第二十七話 繰り返される伝統・・
「俺達・・なにもされないんですか?」
「あぁ、三島にそう言われた」
毒島の連中に車に押し込まれ、しばらくドライブした車は人気のない港に止まり学生達を下ろすと「消えろ」と学生達に言った後の事だ。
「本当だったら山でも海にでもお前等を沈めてやりたい気分だがな。・・・三島の頼み事だ。三島に感謝するんだな」
「・・・はい」
「だが、次三島になんかしてみろ。三島どんなに頼もうが、お前等を高校になんか行けねぇぐらいにどん底に落としてやる。」
睨みの利いたお兄さんそう言われ、「はい」と小さく答えると「さっさと行け」と手で追い払う。
「あの・・ちょっと待って下さい。・・・先に連れてかれた北村は?」
「あぁあいつなら、あそこの倉庫だ・・・おぃ!」
車に腰掛けるお兄さんは、倉庫の前に立つ仲間に声をかけると「なんだ?」と返事が返ってきた。
「そっちにいる餓鬼はどうした?」
「大丈夫だ。まだ気を失ってて起きるのを待ってる所だ」
大声でやり取りをするお兄さん達。
「・・だそうだ。お前等も向こうに行ってろ」
学生達にそう言うと、学生達は倉庫へ向かって歩き出した。
そして、倉庫の前で立つお兄さんの背中には、カタカタと震えながら銃を突きつける学生がいた。
「・・・これからどうするつもりだ。言っておくが俺達は、ただここまでお前達を運んだだけだ。それ以外には何もしない」
落ち着いた口調で何とか説得を試みるも錯乱しかけた学生は、独り言をぶつくさと呟きまるで聞く耳を持っていなかった。
「僕は死なない・・・死ぬ訳にはいかない。大学に進学も決まってるんだ・・こんな所で死ぬ訳には・・」
「だから、何もしないって・・・向こうからお前の仲間だって近づいてきてる。いい加減にしないと」
「黙れっ!」
学生は使い慣れない銃を捨て、左手で男の口を抑えポケットから取り出したナイフを男の喉に近づける。
「あれっ?やっぱ先輩だ。・・・それに横にいるのは、田村先輩の友達・・だっけ?」
刀の峰で肩を叩きながら目の前に立つ三人を見る子島。
「子島・・・何でお前がここにいる」
「そりゃこっちのセリフですよ。・・・どうやら俺って結構知り合いと戦う事が多いのかな?まぁ悪くはないな」
「・・・なんだって?」
「いえ、こっちの独り言です・・・うわっ」
頭をかきまわす子島に、さっそく火の玉を投げる伊吹。
「へぇ・・早速やっちゃう感じですか」
再び飛んでくる火の玉を刀で二つに叩き切り、再び火の玉を投げようとする伊吹を抑えつける三島。
「待て、伊吹。あいつは俺の後輩だ」
「だからだ。お前等は知り合いみたいだからな・・・俺がやる」
抑えようとする三島を振り払い、刀を構え伊吹に突進してくる子島の足元の地面を崩し、土の壁を作り出した。
だが、そんな壁を蹴り壊し、伊吹に一気に詰め寄り、刀を突き出した。
顔に向かって突き出されてくる刀先を紙一重で避け、炎で包んだ右手で子島の顔に殴ろうとするが、伊吹の右手を左手で横に弾き、がら空きになった伊吹の腹部に肘打ちを食らわせた。
「ぐっ・・」
急所には当たらなかったものの伊吹は一旦、距離を取ろうと離れるが離れる伊吹にピッタリとくっ付いていき、顔がゆがむ伊吹の顔を見て口元が笑う子島は、右手に持つ刀を伊吹の胴体にめがけて振り抜こうとする。
伊吹の脇腹目指して振り抜かれた刀は、途中で三島の鞘で防がれ、鞘を支点にして上に飛ぶ三島は、密着した二人を離そうと二人を蹴り飛ばす。
「何やってんだ、伊吹!・・お前もだ!子島」
「・・・それは、こっちのセリフだ。お前はこの状況をわかっていないのか?」
三島に蹴り飛ばされて腰をつく伊吹が続きを言おうとするが、その前に自分の首に大鎌を置かれ、鎌を構える仙田を睨みつける
「何の真似だ。」
「この状況をわかってないのは、あんたよ。この学校でボヤ騒ぎを起こすつもり?・・・次、ふざけた真似したらその首、飛ばすわよ」
「へっ、相変わらず慣れ合うのが好きなんスね。先輩は」
刀を支えに立ち上がる子島。
そして、そんな子島の前に立ちはだかる三島
「どうなってる。お前は一体何だ?・・・人間じゃないのか?」
「知らないんですか?・・・結構、俺の見た目、見たらわかると思うんですけど」
「何を言ってる・・・お前は子島だろ」
「そうっスヨ。・・でも、人間じゃない・・・でも、この戦いに参加してるって事は先輩も人間じゃないってことだ!」
子島は、掴んでいた刀を三島に向かって振り下ろす。
突然の攻撃に後ろに下がり距離をとる三島。
その光景に思わず動こうとする伊吹。だが、そんな伊吹に気付き伊吹の首にある鎌を再び近づけ伊吹を止める仙田
「いい加減にしろ!・・・何で俺達が争わなきゃいけない!」
「しらねぇっスヨ・・・地球が決めた事ですからね。・・・でも、よかった。これで先輩と戦える」
振り下ろされる刀を、手に持つ刀で止める三島
「そんな笑えねぇ冗談は、寝てからしろ!」
「鞘から刀を抜いてください!先輩っ!」
刀の柄から仕込み刀を抜き取り、心臓めがけて投げる。
「くそっ」
三島は、鞘は子島の刀を抑えたまま刀を引き抜き、飛んでくるナイフを叩き落とす。
「そうっスヨ!それでいい」
子島は、三島が持つ刀を蹴り落とそうと蹴りを入れるが、三島は刀を落とすことなく、片足で立つ子島をそのまま押し込み、バランスを崩した子島はその場に倒れる。
素早く立ち上がる子島だが、その前に距離を取る三島。
「先輩、止めを刺さないのは相変わらずって事ですか?」
「違う!お前と戦う理由が無いからだ」
そんな三島の言葉にやれやれとそんな身振りをしながらため息をつく子島。
「先輩・・・戦う理由なんて必要なんですか?」
「当たり前だ」
「それは、相手が俺だからじゃないですか?」
「そうだ」
「それじゃぁ今まで戦ってきた相手は?なにか殺すに足りる理由がありましたか?」
「それは・・・」
「そうっスヨ・・無いじゃないですか。・・・もしかして人間殺すのって初めてですか?・・・あぁ、違うか二回目か」
子島の言葉に、怒りに似た感情で体が震えだす三島。
そんな三島の態度に子島はある事に気付き、口元がつり上がる。
「先輩・・・もし、あれが先輩じゃないって知ったらどうしますか?」
「何?」
「去年の決勝戦の事ですよ・・・」
眉をひそめる三島。そして、子島は真実を語ろうと口を開いた。
「あれを殺ったの・・・俺っスヨ」
渋滞に引っ掛かり、ようやく会場に着いた子島は、ギャラリーから三島と尾形の試合を目にする。
二人の本気の試合を見て体中に電撃が走るような感覚に襲われた。
「な、なんなんだよ・・あいつ等」
「強〜とは、思ってたけどまさかここまでとは・・・」
周りで二人の試合を見る奴等は、息を飲みながらそう呟いていた。
すげぇ・・・俺もいつかそうなりてぇ・・
延長戦が二回目に突入した時、三島が尾形に槍を振り下ろした時、子島は向こうの世界へと呼び出されてしまった。
「くそっ・・・こんな大事な時に」
さっさと敵を倒して元の世界に戻らなくては・・そう思って敵がいるかと会場を見渡すと、先ほどまで三島と尾形が戦っていた会場にポツンと立っている人を見つけた。
「あいつか!」
子島は、ギャラリーから飛び降り、会場へと向かう。
そして、会場の中心で息を切らしながら立つ敵を見て驚いた。
「・・・そうか、ベルが鳴ってたのか」
敵はまだこっちの存在には気付いていなかった。
肩で息をし、汗をぬぐう敵。
その敵の正体を知って、口を開けずにいる子島。
そして、子島に気付き敵と目があってしまった。
「お前・・・・子島か?」
「・・お、尾形さん」
胴衣姿で両手に持つ木製の武器。額には大量の汗をかき驚きの表情を隠せない尾形。
「なんで・・・お前がここにいる」
尾形が子島にそう聞き、子島はその言葉で我に返り、布で被せておいた刀を取り出し尾形に構える。
「お、御覚悟を・・」
そう言って武器を握る手に力がこもる子島。
だが、そんな子島の態度と全く逆を示す尾形。
「悪いな・・・俺はパスだ」
「な、なんで」
「今いい感じだったんだよ。このまま続ければ俺が見たいものが見れるような気がするんだ。正直、この戦いに参加したのも俺の種族を繁栄させるとかそういう訳じゃなくて、強い相手と戦える。そう思ってこの戦いに参加してたんだ。けど、やっぱ三島とやってる方が断然いいや。だから降参するわ」
その言葉に屈辱感を覚える子島
「それは・・・俺と戦っても面白くないって意味ですか?」
「ん〜そうなるかな?・・・そんじゃ、これからの戦い頑張れよ。俺応援してから」
尾形はそう言うと目を閉じ、元の世界に戻ろうとする。
そんな姿を見て、子島は自分にこの戦いを押しつけて、戦いに臆してこの世界から逃げ出そうとする父親が重なった。
「・・・この腰抜けが」
子島は刀を構え、元の世界に戻ろうとする尾形の顔に刀を振り下ろした。
気がつけば子島は先ほどいたギャラリーに立っていて、先ほどまでいた会場の方では頭から血を流す尾形を抱き寄せる三島が何度も「剛」と名前を呼び続けていた。
「だから、あいつを殺したのは、本当は俺なんですよ。・・大体、木製でしかも先に少しだけどクッションがついてる武器でいくら当たり所が悪かったからって、あんなに血を流すと思ってるんスか?」
あの試合の真実を知り呆然と立ち尽くす三島。
そんな三島に追い打ちをかけるかのように口を開き始める。
「しかも、あいつは俺の事を見下してて、最後まで一人の選手として見てくれなかった。・・あいつが人間じゃなかった事には驚いたが、あいつの種族はかわいそうだな。あんな腰抜けが候補にあがっちまったなんてさ。まぁどうせ大した種族でもないと思うけどさ・・」
「・・おぃ、これ以上あいつの事を悪く言うな」
静かに子島に向かって言う三島が刀を握る指先は、強く握りしめているからか鬱血して青紫へと変わって行く。
そんな三島の警告も聞かず子島は、ある事を思い出したかのように手を叩くと再び口を開いた。
「あっ、そうだ。先輩、ちなみに言うと田村先輩が今年、優勝できなかった事も俺のせいかもしんないんっスヨ。先輩って結構メンタル面弱いじゃないっすか。それなのにも関わらず、俺決勝当日に告ったんっす。優勝したら付き合って下さいって・・・したら、なんも間髪いれずに断ったから、ムカついて「三島先輩だったら諦めた方がいいっすよ」って言ってやったんです。」
ただ立ち尽くす三島。そして、一呼吸入れると再び子島は話を始める。
「大体、先輩も先輩ですよ。死んだ奴なんかに気後れしてるのかどうか知らないっすけど。あんなアプローチしてるのに・・鈍感って訳じゃないっすよね。もし俺だったら即効、抱きますね。あんな顔して、あの性格でまだ処女を貫き通してるってのも可哀想な話っすよ。きっと田村先輩、いい声であえ・・」
続きを言わせんと三島は子島に刀を振り下ろし、子島はその刀を自分の刀で抑えた。
「それ以上、何も言うな。・・・・頼むから俺を怒らせるな」
「嫌っすよ。先輩が俺とちゃんと本気で戦ってくれなきゃ意味無いっすからね」
「・・・俺の本気が見れれば、いいんだな?本気を見せれば、てめぇのその減らず口を叩き壊す事が出来るんだな?」
「そうです」
鍔迫り合いが続く中、三島は「わかった」そう呟くと刀を下ろし伊吹と仙田の方へと歩いて行った。
「伊吹・・・この刀の長さを半分にしてくれ。脇差サイズでも構わない・・・出来るか?」
「あぁ、出来う事は出来るがまずその前に、この首に突き付けられてる鎌をどかすように言ってくれ」
鎌を持つ仙田は、離れた所で三島を待つ子島から目を離さずずっと睨みつけていた。
「あいつ・・・私が殺そうか?・・・死者を愚弄するわ、私の友達を貶すわ・・結構頭に来てるんだけど」
「いや、悪いが・・あいつは俺がやる」
「そう・・・また発狂したりしないでよ」
仙田は鎌をどかし、伊吹はようやく鎌から解放され深く深呼吸をした。
そして、三島から渡された刀を受け取り作業を始める。
「発狂よりも・・俺の怒りが爆発しない事を祈っててくれ」
仙田の刀のサイズが、短くなりそれを三島に渡すと、三島は脇差を腰のベルトに挟み、子島の方へと歩いて行った。
三島が近寄ってくる事に気付き、子島も三島に向かって歩き始める。
互いに向かい合い、睨みあう二人。
「本当にいいんだな?・・・言っておくが死んでもしらねぇぞ」
「問題ないっすよ。先輩こそ、途中で元の世界に逃げ込んだりしないでくださいよ・・それよりいいんすか?道場でやらなくて」
「お前や俺みたいな奴が、神聖な道場で戦える資格なんてねぇンだよ」
その言葉に子島は、少々驚くが思わず笑い始める
「ハハッ、違ぇねぇ。先輩は化け物っスもね」
「あぁ、そうだよ」
「・・・いつでもどうぞ」
子島は腰に付けた刀に手をやり、三島の動きを見ようとするが、三島は腰に付けた刀に手をやろうともせず、ただ突っ立っていた。
互いにチャンスを見計らい、動くタイミングを待つ。
浅い呼吸を繰り返す中、子島が素早く息を大量に吸い込む音が、二人の合図となった。
子島は刀を抜こうとするが、三島に抜こうとする手を抑えられ、三島の掌手が子島の顎入った。
三島の攻撃に怯み、体勢を立て直そうと後ろに退くが、腰にあるはずの刀が無い事に気付き三島を見ると、三島の右手には鞘から抜かれた刀が掴まれていた。
「さぁっ!鞘で防がねぇと死ぬぞっ」
三島はそう叫ぶと一気に子島に突進していった。
一方、子島は鞘を手に持ち、三島を待ち構えた。だが、三島の変則的な攻撃に子島は防ぐのが精一杯で、反撃のチャンスを探す事も出来ない。
そして、そんな光景が続くと子島は、ある事に気付く。
これは防いでる訳じゃない、防がせているんだ。
「オィ!どうしたさっきまでの威勢は!・・・俺と戦いたかったんだろ。俺を殺してみたかったんだろ。俺を止めてみろよ。俺を殺してみろよ!」
刀を振り回す三島は、刀に集中する子島に、回し蹴りを食らわす。
蹴りを食らい片膝をついた子島に追い打ちをかけようと刀を振り下ろす三島。
その振り下ろされた刀を頭の上で鞘で抑える。
「そうだ!その鞘をどかすと、てめぇの頭がなくなんぞ」
三島は一度、刀を持ち上げ上から一気に振り下ろす。
鞘で再び抑えるが、三島はそのまま刀に全体重を乗せ、押し潰そうとしてくる。
下で支える子島は、三島の馬鹿力をおさえようと必死に踏んばる。
だが、次第に鞘は下がって行き、刀は子島の頭に近づいてくる。
「くっ・・」
徐々に近づいてくる刃物を目の前にして体が恐怖で硬直してくる。
そして、心の中で逃げようとする気持ちと逃げては駄目だという気持ちが葛藤し始める。
俺は逃げない・・・あんな親父、死んで当然なんだ。
この世界に連れてきた親父は、俺にこの戦いについて説明すると自分だけ逃げようと元の世界に戻ろうとする。そんな親父を子島は尾形同様、殺した。
だから逃げない!俺は、あんな腰抜け達とは違うんだ!
刃が髪の先にある事を感じ取る。そしてその刃は震えながら段々と下に降りてくる。
最後は、刃物が己の頭皮にくっ付いた事を確認する。
「あ゛ああああぁぁぁぁあぁ!!」
恐怖とその恐怖と闘おうとする気持ちが入り混じり、子島は目をカッと開き、最後の自分が見る光景を目に焼きつけようとする。
だが、頭皮についたはずの刀はスッと離れ、目の前に立っていた三島は、子島の前に刀を投げ捨て、数歩離れた。
「十分楽しんだ。遊びは終わりだ」
三島はそう言うと、自分の腰につけていた脇差を抜き、逆手に持ち構えた。
そんな三島の態度を見て、子島は目の前に置いている刀を拾い三島との最後の戦いに備え構える。
だが、構えたのが遅かった。子島が両手で刀を構える前に三島の脇差が子島の喉を捕えていた。
「最後に聞きたい事がある・・・・尾形をやったのは本当にお前なのか?」
子島の首筋に赤い液体が一筋、零れる。
「そうっスよ・・・俺がやった」
「そうか、じゃぁな」
子島はグッと目を閉じ首に当てられる刀の行方を見る事が出来なかった。
そして気が付けば、子島は人気のない路地へと放り出されていた。
空中に放り出された子島は、壁に当たりながら落ち、最後は段ボールの山に助けられ、必死に首の辺りを手で異常が無いか確認をする。
異常が無いとわかると、安心する事も荒い呼吸が収まる事もなく、ただ元の世界に戻ってきてしまった事に驚きを隠せなかった。
「やっぱり、逃げたか」
刀が空を切った三島を見ながら、伊吹が呟く。
「当り前よ。あんな事されて、もし逃げなかったら、相当の馬鹿ね」
「可哀想だな・・・」
「敵に同情するって言うの?」
「違−よ。どっちもだ・・」
二人が、そんな事を語る中、三島はその場に腰をついた。
「元、大丈夫?」
駆け寄ろうとする仙田だが、三島は自分の顔を片方の手で隠し、もう片方の手で駆け寄ろうとする仙田に来るな!と言う意味で手を突き出した。
「悪い・・・しばらく、一人にさせてくれ。」
三島の手によって足が止まる仙田。
「先に元の世界に戻っててくれ・・・後で戻る」
その言葉に伊吹は「ご自由に」そう言って薄暗い生徒玄関から姿を消し、仙田はどうにかしてこの世界に残る口実を探していた。
「ま、またあんたが発狂したら、困るじゃない。」
「大丈夫・・・大丈夫だから・・・」
その場に腰をつき前かがみになりながら、鼻をすすり目を隠す三島からの大丈夫宣言は、かなり信用のない物に聞こえた。
「でも・・・私・・」
心配なの!・・・そんな事を言えるキャラではない。そして、それ以外にこの世界に残れそうな口実も見つからず。
三島の横に置いてある脇差を拾うと仙田も姿を消し、女子トイレの前に姿を現した仙田は、深くため息をつき田村の待つ体育館へと向かった。
「お前・・・なんて事しれかしてんだよ」
倉庫の中で、首から血を流し倒れている男・・そして、その後ろに血が付着したナイフを持つ学生を目にする岬高の生徒達。
互いに状況が読み込めない彼等は、とっさに落ちている銃を拾い。何とか証拠を残さぬようしようとする。
そんな中、倉庫の中にある部屋から一人のアロハシャツをきた男が出てくる。
「おはよー、ケンちゃん。あの餓鬼、そろそろ起きた・・・・ケンちゃん?」
地面で血を流し倒れる男をケンちゃんと呼ぶ男は、ケンちゃんの周りにいる学生達に「てめぇ等、ケンちゃんに何したっ!」そう叫びながら学生達に襲いかかってくる。
そして、倉庫の外で車に腰をかけ仲間を待つ男も、その叫び声に気付き、倉庫に向かって駆けだす。
銃を持っていた生徒は、銃を構え引き金を引こうとするが、安全ロックがかかっていて引き金が引ける事はなかった。
その事に気付き、その場に腰をつきながらロックを外そうとするが、手が震えてうまく解除することが出来ない。
学生に襲いかかろうとする男から伸びた手は、恐怖で動く事の出来ない学生の頭を掴もうとするが、その手は学生の頭を掴む事が出来ずに地面に落ちた。
肩から切り落とされた男は、切られた肩を抑えながらその場で悶え苦しむ。
「おぃ!どうしたっ」
倉庫から仲間の悲鳴を聞いて、急ぎ倉庫内に入って来た男は、日本刀を持った舟高の学生を目にした。
「てめぇ、そこでなにしてやがる!」
銃を構え、目の前にいる学生に引き金を引こうとするが、刀の柄から仕込んだナイフを学生はその男に投げ、弾丸は学生の耳をかすめるように音を立てながら飛んでいき、男の胸の真ん中にナイフは突き刺さり、ヨロヨロとふらついた後、男は倒れた。
肩から血が噴き出す男も、次第に血が無くなり動かなくなった。
「やっぱ俺、つえーよな・・」
血のついた刀を一振りし、刀についた血を吹き飛ばす。そんな姿を見て岬高の一人が「子島だ」と呟く。
子島は、怯える学生達には目もくれず、倉庫の外で倒れている男の胸からナイフを抜き取る。
「な、なんなんだよ・・あいつ」
「狂ってやがる」
子島は、抜き取ったナイフを倒れる男の服で綺麗にふき取り「俺は強い」とブツブツと繰り返していた。
「お・・・おぃ、子島。俺達を助けてくれたのか?」
学生達が子島に話しかけるが、全く反応を示さない。
「つぇーはずなのに・・・・」
握った刀を眺めながら、そう呟くと子島は、倉庫の隅に固まる岬高の奴等を睨みつける。
「なんで、臆したぁぁぁーー!!」
子島は、そう叫びながら学生達に向かって走りだし、震えた手でようやく安全ロックを解除した生徒が、恐怖に怯え叫びながら子島に銃を向けた。
倉庫からは何発もの銃声が轟き、銃声が止んだ後に待っていたのは静寂だった。




