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第三十三話 昔話6

田村の親父さんから受けた攻撃の痛みが未だに抜けなく、家からなるべく動こうとしない三島の携帯に、田村が倒れたという一報が入り、家から飛び出した。



「丸刈り!」

病院の待合室にいた丸山に駆け寄ると「こっちだ」そう言って田村の部屋に案内してもらった。

病室のベットで寝ている田村の横で丸山から何があったのか聞き始める。

「・・・今回は本当にやばかった。街中じゃ、機動隊の出動要請もあったらしい」

「まさか、冗談だろ」

「高校生以外にも飛び火したんだよ。ここの病院にもかなり運ばれてきてたからな・・」

丸山からの話を聞き頭を抱える三島。

「くそっ、俺のせいなのかよ・・・」

「それは違うぞ、元。悪いのは、あのカッパ野郎だ」

「そのカッパ野郎が、自分のせいだって自覚があるって事はいいことじゃないか」

丸山の弁護も虚しく、若菜達が病室へとやって来た。

二人の登場に、丸椅子から立ち上がり睨みつける三島と突然、知らない人の来訪に驚く丸山。

「何しに気やがった!」

「別に・・・ただ一つ言い事を聞かせてやろうと思ってな」

「何がいい事だ!さっさと出て行け」

「まぁまぁ、人の話は最後まで聞けって親に教えてもらわなかったか?・・まっ、その親が今は大変かもしれないがな」

「・・・何が言いたい」

「わからねぇか?・・・今この街は、暴徒と化してんだ。お前を探してな・・・そして誰かがそいつ等を唆す事ぐらい簡単なんだよ」

若菜は三島に挑発的な言葉を言い残し、病室から出ていく。

その言葉に三島は、丸椅子を片手に若菜達を追い駆け、病室から出て行こうとするが、それを丸山が体を張って止めた。

「放せ、丸刈りっ!今の俺はどうかしてんだ。てめぇでもぶっ殺すぞ」

「元、落ち着け!・・・あの二人よりも、今は早く家に戻れ!優先事項を間違えるな」

「・・・っだけどよ!」

「だけどもクソもあるか、ボケっ」

三島は、歯を噛みしめながら思い悩み、丸椅子を置き病室から出て行った。

深いため息をつきながら、丸山は椅子に座り髪のない頭をなぞる。

「なんだったんだ、さっきの二人は・・・」

「・・多分、刑事」

静まり返った病室で独り言を呟いたはずなのに、返事が返ってくる事に驚いた

「田村・・気が付いたか」

「そりゃ、元の怒鳴り声を横で聞いてて寝れる訳ないじゃん・・学校は?」

「大丈夫だ。田村の喝が効いたなありゃ」

「あぁ・・・今思うとかなり恥ずかしい」





三島の家の周りにはすでに野次馬の人だかりが出来上がり、そんな人達を掻きわけ店の前までたどり着くと店の入り口に立っていたのは田村の親父さんだった。

「どうしたぁ、こんなんじゃこの店には来店出来ねぇぞ!」

扉の前に仁王立ちする親父さんの気迫に押され、暴徒達は退散していった。

「親父さん!」

「おぉ元、一足遅かったな」

「いや、そんな事より美野が・・・」

「知ってる。それより、今はお前のお袋さんだ」

親父さんが三島の手を引き、店の中に入ると店内は荒らされ、なにが起きていたのかは一目瞭然だった。

店の奥へと進むと、過呼吸で苦しむ母親と母親の手を握り、励ます親父がいた。

「大丈夫だよ、母さん。もうすぐ救急車が来るから、それまでの辛抱だ」

父親がそう言いながら、母親を励ます所までは覚えているが、その後の事は覚えていない。

自分のせいで、母親や友人・・・この街までがおかしくなった。胸がきつく締まり、ただ呆然と立ち尽くす三島を担架を運んできた救急隊が、邪魔と言わんばかりに跳ね飛ばし、田村の親父さんが、三島に気付き部屋の外へと連れ出した。






「・・・店を畳もうと思うんだ」

病院で意識を戻した母親が、三島の姿を見てヒステリックを起こし、待合室で座って待っていた所に父親がやってきて、そう伝えてきた。

「あの刑事さんが、毎日のようにやってきてな・・・正直、客足もなくなってきてたんだ」

父親の苦渋の選択に対し、息子は何も反論で出来ずにただ謝る事しかできなかった。

「・・それでだな。地元に帰って俺の父さんの紹介でな、仕事があったからそっちに越して、向こうに落ち着こうと思う。・・・元、お前はどうする?学校もあるしな・・」

「それなんだけど・・・前々から考えてたんだ。俺いたら、迷惑だろ・・・親父さんに頼んで、アパート一部屋借りる事にしてたんだ。」

「そうか・・・金はどうする?」

「大丈夫。金はあるんだ・・・・ちょっとバイトやってて」

「繁華街の方でか?」

「うん・・・だから、安心してくれよ」

「わかった。・・・でもな、お前がいて迷惑だって思った事は一度もないぞ。それは、母さんだって同じだ。」

「あぁ・・ありがとう」






「ほれ、着いたぞ」

親父さんの軽トラに、少ない荷物を摘み助手席でウトウトし始めていた三島に声をかける。

「んあ・・・着いたんです・・・か?」

アパートの場所も伝えられずにやって来た場所に思わず自分の目を疑う三島。

「えっ・・・あの、親父さん」

「お前の部屋は、ここの二階な」

「いや・・・親父さん」

「なんだ。・・・何か問題でも?」

「えっ、ありまくりでしょ!だって、誰も俺の事を知らない所って言ったじゃないっすか。だけど、ここには・・」

車の中から指をさすアパートは、現在田村が住むアパートだった。

「お前の事を知らない人達が住む場所なんてそもそもないんだよ。その中でここは、お前の事を知っている人は一人しかいないからな。」

「そんな事言って、本当は美野に会いたい口実を作っただけなんじゃ・・イデ!」

「さてと、さっさと荷物運ぶぞ」

「へ〜い・・」



荷物を全て部屋に運び終えると「あとはよろしく」そう言って親父さんは改造された軽トラを音を鳴らしながら帰って行った。

「相変わらず、悪趣味なんだよね。うちのお父さん」

父親が去ると同時に田村が、三島の前に現れた。

「お前な・・・いるなら手伝えよ。親父さんだって心配してんだろ」

「いいの。道場にはちゃんと顔出してんだから」

「そっちの家族事情も変わってるよな」

「まぁお互いね」

「そうだな」

そう言って立ち去ろうとする三島の手を田村は捕まえた。

「ねぇ待ってよ。また、仮面男になるつもり?」

「何の事だ」

「元も丸刈りだってそうよ。一人で勝手に、荷物を背負い込んで・・・勝手に突っ走るのは勝手だけど、こっちの身にもなれってのよ!」

「知らねぇよ、そう思い込んでるのはお前だけなんじゃないのか?・・勝手に背負い込んでる奴等を救おうとして、身を削ってる気になってるのはお前なんじゃないのか?」

「それは・・・」

「撒き込みたくないから・・・美野、お前はそう言う奴の気持ちを踏みにじってんだぞ。もぅ無理に関わろうとするな。また倒れちまうぞ」

美野の掴む手を無理にほどき、三島はアパートから去って行った。







「そりゃ、お前が悪い。」

「悪いって、俺はただこの事件は俺が原因だからこそ、自分で解決させようとだな」

「だからって、心配する奴に解決出来ないからって、当たったって言うのか?」

先ほどあった事を塚本に伝え、田村に当たってしまった事を突かれて、言葉がつまる三島。

「大体、お前の事を心配してる奴の事をお前は、ないがしろにしてこんな行為を繰り返しえる事は変わらないんだぜ?」

「・・・つまり、この戦いに誘っておいて退場すれって言ってるのか?」

「そんな事は言ってない。誘ったのは確かにそうだが、判断したのはお前だ。違うか?だから、止めるも続けるもお前次第ってことだ。」

「・・・まだ答えを見つけてねぇんだ。辞めれねぇよ」

「だったら聞くが、答えってのは何の事だ?お前の友達が、ここで何を探してたのかって答えか?」

「・・・それ以外に何があるってんだよ」

「その事だが、言える事はただ一つだ。・・・諦めろ」

「なんでだよっ!」

思わず立ち上がるが、塚本は落ち着けと一言伝え、三島は席に腰を下ろした。

「わからねぇか?お前はここでもぅ何も探そうとなんかしてねぇよ」

「言っている意味がわかんねぇ」

「そうだろ。始めは情報収集をしていたが、今はしてないだろ?」

「それは、誰も剛の事を知らなかったからだ」

「じゃぁなんでお前は、ここに毎回足を運んでくる?」

「・・・剛の情報を知っている奴が、来るかもしれないからだ」

「違うね、今のお前はただ暴走しているだけだ。外でも顔を隠して暴れて、こっちの世界でもお前は暴れてる」

「・・・ちゃんと理由はある」

「理由?・・・こっちでは友人の情報収集。外では被害が出ないようにパトロールってか?」

「そうだ」

「理由なんていくらでも後付けできる。・・まっ俺がなんて言おうと、お前は頑として動こうとはしないと思うけどな」

返す言葉も見つからず、三島は黙って非常口のランプが光輝く扉の中へと向かって行った。






「・・・お前、なんか髪伸びたな」

田村の部屋の掃除をして、軽く部屋の惨劇に衝撃を受ける中、いいから学校に行け!田村にそう言われ嫌々学校へ行くと教室で待ち構えていた丸山の焼け野原だった頭に芝が薄っすらと生えていた。

「そうだ。俺の事をもぅ丸刈りと呼ばせないために、俺は髪を伸ばす事にしたんだ」

胸を張りながら言ってくる丸山だが、登校してくるクラスメイト達は、丸山に「おはよう、丸刈り」と挨拶しながら自分の席に座り始める。

「・・・・ったく元、お前のせいなんだからな。丸刈りで定着しちゃってるじゃねぇか」

「いいじゃねぇか別に・・・それより生えるの早いな」

「そうなんだよ。自分でもびっくりさ」

「エロいと生えるの早いとか言うよな・・・」

「うむ。否定はしない」

「じゃぁ新しいあだ名エロ丸でいいんじゃね?」

「勘弁してくれ・・・」

エロ丸との会話を続ける中、エロ丸を中心に次第に人が集まりだし、居心地の悪かった教室は、始めの頃のように居心地のいい場所になっていた。

「お前等、いいのか?俺、犯人なのかもしんねぇンだぞ?」

周りで繰り広げられる談笑を三島の一言で、一気に停止させた。

「あぁその事なんだがな・・・所詮は噂だ。それに、この教室にはお前の事を高校からや小、中の頃から知ってる奴がいる。でも、お前はそんな大それたことを、やれる人間じゃないってのは全員知ってる。少なくともこの教室中ではな・・・この教室のムードメーカーがいなくて淋しかったんだよ」

「そうか・・・」

小さくそう呟く三島を見て、周りの生徒達は大爆笑し始める。

「なんだよそれ。テレか?照れてんのか?」

「うっわ、ありえねぇ!」

「なにがありえねぇじゃ!・・ってか、照れてねぇし!」

「お前、照れてんなら、照れてるってハッキリ言えや〜」

「照れてねぇ!」

生徒達が照れてるだとか照れてないだとかで盛り上がる中、族あがりと噂される先生が教室へ入って来た。

「おぅ、盛り上がってる所すまないが、HR始めるぞ」

「は〜い」


「三島、ちょっといいか?」

放課後を迎え、帰り支度をする三島に先生が手招きをしてきた

「はぁ・・・別に大丈夫っす」

職員室へとやって来た三島だが、周りの先生方は痛い目線を投げてくる。

「ん〜、ちょっと場所変えるか・・・」

「別に大丈夫です。」

「いや、俺が嫌だから」

「はぁ・・」

そう言われ生徒指導室へと連行される三島。

「うわっ懐かしい」

「いや、懐かしいって駄目だろ。なんか問題起こして、ここに来た事あったか?」

「中学の時、部活の先輩にここで一度、坊主にしてもらいました」

「あぁそれでか・・・異種武道の奴等、ここでよく散髪やってるもんな・・・親父さんは元気にやってるか?」

先生は、大きなソファーに腰を下ろし、向かいのソファーに三島を座らすように促す

「親父さん?」

「田村の親父さんだよ」

「えっ?先生、親父さん知ってるんですか?」

「知ってるも何も、門下生だったから・・・まぁ少しの間だけど」

「へぇ〜意外だ」

「意外って言われてもな・・・まぁさっそく話なんだけど。」

「傷害事件の事ですか?」

「まぁそうなんだが・・・仮面男、あれ元だろ」

「違います」

「そう言うな。あれな、止めとけ・・・警察に任せとけ」

「あんな奴等、信用できませんから」

「俺もそう思う事もあったがな・・・元、社会にはルールってもんがあんだ。ルールを犯した奴は、警察にしょっ引かれるのもルールなんだ。お前がやっている事は、そのルールに反している。」

「だから、俺じゃないですってば・・・それに仮面男は誰にも危害は加えていませんよ」

「ところが、そうでもないんだ。舟高狩りの連中に被害が出ている。」

「まぁたしかに・・・」

「その被害が尋常じゃないってこともわかっているな?」

「はぁ?・・・いいえ」


首を横に振る三島を見て「やっぱりな・・」と呟きながらため息を漏らす。

「いいか?お前は、ただ追い返しているだけかもしれないが・・・おそらく、新たな仮面男も出てきているんだ。そいつは、お前のように追い返すんじゃなくて、連中をボコボコにしてそのまま放置しているらしい。今は全部、カッパ男が原因だと言われているが、そのうち仮面男も市場に出始めちまう」

「そんな馬鹿な・・・カッパ男が仮面被ってるんじゃないですか?」

「そうとも言い切れない。・・・・言いたくはないが、カッパ男も仮面男も全てはお前が作り出してる。だから、お前はこれ以上しゃしゃり出るな」

「・・・でも」

「デモもクソもあるかボケ!わかってんのか、警察の目もきつくなってるって事は、学校にも居づらくなるってことだ。お前等のクラスはなんとかなったが、こっからは大人の問題だ。この事件に関わりのあるお前を、学校側が保護できるとでも思っているのか!今は何とかなっているが、いつお前を手放すかどうかもわかったもんじゃねぇ」

頭を手に乗せて思い悩む三島。「わかったらこれ以上、矢面に出るな」そう言い残し先生は生徒指導室から出て行った。







塚本が汚れたコップを真っ白な布巾で磨き上げる中、乱暴に席に座ってくる三島に気付き声をかけてきた。

「どぉした?いつもそうだが、今日はやけに落ち込んでるな」

「塚本・・・俺、わからなくなってきた。何もかも辞めるべきなのか」

「さぁな、今のお前はただの落ち込む馬鹿だってことだ」

「・・・否定はできないな」

「お前さ、考えるよりまず行動する奴なんじゃなかったのか?」

「それは、ちゃんと答えがあるからだよ。けど今は、答えわからないんだ・・・俺が今している事を辞めたら、被害が出る」

「それはどうかな?仮面男が登場しようがしまいが、被害は確実に出ている。被害が多いか少ないかの違いだろ」

落ち込む三島の前に飲み物を置く塚本

だが、それに手をつけることなく思い悩む三島。

「おぃおぃ頼むよ。最初に出会った三島元はどこに行った?それじゃなんも面白くもねぇ」

「最初の頃の俺?」

「そうだよ。初めて会った時もお前は何か思い悩んでたが、今のお前とはまったく違う」

「そりゃ違うだろうよ。この前の俺は、一個しか問題はなかったんだ。今回は問題がありすぎなんだよ・・・」

軽くあしらう三島を見て塚本は「馬鹿が」と呟き、三島の前に置かれている飲み物を三島に思いっきりかけた。

「な、・・・なにすんだよ!」

突然の出来事に驚き、思わず立ち上がる三島の胸倉を掴み、自分の顔に引き寄せてくる塚本。

「てめぇは、友人ダチの問題と今起きている問題を個数で見てんのか?・・・その問題の質を一緒だと思ってんのか?重みも一緒だと思ってんのか!」

「何が質だ!どっちも変わらねぇよ!」

胸倉をつかんでいる手を無理に剥がし、席に着く三島。

「てめぇはもうお終いだな・・」

「あぁ?」

「今日は、もう店じまいだ。帰れ」

「言われなくても帰るよ」

腹の虫も収まらず、出口の方で口論をしている但馬組の連中を沈めてから三島は、店から出て行った。





雨脚が酷くなる中、若菜と井手口は立ち入り禁止のテープが張られた中に入り、雨に打たれながら地面に横たわる遺体と対面していた。

「ついに死者が出ましたね・・・」

井手口がそう呟き、若菜は「もう限界だ」と声を洩らした。

「でも、まだ証拠がありませんよ」

「関係無い。あいつを抑えて被害が出なきゃ、あいつが犯人に決まってんだろ」

「でも、何の理由もなく拘束はできませんよ」

「だから言ってんだろ。関係無い!あいつを抑えるぞ・・・井手口、署長から令状貰ってこい。」

そう言ってテープの外へと出て行く若菜

「若菜さん!できませんよ、そんな事!」

井手口の声も届かず、若菜は車に乗り、その場を去って行った。




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