間、猫の姿でも私は構わない。でも、最後の戦いだけ、千尋の体を貸して。」

「そんな・・・そんなの無理だよ。」

「悪いけど、千尋の気持ちも無視して、無理にでも使わせてもらうわ。本気で戦わないと、多分私、負けちゃう。」

「駄目!駄目だよ、そんなの絶対。だって、あなたは三島君の事が、」

「それと戦いの事は別なの!それに、元は美弥ちゃんに惹かれてるの。死んだ者に生きてる者が勝てる訳がないわ・・。」

「でも・・美弥はもう死んでるんだよ・・・。」

「元は、尾形って奴の時もそう。生きている人間よりも死んでる人間に目を向けちゃうのよ。」

「わかってる!わかってるよ・・・でも、今の三島君を救いだせるのは、あなただけなのよ・・・。」

病室には、重い空気が立ち込み、その重圧感が二人に襲いかかっていた。





そんな出来事があった夜。眠りに就く三島に悪夢が襲いかかっていた。

目の前で尾形や田村そして、子島が助けを求めて三島に手を伸ばしていた。だが、三島がどんなに手を伸ばし、救いだそうとしても三人の手を掴むこと出来ず。

三人は奈落の底へと落ちて行った。

「やめろーーー!」

自分のうなされる声で、目を覚まし夢だった事に気付いた三島。

そんな三島を気遣ってか、ロイが三島の目から流れる水滴を舐めていた。

「あれ?・・・俺、泣いてたのか。」

「そうね。それに、かなりうなされてたわよ・・・。」

猫からではなく、玄関の方から聞こえてくる声に驚き、三島は布団から跳ね上がった。

玄関に立っていたのは、実体のある仙田だった。

「仙田・・・?・・なんでここに?」

「ごめん、元・・・私、不器用だからどうやって慰めればいいのか、わからないの。」

そう言いながら、仙田は三島に近寄り、布団に腰を下ろした。

「だけど、死者に翻弄される元なんてこれ以上、見てられない。・・・だから」

そう言いながら顔を近づけ始める仙田を思わず三島は、腕で突き放した。

「止せ、何するつもりだ。」

「ねぇ、千尋の体はそんなに魅力的じゃない?」

「仙田!何考えてやがる!」

「私は、今の元が見てられないの!それは千尋だって同じよ!」

「それが何だってんだ!お前達には関係ないだろ!」

「なんで?・・・・苦しんでる友達がいたら助けたいって思っちゃいけない事なの?三島君は、私を救ってくれたよ。三島君は、私をまた歩かせてくれた。」

「仙・・・田?」

「それに、元は私に新しい居場所をくれた。」

「止せ・・・もう言うな・・・。」

「三島君は優しすぎるんだよ。・・・だから、誰もほっといてくれないんだよ。」

「止めろ!もう何も言うな!・・・これ以上、俺を困らせるな。」

「だったら、もう死人に左右されないで!美野ちゃんだって、そんな事望んでなんかいないはずよ!」

『私の事は忘れて』田村が最後に言った言葉が、脳裏で何度も蘇り、頭をかき乱す三島。

「止めろ・・・俺は優しくなんかない!」

近寄ろうとする仙田の両肩を鷲づかみにし、ベットに押し倒す三島。

「俺は、優しくなんかない!・・俺は間接的に但馬組を壊滅に追いやって警察官にも殉職者を出した。それに、一年前には親友を殺して、信じていた奴を半殺しにして、若い警察官を左遷にまで追いやった奴なんだぞ!俺は残酷な奴なんだ!」

「だから、何?・・私は昔の元なんか知らない。元だって昔の私を知らないじゃない!人里を悪戯に荒らして、一人の人間に恋をして、同族に青い炎の中に放り込まれた吸血鬼の事なんて知らないじゃない!・・・そんな私に居場所をくれた。・・・・それに、三島君は誰も寄せ付けないように過ごしていた私の友達になってくれた。」

「止せ・・二人同時に話すな・・。」

「私は!・・・私達は、昔の元の事なんて知らない。でも、そんな元の事が・・」

「止めてくれ・・・」

「・・・好きになっちゃったの。」







仙田達の告白に、混乱していた思考が一時的に停止する三島。

鷲づかみにしていた両肩を放し、深くベットに腰をかけ、髪を掻きながら思い悩む三島。

そして、押し倒されていた仙田は、上体を起こした時にようやく三島が口を開いた。

「お前等・・・俺がそれで、何て返すかわかってるんだろ?」

「うん・・・。でも、それでも言っておきたかったの。私達の気持ちを知って欲しかったの」

「だけど、俺は・・・」

「いいの。返事は要らない。・・・ただ、ちょっと安心した。」

「・・・何がだ?」

「正直、襲われるんじゃないかって思ったの。もちろん、それは覚悟の上だったけど、やっぱり三島君は、優しいね。」

「止めてくれ、本気で襲うぞ」

「いいよ。別に、元の気がそれで晴れるならね。」

挑戦的な仙田の態度に、三島も思わず笑みをこぼした。

「いいんだよ。俺は別に臆病なままで、そうやって今まで過ごしてきたんだ。」

「元の馬~鹿。臆病者」

「うるせぇな・・・。悪かったよ、どうやら美野が死んで立ち直れてなかったのは、俺の方だったらしいな。」

「そんな事ないよ。私だってまだ、立ち直れてない。・・誰だってすぐには、立ち直れないよ」

「よく知ってるな・・。そんな事・・・」

「小説に書いてあった。」

「結局、小説かよ!・・・さてと、気分もスッキリした事だし、もう一眠りするわ。仙田等はどうするんだ?」

「うん。実は、病院に友達の家に泊まりに行くって言ってきちゃったから、今日一日泊めて。」

「えっ・・・・」

ほんの数分前に好きと言われた女性を一つ屋根の下で寝泊まりするのはいささか問題があるような気がする三島。

「布団もちゃんとあるんでしょ?・・・それとも、一緒にベットで寝る?」

「なぁ・・?ちなみに今はどっちなんだ?」

「どっちでもないよ。どちらかと言うと、二人がくっ付いた感じかな?」

「お前らって意外と積極的なんだな・・・。今、知ったわ」

「もちろん。もう好きだって事言っちゃったし、隠してもしょうがないじゃない。」

「そんなもんなのかね・・・」

「そんなもんなの。」

こうして布団を新たに敷き、仙田にベットを使わせ、三島は新しく敷いた布団で熟睡し始めた。

そして、熟睡した事に気付いた仙田が三島の布団に潜り込んだ事は言うまでもなかった。




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